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8話 イベント

『と、とにかくごねてないでイベントの準備しよ! ほ、ほらまだ体も痛むでしょ?』

「え、そういや……あ、あわわわわわわ、冷静になったら痛みが! ふ、ああぁぁあぁ……」



 ゴブリン軍曹にぶん殴られた箇所にはモンスターとなった俺の身体にも痣ができたみたいで、じわじわと痛みが全身に広がっていく。


 骨は折れてないんだろうけど身体のあちこちが打撲したんだろうな、痛いところを意識して動かすと強めに痛みが走る。



 うん。これもうイベントできない。1週間は動けない。食っちゃ寝したい。



『あー……。でも大丈夫、竜瀬の中にある種族、犬獣って種族は人間なんかよりもよっぽど回復力が高いから。きっと1日もすれば治る……と思う。』

「思うって……。あ、そういえばステータスが見れるんでしたよね? 確認方法ってどうすればいいんでしたっけ?」

『簡単よ。頭の中でイメージすればいいだけ。といってもモンスター連中はそもそもステータスって概念を知らないことがほとんどだから、これができないんだけどね』

「なるほど、だからモンスターってスキルの数が少なかったり、個性的じゃなかったりするのか……」



 探索者はレベルアップで手に入れたスキルポイントを割り振ったり、パラメーターポイントを割り振ったりすることで、自分の強さをカスタマイズできる。

 それによって前衛後衛は勿論、回復専門、武器作成専門とか、いろいろな役割を担うことができる。


 それに比べtえモンスターは種族ごとである程度の強さが固定されていて、種族ごとに役割が違うとされていたけど……ただ、それができることを知らなかったらしい。


 だから潜在的な能力が高いモンスターは、これを知ることさえできれば人間を超えることも容易い、のかもしれない。


 モンスターに対して人間は割と上位の立ち位置にいると思って余裕ぶっているけど、人間くらい知能が、理解力が高いモンスターが現れたらそれはひっくり返って……パニックになることもあり得るのかな?



『あり得るでしょ。だからその辺を知っている人間からしたら竜瀬は脅威……あの仮面人間みたいに逃がしたりはしてくれないわ』

「……地上に出るのはやっぱりそれに対抗できるくらいに強くなってから、か」



 痛む足を見ながら呟く。

 この有様でそんなところまで到達できるのは一体いつになるのやら……考えるとため息が零れそうになるよ。


 ま、幸せを逃がしたくないからそれは我慢するんですけど。



『目安としては……やっぱりダンジョンの攻略がいいわよね! そうすれば自身もつくもの!』



 不自然なくらい明るい口調で言ってのけるアナさん。

 きっと外にいる会社員みたいになんかノルマがあって、ダンジョンの攻略ってのをさせたいんだろうな。


 じゃなきゃここまで親切に案内してくれるとは思えない。


 というか俺みたいのを頼るくらいなら他の強い人間に頼ればいい気もするんだけど……。



『それはできないの。本来ダンジョンってこっちの世界にあっていいものじゃないから』

「こっちの世界?」

『うーん……。申し訳ないんだけどこれは社外秘だから……。そもそもよくわかんない、思い出せない部分もあって……ってあんまり言うと私の首が跳びかねないんだった!』

「やっぱしアナさんも会社員……しかも結構ブラック企業っぽいっすね。ちゃんとした説明もなしに上司から言われてずっと俺のお守なんて」

『ブラックっていうかなんというか……。あ、でもそんなに嫌なわけじゃないからそこは心配しなくて大丈夫! それに給料……みたいなものもびっくりするぐらい破格なのよ! アットホームな職場なのも加点対象で――』

「それ、ヤバい会社の謳い文句じゃないですか……。なんか滅茶苦茶気になりますけど……アナさんに迷惑かけるっぽいからこれ以上は止めときます」

『うんうん。気を使えるところ嫌いじゃないよ!』



 こっちの世界だとか、給料みたいのとか、極めつけに思い出せないとか……。

 俺なんかが触れちゃいけない雰囲を醸し出し過ぎてて、流石にひよってしまった。


 ヤンキーにひよってる奴いる?って言われたら速攻で手を挙げるわ、こんなん。



「そ、それよりステータスでも見ますか。これも気になってたんだよな」

『うんうん。準備って言ったらステータス画面の確認と、割り振りだからね!』



【――ステータス表示】





名前:竜瀬彰人

性別:

年齢:25

レベル:3

元種族:人間

覚醒種族:???

獲得種族:人間、???、ゴブリン、犬獣

攻撃力:35

防御力:35

保有魔力:70

魔法:無し

スキル:共食い、捕食衝動、武器適正補正、誘いの灯、鷹の目

パラメーター補正:+30

捕食衝動抑制レベル:高

残りスキルポイント:20

スキルガチャ残り:ゴブリンガチャ(1)

初回捕食終了:ゴブリン、灯り犬

同種スキル初回ボーナス終了済み対象モンスター:ゴブリン

アイテム:欄格納状態。自動取得状態。結果省略状態。





「――なんか思ったよりもあれこれ書かれてるんだな、これ」

『これでも人間と比べたら大分簡単になってるのよ。そもそもステータスポイントの割り振りとか、職業だとかスキルツリーだとか、そんなものはないんだもの』

「それもこれもモンスターは理解ができないからですか。でも、だったらスキルガチャとかスキルポイントも勿体ないんじゃ?」

『野蛮なモンスター、特に縄張り争いをするような個体だと人間以外を襲うこともあってね、無駄じゃないから消えてもいないみたいよ。この辺りは自動になっていたりするし』

「そういえば俺も自動でガチャがどうのこうのって……。って、スキルポイントも勝手に使われちゃうんですか?」

『うん。そのうちそれぞれに1ポイントづつ割り振られるわよ。だから細分化されて振られちゃってモンスターの多くはスキルに変化がないの』

「なるほど……。ということは極振りが良さそうなのかな?」



 それぞれのスキルを見ながら俺はポイントの割り振り方を考える。


 面白いことにスキルの詳細はそうして眺めるだけで理解ができてしまう。

 こんな簡単に物事が覚えられるならもっといい学校を出て、仕事も出世街道まっしぐら……ああ、このシステムだけでも地上で導入されないかな。


 でもモンスターになっちゃ意味ないか……。

 衛藤さんに褒められて甘やかされたい人生でした。



『なんか気持ち悪いこと考えてない?』

「ん? 全然そんなことないですよ」

『……』


 何となく冷ややかな視線を送られているような気がする……がとりあえずスキルポイントの割り振りは決定した。



「鷹の目+20」



 口に出すと残りスキルポイントは0になり、何となく勿体ない気持ちになる。

 こういうのってなんとなく溜めたくなるんだよね。



『え? いいの攻撃系スキルとかじゃなくて』

「はい。攻撃がどうのこうのよりも今は生き抜くのが最優先ですから。それに、これだけ振れば効果も変わるでしょ?」

『……うん。変わった。鷹の目はスキルレベルが3になって、新たな効果を獲得。自身が未開の道であっても一定範囲のマップ情報を得られる。モンスターの居場所もその範囲内で確認可能』

「おっ、やっぱりその辺の効果取得でしたか。こういった便利系スキルあるあるですね」

『……。あんたって探索者だったわけじゃないわよね? それに転生者でも転移者でもない。それなのにそんなことがよくわかって……』

「子供の頃からゲームに漫画、アニメ……だてにインドア少年だったわけじゃないですよ」

『ふーん、子供の頃ねぇ……。子供の、子供の頃……』



 さっきまで陽気な雰囲気だったのに……俺なんか言っちゃったかな?



「大丈夫ですか?」

『え、ええ! 何でもないから! たまにあるのよね、こうなること! それよりさっさとしないとイベントが自動で始まるかもしれないわよ。で、最悪難易度が上昇することも』

「え!? そんなことあるんですか!? なんで早く言ってくれな……。いや、それよりもガチャ回して……。イベントの場所を確認しないと」



 慌ててガチャを回すそうと念じる。

 すると微かにカチャカチャと音が鳴ったのが分かった。


 一応ダンジョンにもガチャ演出みたいなものはあるらしい。


 ……それに望めば簡略化せずアニメーションみたいなもので見れるっぽい。


 ダンジョンがゲームっぽいっとは思ったけど……これ作った奴は相当ゲーム好きか?

 となると、やっぱりアナさんの勤める会社? がダンジョンを……いいや、今はそんなことどうでもいいか。


 余計なこと考えていると、また出遅れして状況を悪くするかもしれない。



『ガチャ結果でたわよ。【硬化水紋様描き】だって』

「どれどれ……。特定の液体で紋様を描くことまた描かせることで、様々な硬化効果を得られるか……。そもそも飲み水だってないんだから今は使えない感じですね。よし、それよりマップを――」



 ガチャが終わると俺はすかさずマップを見た。


 すると俺はその表示に額から汗が流れ出る。


 だってイベントのポイントがゆっくりゆっくり動いて……俺の方に向かってきているから。


 しかも……これ、モンスターのマークも一緒になってない? え? いきなりボス戦? というかこれアナさんの言ってたみたいにイベントの難易度が上がったてことじゃないよな?



 ――ざっ……。



「――あっ!?」

「ゴブ、リン……。そうかこいつが発生しているイベントの……多分、討伐対象」



 マップに表示されていたマークから、俺は遠くに見えたモンスターの姿に視線を送った。


 遠く、鷹の目を使っていていてもその顔はうすぼんやりとしか映らないが、それは明らかにモンスター。多分、ゴブリンだ。

 イベントの内容はまだ分からないが、きっとこれを倒すってのがそれなんだろ――



『――対象のモンスターがイベントとして誘導された、って。で【会話】を試みる、或いは話し掛けられるとイベント開始。このまま時間が経って強制された場合、逃げられてのイベント開始。まず捕まえること、鬼ごっこからスタートらしいわ』

「会、話? ゴブリンと?」

お読みいただきありがとうございます。

モチベーション維持のためブクマ、評価よろしくお願いします。

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