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10話 最悪の交換 ※下ネタ注意

『――ダンジョン侵入から一日が経過しました。イベントは進行中です。クエストは消滅していません。拠点ポイントが10貯まりました。拠点ポイントが10ポイント貯まりました。拠点ポイントが10ポイント貯まりました……』

「おきえ! おいて! おきえ! おいて! おきえ! おいて! おきえ! おいて! おきえ! おいて! おきえ! おいて! おきえ!」

「んー……今日は公休だからぁ……」



 頭の中に響くアナさんの声、声、声。


 耳元で連呼される起きろコール……。



 それでも疲れのせいなのか、あれからすぐ寝てしまった身体は全く起き上がろうとしてくれない。

 しかもみっともなく伸びてごろごろごろごろ。

 

 頭もうまく回転してくれていないのか、良く分からない言い訳が勝手に出る。


 あー、昨日は頑張ったしなんもしたくない気分かも――



「んー……。とっておき、くらう」

『いいわよ! やっちゃえやっちゃえ!!』

「やっちゃえって……まさかモンスターがでた――」



 ――バシャ。



 わけじゃありませんでした。

 もう顔を洗う必要もないくらいびちょびちょなんですが……というか俺のこの顔、油分を感じない。

 もしかして洗わなくてもいいモンスターに覚醒した? だったらラッキー。今日はいい日になりそうだ! ……って



「そんな明るい気分になるわけがないでしょうが! いきなり馬鹿みたいに水をかぶせるとか、溺れさす気かよっ! やっちゃえって……殺っちゃえってことですか!?」



『起きた起きた。まったく、こんなにだらしないんじゃ先が思いやられるわね。世話がかかる……でもそういうところも嫌いじゃないわ』

「おいたーっ!」



 俺の渾身のツッコミが適当に躱されてしまった……。

 ゴブリンに至っては俺が大声を出したのがなんとなく面白かったのか楽しそうだ。


 毎朝これがデフォになる……それ、凄い嫌だな。

 水が冷たくて身体がなんか重くなった気もするし……なんでか知らんけど。



 早起き、そんなスキルがあればなぁ……。



「……はぁ。おはよ、二人とも。それで……残りのゴブリンは5匹だったっけ?」

『50匹よ』

「うん! 50! やる!」



 アナさんがちょっとだけ冷たいのはこの状況を面白がって、俺を揶揄ってるからだとして……ゴブリンはなんでそんなに楽しそうなんだよ。


 50匹だよ……。聞き間違いじゃなかったんだよ。

 寝起きから頭を悩ませるのしんどいなぁ。


 そうだ、一日経ったんだからなにか変化ないのかな? 一気に10レベルくらい上がるとか!



『それはないけど、拠点ポイントが10ポイント貯まりました。拠点ポイントが10ポイント貯まりました。拠点ポイントが10ポイント――』

「それは分かりましたから! ……それでその拠点ポイントって何ができるんですか? 人間の……探索者からの情報にそんなものはなかったと思うんですが」

『ふふ……。よく聞いてくれたわね!』



 俺が質問するとアナさんは姿が見えないっていうのに胸を張っているのが分かるくらい鼻を鳴らした。


 寝起きからずっとそればっかりだったし、なにか目的があるんだろうけど……それがゴブリン討伐につながるとは考えにくいな。

 大層な言い方をしてるけど、結局寝床が作れますよってだけでしょ?



『そう思うでしょ? 思ったでしょ? でもざーんねん、そうじゃないのよ! ま、今は目的……大したものはできないけど……。とにかくちょっと見て見ましょうよ!』

「あれ? アナさんはその内容を見れるわけじゃないんですか?」

『想像はできるけどこういうのって個人差があってね、私でも開いてくれないと分からなかったりするのよ。それより早く!』

「わ、分かりました。えっと念じればいいんだよね?」



『拠点……ポイント振り分け』




残り拠点ポイント:10

消費累計:0

拡張レベル:0

バリケードレベル:0


□追加可能スペース・家具・器具


・わら草ベッド(2):怪我、体力の回復を早める。状態異常回復可能

・調理台(2):素材のカット可能、刺身やサラダ等を自動作成

・素材置き場(2):素材の腐敗、消滅を停止

・焚火(2):特定の料理作成が別途鍋がなくとも可能。取り皿は顕現不可。

・バリケード(5):出入口付近に気のバリケード(小)を一つ作成。

・ドラム缶風呂(5):お湯に満ちたドラム缶風呂が作成可能。一回目以降は水、火等々が別途必要。

・出入口(1):新たな出入口



※上記基本スペース・家具・器具は消費アイテムなし。


・覗き穴(3、アイテムなんでも1つ):拠点となる範囲にある壁に、向こう側から見えない特別な穴を作成。物体の移動可能。

・低武器作成台(3、アイテムなんでも1つ):鉄剣、鉄槍、鉄斧、木弓、矢が作成可能。全て強度が低く、その度にアイテムを1つ消費。



□追加済みスペース・家具・器具


・なし





「おお! なんだ結構選べるじゃないですか!! しかも思ったより消費ポイント低いですし!」

『これは……やっぱり元々が人間ってこともあるのかしらね、最初にしては選べるものが多いわ。ただ……あれはまだね』



 現れた拠点の強化画面は思っていたよりも多くのことが書かれ、俺の好奇心をくすぐってくれる。


 でも、アナさんはちょっとだけ残念そう……。

 一体何を求めてたって言うんだ?



「ん……。わかあない! なんかやってみえ!」

「ん? そうだな、そんな事より実践だよな」



 純真無垢な視線と声を俺に向けるゴブリン。

 その期待に応えるべく、俺はわら草ベッドを……。



『ちょっと! そんなのは後でいいから先に調理台と焚火でしょ! 腹が減っては戦はできぬ、じゃない!』

「え……確かにそれはそうですけど……。俺の思考が勝手にベッドと風呂を求めてしまうんです!」

『欲求に正直すぎるでしょ! いい、まずはゴブリン50匹倒さないといけないのよ! このイベントの最終目標、そのデッドラインを超えないように早いうちから戦える準備を整えないと!』

「デッドライン……。デッド……。エッど、じゃなくて?」

『欲求って言葉で直ぐにエッチなこと考えちゃうとか小学生かしら? まぁ可愛らしいと言えなくもないけど』

「すみません、小学生は止めてください。寝たおかげでちょっとユーモアが飛び出ちゃったんですぅ。……で、冗談はここまでにしておいてと……。確かにそうですね、となると調理台と焚火、あとは武器作成台……」



 アナさんの忠告通りにこの3つは作るとして……残りは3ポイントか。


 うん。このポイント全然足りなくない? 全部作りたいんだけど。

 ……いや、一日待って10ポイントってことは明日には――



『残念だけど初回特典だからなのよ。これを増やそうと思ったら、このゴブリンみたいに仲間にするとか、他の拠点を落とすとかしないと……』

「マジですか……。ならどうしようかな」

『別に使い切らなくてもいいとは思うけど……。ま、逆に襲われて奪われることもあるけど』

「……俺たちはあんまりにも物がなさすぎ。それにひ弱。下手に残しておいて失っちゃう可能性は低くないです。使い切るのが吉、だとすれば……やっぱりベッド、いや――」



 俺たちはまだまだひ弱……なら武器が、優位な立地が必要だ。


 複数体を相手にするのに一本の狭い道では簡単に背後をとられて襲われる。

 しかも相手にゴブリン軍曹なんていう脅威がいるから、俺たちの行動を操ることは容易。


 今回のような隠れ位置が俺だけに利用できる、なんて都合のいい状況が毎度あるわけがないんだからやっぱり必要なのは立地……優位に立てる場所だ。


 戦国時代、実際にあった戦でも立地、地形、天気、こういったものが味方をすることで少数の軍が勝利していたりする。



「……つまり、だ。俺が選ぶべきは……覗き穴だ!! 俺にはそれが必要だ!!」

『……。えっち。えっちな漫画見すぎ。でも清々しいから……嫌じゃない、かな?』

「えっい? それ……。……。……。うぅ……」



 俺の熱量とは別に2人はどこか冷やな、少し低めの声でしっかり引いた。


 いやいやいや。俺からすればすぐにその発想になる、中学生並みの敏感さのほうがエッチに思えるけど。



 というかゴブリンのやつ、自分の身体に腕を巻き付けて照れるように怒るようにして俺から離れてくのやめてくれない?


 なんかアナさんが思うエッチよりも遙かに高度なエッチを妄想をしている気がして……俺、なんもしてないのに罪悪感で変な汗かいてきたよ。


 はぁ……今日もため息が止まらんぜ。皺増えたらどうしよ。あ、モンスターの顔になってるから増えない、か?

 俺の顔って爬虫類のそれっぽくて肌感ないし。これ、薄いけど鱗ってやつなのかな?


 ってどれどこじゃない。早く弁解しないと俺エッチマンになっちゃうよ。中学生並み……ううん、小学生並みネーミング恥ずかしいよ。



「あの2人とも、俺はそんな事を目的にしてるわけじゃなくて……いや、実際に見せ他方が早いかな。あ、そういえばこのアイテムって俺持ってるのかな?」

『ああ、それならステータス画面から引き出せるわよ。倒したモンスター分、3匹だったかしら? その分は自動で収納されているから』

「そういえばそんなことステータス画面に書いてあったような……。ん? でも素材場なんてものがあるってことは……」

『1日しか経ってないから腐ってはないと思うわ……多分』

「多分って……」



 俺はアナさんの言葉を聞くと恐る恐る『相手うを取り出したい』そう念じた。


 すると俺の目の前にはゴブリンの右耳が2つ……灯り犬の肉だと思わしきものがその場に現れた。



 勝手に素材がしまわれるこのシステム、本当にすごいな。凄いけど……。



「くっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっさっ!! なんで、こんなに……しかもなんというか磯の匂いというか――」

『いか臭いのね! そうなのね! モンスターの素材が腐るとそんな匂いがするって聞いたことがあったけど……本当にそうだなんて、どういう仕組みなの!?』



 いや、あんたが分からなきゃ誰も分からんて。

 で、自分が分からないこと、知らないことが起きたからってテンション上がり過ぎじゃないか? 現場は最悪なんですけど!



「うううぅぅぅうう……えっちぃ」

「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや、なんだよその反応!! こっちをその目で見ないでくれ! は、早く……これ持ってってくれよおっ!!」



 こうして俺はいか臭いアイテムを対価に覗き穴を手に入れるのだった

お読みいただきありがとうございます。

モチベーション維持のためブクマ、評価よろしくお願いします。

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