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詩集 想箱  作者: TiLA
27/30

線香花火

夏祭りの花火が

人混みでよく見えなかったと

帰りにわたしが駄々をこねたら

あなたが花火を1セット買ってくれた


2人の家の間にある公園

2人だけの花火大会

2人で繰り返す聖火リレー


でも、もう


この線香花火でおしまい

この線香花火が終わったら

帰らなければならない

この火の玉が落ちたら

今夜が終わってしまう


あなたとの夏も…


今にもこぼれ落ちそうな

あかね色の雫が

ゆらゆらと揺れている


お願い

もう少しだけ――


願いが通じたのか

パチッパチッと

もう一度 息を吹き返して

細かい火花が

名残惜しそうに咲いた夏の夜

儚い華が

そして、ふっと消えた


訪れる暗闇と静寂

あーっ と呟いたあなたは

手際良く後片付けをすると

じゃ、帰るか と言って歩き出した

花火の匂いだけを残して


魅力がなかったのだろうか

新しい浴衣も

あんなに悩んだ(かんざし)

姉に教えてもらったメイクも


気がつけば

右の手はポロシャツの裾をつまんでいた

きょとんとして振り向くあなたは


なんで狐に化けてるの? 


そう言って微笑んだ


景品でもらった白い狐のお面が

今にもこぼれそうな雫を隠してくれてる


でも、涙声になるから


今度いつ会えるの? 


とは聞けなかった


だからかわりに左手の拳をくいっと上げて

あなたの肩を小突く


コン。


今夜メールしよう


今度はプールでリベンジだ


まだまだ今年の夏を


終わらせてなるものか


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