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変幻自在

作者: このび

自分が自分じゃないような気がする。

私がそう考え始めたのは中学の頃からだった。

中学に上がって間もなく、違う中学に進学した小学校のころの友人と遊びに行ったときに

友人が放った「夕ちゃんなんか変わったね」

その一言でそう考えるようになった。

確かに変わったかもしれない。

小学生のころに比べて趣味は一変したし、言葉遣いも変わってきた。

地味系の集まりに所属していた小学時代と比べて、ところかまわず騒ぎ立てる感じの集団の

中にいるようになった。

恋人もできたし、勉強は少しだけ得意になった。

読書をして過ごしていた休日も、友人と遊んだり部活動をする休日に変わった。

でもそれは当たり前の事なんじゃないかと考えていた。

小学校から中学校なんて大きく環境も変わるし、人間としてもいろいろ成長するものなので

変わったことはむしろいい事なんじゃないかと思っていた。

高校入学から大学卒業、職に就いて自分で生活するようになった今との間でも

私は大きく変化していった。

私が変わっていく中で、周りの人間は私の事を「変わった」などと評するが

その都度私は、昔とまったく同じ人間など存在するものかと言い聞かせてきた。

それに、接する相手によって言動や行動を変えることによって、円滑な関係を

築くことができた。

しかしなぜ、私の周りから人が去っていくのだろう。

新しい友人ができても、すぐに私の下からいなくなってしまう。

皆、愛想笑いを浮かべて距離をとる。

先日、小学生の頃の友人、私に自分が自分ではないと思わせるような発言をした友人と再び会った。

その友人はあの時と同じ言葉を私に投げかけた。

私は思い切って彼女に相談をした。私のこの不安はどうすれば解消されるのだろうと問いかけたとき、彼女は「夕ちゃんは変わったけど、一つだけ変わらないところがあるよ。

それは夕ちゃんが夕ちゃんじゃないところ」と言う。

私には意味が分からなかった。意味が分からないはずなのに、それまで無かった私の顔から

大粒の涙があふれ出てきた。

そんな私を見て、彼女は優しく微笑んだ。その笑みがとても心地よくて、私はその表情を真似するところから始めた。


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