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死んで、レラ  作者: えとう えと
第一章
5/16

4時 意外と新聞配達の音で起きたりする


 どこまでも黒く暗い空に真丸な金色の穴が開いたかのように月が輝く頃、街路樹と街灯が交互に立ち並び綺麗に舗装された道路を一台の車が走っていった。


「ふわぁ……眠い」


 運転性に座るメイドを服着た女性は欠伸をする。いや、女性というには幼すぎる顔つきをした少女だ。外見からはとても運転免許が取れる歳には見えないがその運転技術は細かな部分一つ一つ取っても素人とは到底思えないものであった。


「姫、やっとですね」


 運転席に座るメイド服の少女は後部座席に座る黒髪の少女に話しかける。姫と呼ばれた少女は先程さらったレラの頭を膝に乗せ、膝枕をしながら満足そうに頭を撫でている。


「そうね、サラ」


 メイドの少女――サラは黒髪の少女がここまで幸せそうな顔をしているのは初めて見た。ルームミラーを見ながら主人の満足そうな顔にこちらも満足しながらハンドルを切る。


「喉乾いた、お茶ある?」


 黒髪の少女は窓から差し込んでは通り過ぎる街灯の光を見ながらそう呟く。すかさず助手席に座るメイド――ウラはお茶を取り出し渡す。


 こちらのメイドは先ほどのレラの意識を奪った張本人だった。レラが車に乗った後レラに膝枕をする為二人は座席を入れ替わっていた。


「ありがと」


 ウラは礼を言われると嬉しそうに返事をする。髪型と目の色こそ違うものの外見はサラとそっくりだ。それもそのはず二人は双子だった。二人は()()()()()()()()()()()()()()黒髪の少女に仕えていた。


「……姫これは」


 ふと、サラが口を開ける。


「なにか来てるわね」


 黒髪の少女も異変に気づき状況を確認しようとする。窓やサイドミラーでは確認出来ない位置にいるようだが気配を感じる。


「まさか、これは……」


 ウラが声を洩らす。


「サラとばして!」


「はい!」


 サラはアクセルペダルを踏み込む。柔らかく踏み始めた事で滑らかに加速する。これは主人への気遣いが含まれていた。


「……ん、……んん……」


 膝の上で目を瞑るレラは車が加速したせいか寝心地悪そうに唸る。黒髪の少女は申し訳なく思いながらも今は仕方ないと割り切った。


 それにレラが唸るのは当然である。法定速度などとっくに無視をして走っているのだから。


 だがそれでも気配は近づいてくる。他に車なんかが走っていないせいなのか妙に気配が強く感じる。


 ついにサイドミラーで確認できる位置まで迫られる。相手も車の様だ。


 多分雇われた殺し屋が何かだろうが三流もいいところだろう。だがそれでも――


「奴ら銃を持ってます!」


 異能を扱う人間が現れるこの国だがそれでも銃は規制されている。どうせ奴らが持っているのは粗悪品だろうがそれでも十分脅威になる。


 相手は容赦なく撃ってくる。何発も撃ったうちの一発がタイヤにあたるが防弾だ。


 だが、不意に嫌な気配を感じる。次の瞬間、急に車体が傾きものすごい速度で回転しながら建物に衝突した。


 そして、レラが目覚めた。
















 なんか凄い勢いで回転していた様な……うぷっ……気持ち悪い。目を開けると誰かに抱かれている。女の子?いや、それよりも此処はさっき載せられた車?なんか燃えてない!?


 という事はこの人たちが?いくら女の子といえど人は見た目で判断してはいけない。例えば痴漢された云々と女が言った場合、冤罪も男は大抵の場合信じてもらえない。と言うか今回の場合は確実にこの人たちだし。


 どうやら、事故って不意をつかれている様だし逃げるなら今だ。


 私はドアに手をかける。一瞬開かなくて焦るが鍵がかかっていたようで直ぐに鍵を開けそのまま出る。私を抱えてた女の子は驚いている様だがもう車内から飛び出して走っている。ここまでくれば、もうこっちのものだ。


「――逃げるとは滑稽だな」


 え?


 突然、ささやくような声がきこえる。


 次の瞬間、腹部に衝撃が走る。


「――カハッ」


 その声が女性だと気づいた時には意識が飛んでいた。
















 いきなり、車が建物に突っ込んだ為、黒髪の少女は何とかレラを抱いてレラを守ったが、状況の把握をしている隙にいつの間にか起きていたレラがドアを開けて外に出ようとしていた。


「まっ――」


 手を伸ばすが、レラに触れる寸前で無理な体勢でいた為に体勢を崩していまい逃す。直ぐに追いかけようとするがその時には追っていた者たちの一人であろう女に気絶させられ連れ去られてしまった。


「――ッ」


 思わず奥歯をギリっと鳴らす。


「姫!?追いかけますか!?」


 前席から声が掛かる。二人は無事だった様だ。元からこれくらいでは怪我くらいで大丈夫だと思ってはいたが。


 指示を仰ぎながらも自身の判断で動き出している二人に向けて言う。


「追いかけるわよ。新しい車を用意して!」


 二人は返事をして走っていく。


 先ほどの車の異常の原因を探るため、タイヤがあったはずの場所を見るとホイールごと無くなっていた。これでは交換だけでは済まない。


 丁度車体が傾いた辺りの道路を調べてみると一本の黒い薔薇が落ちていた。


「何故あの集団の中に……」


 これをやったのはおそらくレラを気絶させた女だと思われる。


 だが、疑問が生まれる。追ってきていた他のものに比べ力の差がありすぎる。どう考えてもあんな素人に毛が生えた程度の組織にいる様な人材ではない。


 そうこうしている内に二人が車を確保してくる。急いでそれに乗り込み指示を出す。

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