12時 少女は起きる
金曜日、今日はちゃんと起きれたので自分で連絡する。と言っても電話とかではなく学校指定のアプリで欠席だと送るだけだけど。
「レラ、着替えたらこっちきて朝ご飯できてるから」
向こうから声が聞けこてくるが至って平静。私も返事を返すが少しうわずってしまう。と言うのも実は昨日の夜は灯墨ちゃんの方から一緒に寝ようと誘ってきた。友達の家にお泊まりしに行ったりした事がない私からするとそれだけで一大事だ。灯墨ちゃんが言うには女の子はお泊まりする時一緒のベットで寝るらしい。本当なのかなぁ?とも思ったけど灯墨ちゃんの表情は至って真面目だったから嘘じゃないはず。なんか真面目すぎた気もしたけど。
そんな事があって昨日は一緒に寝た。世の女の子は灯墨ちゃん曰く寝る時に抱きしめあったり足を絡めたりするらしい。私も昨日言われるがままにしたんだけど恥ずかしかった。でも、早く慣れなければ、そう思いを決意して着替えてテーブルに向かった。
テーブルに並ぶのは昨日と同じように洋食だった。メーニューも少し違うみたい。
「レラ、食べていいわよ」
灯墨ちゃんがなんか緊張した面持ちでそう言う。やっぱりさっきの私みたいに昨日のことを思い出して恥ずかしくなってるのかな?
「うん、いただきます」
スクランブルエッグを一口救って口に運ぶ。昨日の料理はなんだか高級な感じで今日のは温かみを感じる。そんな気がする。
「……おいしい」
「そ、そう、ならよかったわ」
灯墨ちゃんの口の端がピクピクしている。どうしたんだろう?
「レラさん、このスクランブルエッグは姫が作ったものなんです」
「ちょっ」
「そうなの?ありがとう、灯墨ちゃん!」
「べ、別に気にしないで」
なんか灯墨ちゃんの様子がおかしいけどどうしたんだろう?顔をかしげているとサラがさらに説明する。
「昨日は『本当は私が作ってあげたかったのだけど』なんて言って、さも、自分が普段から料理をしますよみたいな事を言っていましたが実は姫は料理をしたことはあまりなく……」
「も、もう!恥ずかしいから言わないでよ」
灯墨ちゃんが顔を真っ赤にしながら抗議する。灯墨ちゃんは恥ずかしそうにするけど。
「私は嬉しかったよ、灯墨ちゃん、ありがとう」
心の底からそう思った。
「え、いや、……うん、どういたしまして」
そんな灯墨ちゃんを見て微笑ましくも思いながら私たちは食事を続けた。
土曜日、私たちはホテルをチェックアウトした。初めて起きたのは部屋の中だったしここ二日は室内で過ごしていたため見る機会がなかったけれどエントランスに来るまでに高そうな内装をみて何度も驚いた。
ホテルを出たところで灯墨ちゃんが車で家まで送ってくれると言ったので帰る時に寄るつもりだったコンビニまででいいと伝えた。
「レラ、本当にいいの?」
「うん、コンビニにも行きたいし。ここ二日ずっと部屋にいたから少し歩きたいと思って」
本当なら家まで自分でと言うつもりだったけれど道もわからないし、そもそも、私の家までそれなりに遠いと言う理由でここに止まったのだから全てを自分でと言うのは無理があった。
コンビニから出て先程まで話していた灯墨ちゃんのことを思い出――
と思ったけどまだ居てくれたようだった。窓から少し見える車内には目を瞑ったサラが見える。まだ遅くない時間だと言うのに寝ている。運転はサラがしてくれて助かったけれど未だに免許持っているのかは不明。どう見ても私たちと同じくらいだし。
最後に挨拶しようと車に近づくと窓を開けてくれる。
「灯墨ちゃん、いろいろとありがとう」
そう、色々とお世話になった。元はと言えばこの人たちが原因な気がしなくもないけれど。それでもお世話になった。主にホテルとか。でも、子供だけでどうやってホテルを取ったのか考えるとやっぱりサラとウラは未成年ではないのかも。
「気にしないで、私は久しぶりにレラに会えただけで満足だし」
そうやって微笑む。
「姫はしゃいでましたもんね」
いつの間にか起きていたサラがそう言うと灯墨ちゃんは反論する。
「私も楽しかったです!」
ウラがそう言ってくれる。
「じゃあ、レラ、気をつけて帰るのよ」
「うん、皆んなも気をつけてね」
そう言って分かれた。
なんだか凄い人達だったなぁ、なんて思いながら帰路に着いた。




