10時 あにむす
やはり何度見ても美少女って感じだ。さっきの言葉で余計に意識してしまうけれどそれでも聞かなければないらないことがある。
「あの」
「どうしたのレラ?私のことなら何でも教えるわよ」
「えーと、その前に心象能力って言うのは異能のことだよね?」
異能――150年前に突如現れた超常の力。と言う事は教科書にも載っている。でも、『異能』とだけ書かれていて心象能力とは書かれていなかったはずだ。
「そう、私たち、というより心象能力が身近にある人、使える人たちの間ではそう呼ばれている。多分、国は異能と名付けたけど実際使うもの達には心象能力と言う呼称が定着してしまったと言う事だと思うわ」
そうなのかと納得する。確かにそう言う事はあると思う。中学の時、隅の方で喋っていた男子達が使っていたゲーム用語が実は公式のもので無かったとか話していたのを小耳に挟んだことがある。多分同じような感じだ……と思う。今思えばあの人たち妙にチーズ牛丼に反応してたけど何かあったのだろうか?
「じゃあ何で私も異能――心象能力を使えたの?それに何で知っていたの?」
不思議に思っていた。誰にでも発現する可能性が有るのならば発現する事自体はおかしくないけれど、なぜ灯墨ちゃんは知っていたのだろうか?
「それはあなたも私も先生から"シンデレラ"を聞かされていたからよ」
先生……あ、もしかして。
「灯墨ちゃんってもしかして昔私の家に来たことある?」
「あるわよ、やっと思い出してくれた?」
思い出したことが嬉しかったのか笑みを浮かべる。ついキュンとして顔が赤くなるのを感じるけどやっぱりさっきから意識してしまってるのかなあ。
「でも、お母さんの"シンデレラ"を聞いたからってどう言うこと?」
「それにはまず心象能力の簡単な説明をした方が良いかもね」
心象能力――それは心に大きく左右される。
それ知った研究者達はさまざまな実験を繰り返した。英才教育を施したり暗示をかけたり時には心だけでなく身体にもさまざまな処置が施された。
だが研究は行き詰まった。その先には何もなく出来上がったのは社会に出れば優秀な歯車になれる数人の子供と山のように積み重ねられた廃人だった。
本来の目的であった能力の増加、人工的な発現は失敗に終わった。
だが数年後。新たな発見がされる。心象能力が発言した子供を集め、能力の内容、生活習慣、趣味、娯楽、衣服、家庭内の経済状況、親の性格、血液型。様々なものを調べた。
初めに着目したのは遺伝や環境。だがそれは大した情報は得られなかった。それから様々なことを調べていったが目立った成果はなく終わると思われていた時、1人の研究者は事細かに書かれた生活時間の表を見てある事実に気づいた。
集められた子供の中でも能力が高いものは全てではないが必ずと言って良いほど夜寝る前童話や絵本などを読み聞かせされていた。
いや、それ自体は珍しい事ではない。問題は何度も何度も同じ話だけを繰り返して長い時間をかけて聞かせ続けていたという事だ。
そこに何か秘密が隠されているかもしれない。
そんな事実に気づき周囲に広めようとしたがまともに取り合うものは居なかった。
当初であればそれでも少しは取り合ってくれたのだろう。だが、そのときには既に研究は凍結まじかというところまできていた。誰かがまだ続けたいと思っていたなら別ではあったが当の本人たちもそこまでの意欲は既になかった。
そしてその研究は終わりを告げた。
それから十数年が経ち。1人の研究者がが強力な心象能力を使う子供を発現させたとと言う知らせは瞬く間に広がった。
その研究者はあの事実を突き止めた研究者であった。あの時から彼は子供を育成しその末に2人の強力な心象能力を使う子供を誕生させた。
研究者は同じ話を毎夜子供に聞かせたと言う。ただそれだけ。それだけで世界を揺るがすほどの二つの種を完成させた。
その考えは今度こそ受け入れられた。そしてその方法を応用して能力の強化には成功した。だが、かの子供達には到底及ばなかった。それにそれは素養があるものに強化を施せる程度であり、人工的な発言を促すことはできなかった。それでもその方法は受け入れられ一般的になった。
「それじゃあ、お話し以外に何かが足りなかってことなのかなぁ?」
実際全く成功しなかったわけではないし。何かが足りなかったと考えるのが妥当だろう。
「うーん、私ってるのここまでだから。そこまでは私もわからないわ。でも、あの物語を聞いたことでレラが能力を使えたのは確かよ」
「あれ?でも、お話を聞いても能力が強くなるだけで発現を絶対するわけではないんじゃ……」
そう言うと急に何故か灯墨ちゃんは少し顔を赤らめる。
「……ほ、本当は私が心象能力を使える時点でレラも使えるのよ、なんて言うか……い、一心同体と言うか//」
なんか凄い顔赤らめてるけど、さっきの告白みたいなやつの方が恥ずかしいと思うんだけど。でも、こう言う灯墨ちゃんも――
「……かわいい」
「ブハッ」
その瞬間、灯墨ちゃんはいきなり鼻血を垂らしながら倒れた。あわてて2人のメイドがそばに寄って介抱する。これで安心だ。……ん?なんか血で床にかいてる。なになに……『もう悔いはない』
急に心配になってきた。何で心強いメイドさんが2人もいるのにこんなに不安なんだろう。
私は暫くこの状況を見守っていた。




