終幕
数日に渡る王都での反乱は、王女殿下の帰還と共にあっさりと決着が付いた。
思うに、彼等『王立騎士団』に足りなかったものは『主君』であり、その者が保証する『誇り』であったのだろう。
一歩間違えていれば、我々も逆賊と同じ道を歩んでいたかもしれない。もし己が『王立騎士団』の騎士でなく、辺境伯等諸侯が統治する領土の『騎士』であれば。同じように『王家』へ刃を向けていたかもしれない。彼等にとって、それが最も恐ろしく、敵対する賊に対し『躊躇い』を生み出していたに違いない。
―それ故に、収束宣言の後に行った『フィオナ女王陛下』の演説に。彼等は救われた。
『此度の反乱。全ての責任は我等王家に在る、故に余がその全てを背負い、戦いによって失われたもの、これから失われるべきでないものを。我が終生を捧げ取り戻し、またそれを護ると誓おう』
先の戦で、己が先陣を切り騎士を率いて民を護って見せた彼女の言葉を、疑う者は一人として居なかった。
王都復興に際しては、彼女の『イリア』総督という立場も優位に働いた。王家の私財によって賄われた物資は速やかに分配され、建材や職人など公共工事に関する流れも滞りなく進んでいった。
彼女は言った。『一度失われたものを取り戻すことは難しい、しかしそれに学び改めることは容易い』と。『新王陛下』はこれを機に諸領地に対する財政の見直し、『騎士』位の再確立等、前王が疎かにしていた部分を中心に『ガラデア』の経済を刷新して見せた。
―「とはいえ、まだまだ課題が多いのが実情だ。騎士の徴用を増やした分、傭兵の需要は低下し、今度はそちらの不満も高まりつつある。陛下もまた、彼等に新たな登用先を見出そうとしてはいるが……ままならないものだな」
それから暫しの時が立ち、俺達はユートの帰都に乗じ茶話会という名目で城内に集まっていた。
今の俺達は、新王の戴冠式及び収束宣言の際に『勲功爵』として叙爵され……女王陛下たっての頼みで『ガラデア』諸地方を回り、情報収集と財政復興に奔走している。
「ま、『万人が受け入れる国』なんてものはどうやったって作れねえ、それも今やっていることは本来前王陛下がすべきだったことだ。取り戻すのには時間がかかって当然さ」
俺の言葉に、ユートは同意しつつ言う。
「実際、良くなりつつあるとは思うけどね。地方に行く度、徐々にフィオナの評判を耳にするようになった」
「冒険してるなあ、羨ましい限りだ。俺も『イリア』と『ガラデア』以外の街に行きてえなあ……」
それには、エリーゼもしかめ面をして見せた。
「叙爵どころか、内政へ取り立てられても尚、不満があるというのか」
それは違う。何処にも不満などない、大変名誉なことだ。だから、そこではない。
「俺達は冒険者だ。あの旅で何度か口にしたじゃねえか、俺達の原動力を」
「……『ロマン』か。貴公等は地位や名声より、それの方が重要だというのだな」
「まあ、僕も『自分の意志で』行く場所を決めたいかなあ」
「私はもうどこでもいいから『外』に出たい……」
そのような俺達を見て、エリーゼは諦めたように言った。
「確かに、貴公等はどうも国政には向いていないようだ。いいさ、時が来ればまた『冒険者』に戻ると良い。私も便宜を図ろう……しかし、この国がもう少し落ち着いてからな」
此処で、第一部『ガラデア王国編』終幕となります。
しかし物語はまだ序盤。引き続き描き続ける所存でありますので。
今後ともよろしくお願い申し上げます。




