表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうやら俺は『異世界転生』の脇役らしい。  作者: 十和田屋 芳治郎
剣と魔法と冒険者
11/17

それは磨り下ろして使うモノ

 翌日の明け方。俺は未だ眠け眼のユートと、毛布にくるまって簀巻きと化しているレネイを叩き起こして。其々が嫌いな湿気パンと干し肉を口に突っ込んで目を醒まさせた。

 「一応日帰りの距離とは言え、徒歩(かち)で行くんだ。出来るだけ早く出ないと帰る頃には飯食う場所が全部閉まってるぞ」

そのように説教をしつつ、俺は二人を連れて道を進む。

「しかし、この辺りの道はよくできてるよなあ。やっぱり馬車が通るからか?」

ユートが足元を見ながら、そのように呟く。

「そうだなあ、『イリア』の頭が変わってから、風呂や道路と……『イリア』に人を呼ぶための政策が増えた気がするな」

確か今の『総督』はガラデア王家の人間だった筈だ。名前は忘れた。

「そういえば、レネイはどのあたりから来たの?」

 ユートの言葉に、レネイはどう伝えたモノかと逡巡してから口にする。

「……村を通って『イリア』に向かう荷馬車にこっそり乗り込んだから、どれくらい離れてるかは分からないかな。ただ、結構南の方だと思う。ほら、私の肌。『イリア』の人と比べると茶色っぽいでしょ?」

「ああ、『魔族』だからよく分からなかったが、確かに青褐色でも茶っ気寄りではあるな。東南の『人間属』にありがちな色だ」

「うん、レネイの肌って綺麗だよね」

「あ、ありがとう……ユートの髪も綺麗な色だよ」

「そうかな、僕の故郷だと皆こんな色だったから。そう言われるのは初めてかも」

 コイツ等、放っておくと直ぐいちゃつき始めるな。

「いや、僕はアッシュの目とかカッコいいと思うぞ。琥珀色で如何にもって感じがする」

なんか、取って付けたような言い方だな。

「ホントだって、僕みたいな黒目からすると色がある目ってのは宝石みたいに見えるんだ」

「あー、そういうもんか……?まあ、ありがとうよ。こんな悪人相を褒めてくれて」

「まあ、悪人相ではあるけどね」

「うん、悪人相」

……。

 そのように、辺りの地形、植生や俺が今まで体験した不思議な出来事。そんな話をしている内に、目的の村へ辿り着いた。

 そして、村に着いて先ず行う事は『依頼主』の確認。今回は村長(むらおさ)が代表となっている為、村民に彼のいる場所を問う。

「おい、そこの人。ちょっといいかな」

俺の掛け声に、作物の間引きをしていたらしき人物がこちらへ向かって歩いてくる。

「……おや、もしかして。おれらの依頼を請けてくれた冒険者さんかい?」

旅装束を纏っていると、この辺りの話が早い。

「おう、俺達がささっとあんなクソ鹿追っ払ってやるよ。それで、村長に会いたいんだが。何処へ行けば会えるか?」

 俺の言葉に、村民の男は安心したような笑みを見せ、高台にある建物を指さした。

「あっこの一番村が良く見えるとこ、ちょいと広めの家が見えるだろ。丁度集会でお偉方が集まってる筈さ」

「そうか、ありがとうな。そんじゃ、期待して待っていてくれ」

俺は別れをつげると、俺達は村長が居るという建物へ向かった。




 「そうか、あんたらが冒険者か……どうも二人は大分若く見えるが、大丈夫なのかね?」

村長と顔を合わせて、俺達が依頼を請けたと説明をした時。先ずそのようなことを言われた。

「おいおい、若さってのを舐めちゃいけねえぜ。確かに経験値じゃ俺より劣るが、健康と気概ばかりは逆立ちしたって真似出来ねぇ。そうだろ?」

「まあ、そうさなあ。確かに、他でもない『イリア』が寄越してくださった冒険者殿だ。どうかあの魔獣を追い払ってくれんか」

 さて、ここからが大切な所だ。

「時に、村長殿。例の鹿は『どの程度』狩ればいいか?」

魔獣とは言え、端から全部狩りつくすという訳にもいかない。そのような事をすれば、今度は一角鹿を餌とする肉食獣が里へ降りてきてはまたひどい事になる。

「そうさなあ……群れの内でも図体の大きい雄鹿を狩ってくださればある程度は落ち着くんじゃないかね」

成程、群れは残しつつも。当分の頭数は増やさないようにして欲しいという感じか。

「それではその『角』を依頼完了の証とする、という形で良いだろうか」

 俺の提案に対し、村長は頷いた。

「分かった、数頭分の成獣の角。それを持ってくれば、完了の判を押そう」

そうして、俺は村長と握手をして。建物を後にし村に面した山へ向かった。




 「村で取り決めた通り、今回の依頼は数頭の、リーダー各と今後そうになりそうな雄鹿を狩る事を目的とする」

そうユートに伝えた後、俺はレネイに向かって言った。

「こういう依頼の場合は、レネイが肝になる。魚釣りの時と同じだ、鹿の群れからいっとう大きな個体を見つけ出し。その指示に従って俺とユートが仕留める。気を付けるべきことは、訓練の時に言った通り、背後と退路に注意する事。以上だ」

 そのようにして、鹿狩りを始めた俺達だが。想定よりも迅速に事を進めることが出来た。レネイの索敵能力とユートの運動能力は劇的に成長しており、レネイが行う指示の精度は十割。ユートも『身体強化』と『神器召喚』により一刀で確実に仕留めて行った。

 「……よし、まあこんなもんだろう」

そう言って俺が剣の血を払って鞘に収める頃には、群れは四散し。ユートは息も絶え絶えながらにしっかりと地に足をつけていた。

「ああ、だいぶ狩り取ったな……それに、まだまだ僕には体力が足りないってことがよく分かったよ」

 そこは仕方がない。一か月そこいらで俺より体力を付けられては立つ瀬がない。レネイも結構な集中力を使ったのか、ユートほどではないが疲弊した様子を見せていた。

「まあ、二人は水分を摂りつつ少し休憩を取れ。無理に動いて良い事は一つもないからな」

 その間に、俺は丁寧に一角鹿の角を切り取っていく。

「ただ、一応これは見ておけよ。狩猟系の仕事だと、こういった『特徴的な部位』を判断材料とされる場合が多い。特にこういった角や牙のような、肉の奥から生えている部位は……後々売るときに『根元から』採取できているかで買い取り額に天と地ほどの差が生まれる」

 そのようにして狩猟した分の雄鹿から角を切り出すと、縄で結んで背から下げられるようにした。

「しっかし。『一角鹿』って名は割と詐欺だよなあ、二本の角が螺旋状に絡まって一角に見えてるんだから」

その後鹿の死骸を『見せしめ』のように一か所に纏め、雑な話をしながら山を下っていると。レネイがちょいと俺の服をつまんで囁きかけた。

「あれ、狩猟中は気が散らないようにと思って言わなかったんだけど。山に入った時から、ずっと誰かが私達をつけて来てる」

それに、俺は特に振り返ることもなく答える。

「……ああ、それは多分村の『見張り役』だな」

「どういうこと?」

 「偶にいるんだよ『それっぽい偽物』をこれ見よがしに持ってきて『解決した』なんて宣う奴が、まあその辺りは言わぬが花。俺達は何もやましい所もなくちゃんと依頼を達成したんだ。日が傾く前に村へ戻ろう……唯の村人にとっちゃ夜の山は危なすぎるしな」




 事実、村長の所へ改めていけば。特に疑われることもなく『確かに、確認しました』という言葉に、深いお礼を受けた後に依頼書に判を押して貰えた。更に加えて、村長は依頼書に一筆を書き込んだ。

 「なあ、アッシュ。最後に村長が依頼書に書き込んだ奴、アレ何だったんだ?」

俺は、ユートの問いに『依頼書』から『完了証書』に変わった紙を見せながら答える。

「これは冒険者が依頼主の想定以上の成果をだした場合、時折一筆『この者らは優れた冒険者である』とくれる『お墨付き』のようなものだ。またそういった情報も、食酒亭が冒険者を判断する際の判断基準になる」

「優れた冒険者……えへへ、なんか嬉しいね」

 実際、二人とも実戦でも尚訓練通りに動けていたし。満足のいく結果と言えるだろう。今後経験を重ねれば、さらなる成長を期待できる。

「ま、二人の初仕事成功祝いって事で。今晩はこの『角』を売った金を使ってパッと美味いもんでも食うか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ