似たもの同士
「なんで、1人じゃダメだったのかな」
「そりゃ、前科がある奴を1人にはさせたくないからな」
「信用がゼロだね」
うーんと顎に手をやりながら歩くラークの疑問に、ジグルドが即答し、クレディもそれに追従した。
「僕だって、わざとやってるわけじゃないのに。少しは信用して欲しいよ」
はぁとため息をつきながらラークは、たこ評価の低さに嫌気をさした。
「何か問題を起こすだろうという信用は絶大」
ザイードがキメ顔でサムズアップした。
「いらないよ!そんな信用!」
「種類は問わないが信用があることを言いたかった」
「嘘つけ!!!僕のガラスのハートをちゃんとピッケルで砕いて楽しいか!?」
「楽しい」
「楽しい」
「見てる分には楽しいよ」
ラークが声を荒げると、3人は真顔で肯定した。
(田舎の父さん、母さん、元気にしていますか?僕は友達を間違えたようです)
素直に悪口が楽しいという3人を眺めながら、ラークは心の中で家族に悲しい内容の手紙を送った。
それから4人は校舎を出て、昨日ぶりに厩舎にやってきた。
「よーしよしよし、会いたかったよ!」
「ミュー!」
クレディはハーティを見つけると、一目散に近寄り鼻筋をなで始め、ハーティも気持ちよさそうにされるがままになっていた。
「クレディ、そんなにはしゃいじゃって、みっともないよ?」
ラークはここぞとばかりに普段見ることのなかったクレディの態度をイジり始めた。
(・・・・おかしい。『人のこと言えないだろ』ってツッコミ待ちなのに・・)
しかし、ラークはいつもとの違和感を感じていた。分かりやすくボケたときには必ず拾ってくれていたのにと。
「ん」
「ガウ?」
「へへっ」
「グルッ」
「こいつらを見てると、今朝の僕のイタさが少し分かる気がする。反省しよう」
必至に隠しているが、仕草や表情に臭いほどの幸せオーラが滲み出ていた。
「それにしても、なんとなくドラゴンも皆に似てる気がするね」
ラークはそれぞれのペアを見てそんな事も同時に思った。
「お前は正反対だけどな」
森の賢者と学園のバカ。ジグルドはそのあだ名を思い出し、目を細めた。
「はぁ、下の者は上の者のことを理解できてないとはこのことだよね」
ふわっと前髪を掻き上げるラーク。
「ブーメランになってることさえ気がつかないなんて幸せだな」
ガシッと腕を組むジグルド。
「なにを!」
「やんのか?」
2人は額を付き合わせて、火花を散らした。
「まあまあ、とりあえず僕らもドラゴンもご飯の時間にしよ」
「腹が減っては、戦は出来ぬ」
「戦はしないで欲しいけどね」
クレディの提案に、曲解したザイードも、煽りあっていたラークとジグルドも受け入れ、ひとまずその場は落ち着いた。
「それにしても他のクラスと厩舎に違いは無いんだね」
4人は厩舎の中で自らの弁当を食べながら、ドラゴンとトカゲにご飯をあげていた。
「まあな」
「だったら、Aクラス目指さなくても良かったのか」
そっけなくジグルドが肯定すると、ラークはご飯を頬張りながら少し落胆した。
「Aクラス目指してたんだ」
「無茶、無謀、無理」
「いいでしょ!僕にはAクラスを目指す権利もないの!?」
クレディとザイードが驚きに、ラークはツッコんだ。
「いや、別に目指すのは構わないんだけどさ。その・・」
「自分の実力と見合ってないもんな」
オブラートに包み伝えようとしたクレディの優しさを、ジグルドがオブラートを剥がして代弁した。
「あはは・・でも、厩舎が理由でAクラス目指してたの?」
「確かに。厩舎フェチ?」
「違うよ!・・・その、ドラゴンを育てるなら、なるべく良い環境で過ごして欲しかったから・・・」
クレディの疑問に、ザイードは少し恥ずかしそうに答えた。
「へぇ」
「・・男だねぇ」
「こっちが恥ずかしい」
3人はニヤニヤとラークに視線を送った。
「でも!厩舎に違いが無いなら別に良いんだよ!」
そんな3人の視線を断ち切るように、わざとらしく大きな声をだした。
「ま、結局お前のドラゴンはいないから、そもそもだけどな」
「言わなくてよくない?それ」
「まぁでも、クラスに差がなかったら、モチベーションにも繋がらないね」
ラークは少しやる気を削がれたのか、胡座をかきながら頬杖をついて、全身の力を抜いた。
「そんなことは無いぞ。クラスに応じて育てる竜のランクが変わってくるからな」
「へー、ドラゴンにランクなんてあるんだね」
ジグルドの言葉にラークはそうなんだと反応を示した。
「一応な。ドラゴンは多種多様だが、どうしても戦闘用のほうが重宝される傾向にある。ランクも戦闘を基準にして考えてあるらしい。って入学式の時に言われてたけどな」
「ハハハ、入学式のときは序盤から終盤まで寝てたから」
「全部だね」
笑い飛ばすラークに、やっぱり人とズレてるなと3人は思った。
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