そのトカゲ・・・
「スライムよりも下じゃないか!」
洗練された膝からの崩れ落ち方で四つん這いになり、叫んだ。
「プクク、いや、スライムよりは、プクッ生態系はドラゴン寄りだぞ・・・プク」
「まあまあ、ジグルドの言い分も間違ってはいないし・・クス」
「ブフッーーーー!!」
ジグルド、クレディ、ザイードは三者三様の反応をとった。
「ザイード、お前だけは許さん」
首を180度回し、ザイードを怨嗟の念を込めた目で見つめた。
「落ち着けって、お前らが思ってるよりドラゴンは特別じゃないし、トカゲは凄いんだぞ」
ラークがアンデットような雰囲気を醸しだしたのを見かねて、レオルエはフォローを入れた。
「???」
ラークは正気を取り戻し、首を傾げた。
「ドラゴンは大きいトカゲとも言えるし、トカゲは小さいドラゴンとも言える。それぐらい近しい存在なわけ」
「でも魔法は使えないですよね」
ラークはそれでも残念そうに呟いた。
「今、なんて言った?」
「え、魔法使えるんですか?」
レオルエの言葉にラークは驚いた。
「何を言っているんだ?使えるわけないだろう」
レオルエは単純に聞き返しただけだった。
「期待した僕がバカだった」
ラークは頭を抱えた。
「まあまあ、体調管理や生態はある程度似ているから、トカゲを育てられたら、基本は出来ているという事だ」
レオルエは得意げな顔で腕を組み、ふふんと鼻を鳴らした。
「そうかもしれないですけど・・・」
しかし、ラークは不満げに肩を落とした。
「お前達はここへ何しに来たんだ?ドラゴンの飼育方法を学ぶためだろ?」
その態度にレオルエは少し真面目な顔をして、問いただした。
「でも、トカゲはドラゴンじゃないですよ」
悪いのは要特別待遇者になった自分自身の行いにあったということは重々承知の上なのだろう、ラークはそれでも残念そうに呟いた。
「俺だって教師だ。ただのトカゲを育てさせるつもりはない」
レオルエは少しバツが悪そうな顔をして、頬を掻いた。
「と言うと?」
思いがけない救いの言葉に、ラークは顔を上げた。
「知っていると思うがドラゴンは種としての格が違う。存在するだけで普通の動物は近寄ろうともしない。・・・・それじゃあ何であのトカゲはここにいると思う?」
今度はまるでクイズを出すかのように、ラークに問うた
「まさか!・・・秘められた能力があのトカゲにはあるんですね!」
ラークは自分でだした答えに目を輝かせた。
「ああ、その通りだ」
レオルエもはしゃぐラークを満足げに見つめながら大きく頷いた。
「やったあ!僕だけの特別な相棒だ!」
よほど嬉しかったのだろう。ラークは諸手を挙げ、ガッツポーズをした。
「それで、その秘められた能力ってのは一体何なんだ?」
静かに事を見守っていたジグルドも、気になったのであろう続きを促した。
「それはだな・・・知性があるということだ!!」
レオルエは少し溜め、これでもかというほど大げさに発表した。
「・・・それだけですか?」
ラークは点になった目をパチパチさせた。
「十分だろう?」
レオルエも思った反応と違ったのか、目をパチパチさせた。
「何というか、もっと凄いのかと・・」
ラークは手をワキワキと動かしながら、あやふやに言葉を紡いでいった。
「言っただろ、魔法は使えないって。それにあのトカゲは森の賢者と言われ、人間の言葉を覚えることが出来る程賢いんだぞ。それこそドラゴンより賢いと言われているくらいだ」
レオルエは、トカゲの凄さを熱く説明しだした。
「そんなに凄いのに聞いたこと無いですね」
クレディは聞き覚えがなかった話に興味をそそられたのか、会話に割って入った。
「まあな、あのトカゲ、リトルシュナイドトカゲは希少性が高く、飼育していた前例が殆ど無い。1匹で3億ゴールドはくだらない程珍しいんだぞ」
レオルエは、知らなくて当然だとわかりやすくその希少性を説明した。
「「「「さ、3億!?」」」」
4人はその金額に目が飛び出した。
「王都の一等地にドデカい家が買えるぞ・・・」
「一生食べるのには困らないね・・・」
「・・・」
ザイード以外のジグルドとクレディは届かない夢に想いを馳せ、目が¥マークになっていた。
「ジグルドもクレディも僕の相棒をそんな目で見ないでよ。まったくザイードの落ち着きっぷりを見習ってほs・・・」
「女子生徒の一家に一台超小型大容量カメラ最新モデル」
目が血走っていた。
「コイツ、届かない夢を夢で終わらせない気だ!誰か、衛兵を呼んで!」
「あ、もしもs・・」
クレディが通信石で呼びかけようとすると、ザイードがそれを奪って通信を切った。
「大丈夫。さすがに友達のは盗らない。友達のは」
「僕らって友達だよね!親友だよね!」
ラークはハハハッと引き攣った笑顔で、ザイードと無理矢理肩を組んだ。
「よーし、早く捕まえないと!|逃げちゃうといけないからね《盗られるといけないからね》!」
ラークは急ぎながらもそろりそろりと静かにトカゲに近づいていった。
「それは、大丈夫だ。なんでここにそんな珍しい奴がいると思う?」
レオルエが、抜き足差し足と忍び足でトカゲに近づくラークを見て喋り始めた。
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