問題児認定
前半の授業が終わり、昼休みになった。この学園に通うほとんどの者は食堂に行き、食事をとるが、ラークたちは教室の机を移動させ、かたまって弁当を広げていた。
「はぁ、結果が心配で全然授業の内容が頭に入ってこなかったよ・・」
ラークは、机に広げられたお弁当を食べながら、溜め息をついた。
「それはいつものことだろ」
ジグルドは弁当を食べる手を止めずに、事実を述べた。
「元はといえば、ジグルドのせいだろ!」
「過去の行いは変わらない。そして未来は掴み取るものだ。良かったじゃないか、昔のお前がいたからこそ、称号が得られるんだぞ?しかも15年ぶりの快挙じゃないか」
語調を強めるラークに対して、ジグルドは半笑いで羨んだ。
「まだそうとは決まってないでしょ!それにそんな称号はいらないよ!」
そんなジグルドに余計に腹を立てるラークであった。
「まぁまぁ、落ち着いて。まだ決まったわけじゃないでしょう?ほら、ジグルドが叫ぶまでに書いてた人もいるだろうし・・」
クレディが、優しく元気づけようと、可能性の話を切り出した。
「あのとき書いてたのは先頭のクラスの十数人。全体の5%も満たない」
ザイードにより、その可能性は切り裂かれた。
「なんで、余計に不安を煽るの?友達だよね?」
心底不思議そうな顔をしてラークは尋ねた。
「嘘をついたことがないのが取り柄」
ザイードがキリッと曇りなき瞳でラークを見た。
「嘘つけよ!よくそんな目が出来るな!」
ラークは叫んだ。
ピーンポーンパーンポーン
「「「「???」」」」
突如鳴り響いたチャイムに4人は意識を向けた。
「えー、ただいまを持ちまして、票の開示が終了いたしました。では、発表いたします。3年・・要特別待遇者なし。2年・・飼育科Eクラス、ラーク。以上で発表を終了させて頂きます」
ピーンポーンパーンポーン
「・・・・」
キールは、下を向き、肩を小刻みに震わせた。
「ラーク?」
クレディが、ラークの顔を伺った。
「・・・校内放送で・・」
キールは小さな声で言葉を漏らした。
「なんて?」
聞き取れなかったクレディが耳を近づけた。
「校内放送で発表する必要が、どこにあるんだあああああ!」
ラークの叫び声は、旧校舎中に響き渡った。
翌日、
「おはよー、なんか朝からすごい見られたんだけど」
ラークが教室に入り、自分の席の椅子を引きながらジグルドに喋りかけた。
「そりゃあな、要特別待遇者だからな」
さも当然とばかりにジグルドは答えた。
「校内放送じゃなくて、直接伝えて欲しかったよ・・・」
朝から被害をうけたラークは、疲れたのか机に突っ伏した。
「ういー、席に着けー」
するとドアを開け、相変わらずのボサボサ頭でレオルエが入ってきた。
「・・・じゃあ、このまま1限目に移るぞー」
朝のホームルームを終えると、レオルエは生徒達を外に連れだした。
「さて諸君、今日は待ちに待った、竜とのご対面だ」
リューデリア学園飼育科の特別な授業、『育竜』の初めての授業が始まった。
「君らのこれまでの学園生活からこちらで相性の良いドラゴンを選んだ」
生徒らのざわめきを気にすること無く、レオルエは淡々と事務的な説明を続けていった。
「遂にか・・」
「やべぇ、ちょっと緊張してきた」
「いよいよか、ま、どんなドラゴンでも、俺には関係ねえよ」
周りの浮き足だったような空気とは違い、ジグルドはどこかどっしりと構えていた。
「何言ってるのさ?卒業までずっと関わるんだよ?」
プフっと吹き出しながらラークは馬鹿にした。
「そういうことじゃねえよ。バカはこれだから困る。どんなドラゴンであっても俺が最強にしてやるんだよ」
馬鹿にしてきたラークを馬鹿にしながら、ギラリとジグルドの目に闘争心のようなものが浮かんだ。
「何だか説得力があるなぁ・・・」
日頃から人を陥れることが得意であることを実体験として認識しているラークは、引きつった笑みをこぼした。
「でも、いいよね。僕には関係ない話だからさ」
ラークは羨ましそうな目線を、ザイードとクレディに向けた。
「透明になれるドラゴンが良い」
「僕は優しい子だったらいいな」
2人は、どんなドラゴンが良いか話し合っていた。
「クレディはなんとなく想像してたけど、ザイードは随分具体的だね」
ラークは意外そうに、ザイードを見た。
「助手にする。盗撮の」
ザイードはハッキリと一文字の迷いも無く言った。
(コイツはドラゴンを何だと思っているのだろうか)
ラークは呆気にとられながら、その褒められない欲求の素直さに感心していた。
「じゃあ、厩舎を開けるぞ」
ラークがザイードに呆れていると、いよいよそのときがやってきた。
「「「「「「おおおおおおお!!」」」」」」
目の前には、大きな鉄格子によって仕切られた多種多様のドラゴンが並んでいた。
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