コーデリアの想い
「ここが1年Dクラス・・」
私はコーデリア=ハーネスト。今日からリューデリア学園の1年生です。教室のドアの前で、一旦意気込んでから、ドアを開けた。
大勢の視線が、自分に降り注いでいるのが分かります。
「コーデリアさん!先日うちの父がパーティでお世話になりました。ぜひ今度パーティに招待させて下さい」
「私の家で、今度お茶会を開くのですが、ぜひいらして下さい」
「先日、僕の所の商会が開発した魔道具があるんだ。試してみてよ。はいこれ」
「はい、ありがとうございます」
そのまま、黒板に貼りだされていた座席表を確認し、自分の席に座ると、一気に他の貴族の子や、大商会の子が話しかけてきた。
皆の笑顔は、私ではなく、私の家に向けられているということを理解しながらも、私は感謝の言葉と笑顔を振りまいておきます。
「zZZ」
「・・・」
「僕はクレディ。よろしくね」
「・・・」
私に話しかけてこないのは平民の方ばかりです。自分の時間を自分のために使っているのを見ると羨ましくなります。私も普通の女の子だったらな・・・
「あれ?コーデリアさん?まだ残ってたの?」
「!!・・ラークさんですか」
少し学園生活に慣れ始めた頃、急に声を掛けられたことに驚き、振り向くと、そこに1人の男のクラスメイトがいました。
その名前は、貴族ではない方なのに私でも知っていました。入学してすぐだというのに、学園の問題児となっているのです。
「勉強?偉いなぁ。頭良いのにそれでも勉強するなんて」
「勉強しないといけませんから・・・ラークさんは何を?」
勉強しなくてはなりませんから。侯爵家三女として・・・
「僕は先生に怒られててやっと解放されたんだ。わざとじゃないって言ってるのに・・・」
「何をなさったんですか?」
「校長の銅像あるでしょ?成り行きであれに落書きしたら怒られたんだ」
「それは・・災難でしたね」
どうやったら、故意ではなく銅像に落書きをするのでしょうか。思わずフフッと笑ってしまいました。
「じゃあ、僕は帰るね!バイバイ」
「はい、また明日」
何も考えずに、ただ会話をしたのはいつぶりでしょうか。普通の女の子みたいですね。
「あ、あと、暗くなる前に帰った方がいいよ」
「女の子なんだから」
「・・はい、そうします」
私を女の子扱いしてくれたのは、初めての出来事で、少し呆気にとられてしまいました。しかし、じんわりと胸が温かいのは何でしょうか。
「あれ?今日も勉強」
「はい、ラークさんは今日もお叱りを受けていたのですか?」
なんだかんだで、居残りして勉強して、たまにラークさんと会う時間が、この学園で気の抜ける時間になっていました。
「まあね。あと、ラークでいいよ。同い年なんだし」
「では、ラークくんで・・・」
「うーん、まいっか」
ラークくん。呼び捨てには出来ないけど、これは友達と言って良いのでしょうか。
「・・・では、私のことh・・」
「おーい、ラーク!早くしろー、今日はお前の部屋で泊まるんだからな」
勇気を持って、私もお願いしようとしたら、教室に入ってきたジグルドさんに遮られてしまいました。
「分かってるよ!今行く!ごめん、今何か言った?」
「いいえ、何も。早く行ってあげた方がいいのでは?」
ラークくんには友達がいるのですね。私もいつかそんな友達の1人になりたいと思うようになりました。
「あ、そう?それじゃあ、バイバイ」
「はい、さようなら」
教室の窓から、肩を組んで4人でふざけあっている彼らを眺めながら、私は、叶いそうに無い夢に想いを馳せた。
「好きなように生きて、好きなように遊んで、好きな人と結婚して、そんな普通の女の子に・・・」
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