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憧れ

お久しぶりです。前に投稿したのに間違えて削除しちゃいました。ごめんなさい。

もう一度上げ直します。

「ううっ・・・ひくっ・・お父さん、お母さん・・・」


辺りは既に薄暗くなり、空には月が浮かんでいた。

いつから泣いていたのだろうか。声は既に枯れており、6歳のラークはの体中に擦り傷があり、血を滲ませ、木にもたれていた。


遊びで山の中に入り、迷子になり、転びながらも必死に山の中を歩き回り、帰ろうとしたが、一向に叶わず、その小さな胸の中には、寂しさと恐怖でいっぱいいっぱいになっていた。


ガサガサ

「ひっ・・」


草むらが揺れ、ラークは身体を強張らせながら、ゆっくりと振り返った。


ピチャ・・・ピチャ・・・


目の前には大きな熊が、よだれを垂らしながらこちらを見つめていた。


「っ・・・」


全身に力が入り、声を出すことも出来ずに、ただただ尻餅をつき震えていた。


「グオォォォ!!」


熊が立ち上がり、叫ぶと、その巨腕を振り上げ、一気に振り下ろした。


恐怖で瞼ひとつ動かすことの出来ないラークは、ゆっくりと流れる時の中で、ただただそれを見ていることしか出来なかった。


「グルォォォォオオオオオオ!!!」


だからこそ、見えた。・・・突如現れたドラゴンがその熊を何倍もの巨体で襲いかかるという光景を。


「・・・ルーくん?」


ラークはその名を口にした。いつも兄のように遊んでいてくれていた、父が経営している牧場で飼育している竜の名を。


しかし、普段からは想像できないその激しさに戸惑っていた。


「グュオオオオ」


熊を仕留めたそのドラゴンは上空へ羽ばたくと、月に照らされ、輝いていた。


「・・ク・・ラー・・・ラーク!」


少し遅れて、父が声とともに姿を現した。父はラークの姿を見つけるとガバッと抱きしめ、涙を流し始めた。


しかし、ラークは月夜に浮かぶドラゴンの姿が頭から離れなかった。


「お父さん・・僕ね・・ルーくんみたいなカッコイイドラゴンを育てたい・・」




ドラゴン。その知性と力を併せ持つ生き物は、ときに移動手段として、ときにペットとして、ときに武力として。既に人間達の生活基盤の一部を担うほど、身近な生き物になっていた。


王国立リューデリア学園。将来、王国のために戦う竜騎士、その騎竜の世話や管理をする人材を育成するこの学園にも新しい春が訪れていた。


「今日から2年生か、楽しみだなー」


(ドラゴンのお世話に、甘酸っぱい青春。1年生の時は出来なかったけど、2年生は心機一転、思いっきり学園生活を楽しむぞ!!)


ラークは通い慣れた学園までの坂道を、胸に期待をこめて歩いていた。


「よ!ラーク!」


「ん?なんだ、ジグルドか」

後ろから声を掛けてきたのは、1年のときから同じクラスのジグルドだった。


(コイツのせいで僕の学園生活1年目はむさ苦しく終わったんだよなぁ)


「いつものバカ(づら)が3割増しでバカになってるぞ」

ジグルドはいたって真面目な顔で言い放った。


「バカはどっちだよ、学年末テストは0点で追試だっただろ?」

僕は去年度の最後のテストを思い出しジグルドを笑った。


「俺はテストを受けてないだけだ。お前は本気で受けて追試だろうが」

「言い訳は見苦しいよ、0点は0点だから」

呆れたようなジグルドに、ラークは優しくさとすように勝ち誇った。


「なら、やってみるか?テスト勝負」

ジグルドがニヤリと笑ってラークを見た。


「ははは、面白いね。ジョークの才能あるよ」

ラークは目を泳がせながら、乾いた笑いで誤魔化そうとした。


「話変わるけど、そういえば、クラスどうなってるんだろうね」

そして、とっさに話題を変えるため、新学年の初めの一大イベントを話題に出した。


「『話変わるけど選手権』なら最下位だな。勝負から逃げてるのバレバレだぞ」

ジグルドは明らかに目をそらしているラークに、よくも煽れたもんだなと追い打ちを掛けた。


「ま、俺たちはどーせ最下位、Fクラスだろうな」

ジグルドは手を後頭部で組みながら、答えた。


「あれ?僕たち飼育科は全部で5つ、A・B・C・D・Eじゃなかったっけ?」

ラークは自分の記憶を遡り、学校制度について思い出そうとしていた。


「うちの学園は騎竜科と飼育科で別れてるだろう?騎竜科の方が全体的に偏差値が高いからな、騎竜科のBクラスが飼育科のAクラスってな感じで、1クラス分ずれるんだ」

ジグルドはめんどくさそうに説明をした。


「なるほど、だから飼育科のEクラスは全体でみればFクラス相当ということか」


「そういうことだ、ラークにしては理解が早いな」

ふむふむとラークが頷くと、ジグルドはニヤリと笑った。


「バカにしすぎだろ!」


その後も言い合いが続き、坂を登り切るのにいつもより時間がかかる二人であった。



「なんか、朝から疲れたな」

坂を上り終え、やっとの思いで校門をくぐった2人は、すこし息が上がっていた。


「授業中に寝れば良いよ」

「そうだな」

ラークが気だるそうに呟くと、ジグルドもそれに同意した。



読んでいただきありがとうございます。

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