にゅるにゅるり奇譚

本日も「穴」なり

　にゅる。にゅるにゅるっ。穴があったら入りたい。人を呪わば穴二つ。虎穴に入らずんば虎児を得ず。世界にはたくさんの穴がある。

　ホールインワンする白いゴルフボールが鮮やかなグリーンの上に小気味よい音を放つとき、トンネルを貨物列車が猛スピードでくぐり抜けて纏った雪を散らすとき、学校の蛇口を半時計回りにして水道管が唸るとき、キミたちは勘違いをしている。

　にゅる。にゅるり。壁に耳あり、障子に目あり。馬の耳に念仏。目から鱗。世界にはたくさんの目や耳や口がある。

　耳をすませ、目を凝らし、吟味する。それだけで穴に隠された声が心にすうっと染みてくる。

　にゅるるるん。

　ほら、今日も産まれたよ。今から、会いに行くよ。