98、レオナルド・スチュアート side 唯一
アリシアが眠っている間、私はアリシアから離れられず付きっきりになっていた。エマも申し訳ないと付いていたが、エマのせいではないし、夜になったので下がってもらった。
何時ごろだろうか……アリの頭を撫でていると、アリがゆっくりと目を開けた。
「アリ、大丈夫?」
目を見ながら言うと、アリはゆっくりと私の方を向き頷いた。
「アリ、今は私とアリしかここにいない。何があったのか私にも話せない?」
アリシアはすごく困った顔をして、そして涙をポロッと落とした。すると堰を切ったようにポロポロ涙がこぼれだしたが、アリシアは唇を引き結び体が小さく震えていた。
「アリ、我慢しなくて大丈夫だよ」
私はアリシアに優しく言いながら、横になっていたアリシアを抱き寄せ、自分の膝に乗せてから覆うように抱きしめた。
アリははじめ静かに泣いていたがだんだん声をあげて泣くようになり、腕は私に必死にしがみついていた。
どれくらい経っただろうか。アリの声が再び静かになったころ、アリが呟いた。
「怖かった……」
「うん……」
アリを抱きしめたまま返事をする。
「学園で、階段……落ちそうになって……夢では押されて落ちて……でも、私が悪いって……怪我で動けないっの…ヒクッ……に……ヒクッ、押さえられ、て……首……はねられ……ふぇーん」
「うん、アリ……よく話してくれたね。ありがとう」
アリは混乱しながらも、少しずつ話そうとはしてくれた。恐らくは学園で階段から落ちそうになった経験が要因となり、前世での出来事を夢で見たのだろう。
だが内容は悲惨だ。首をはねられた? 階段から突き落とされた方が悪い??
確か以前エドワード王子は『マリアンナを殺そうとしたことにされ処刑された』と言っていた。ということは落とそうとして自分で落ちたことにされ、それが元で処刑された……ってことか。
その夢を先日見たから、この状態になったのか……。なんてことだ。
「アリ、この部屋は私しかいない、アリと二人だけだ。全部吐き出しても咎めるものはいないし、私が付いている」
アリは泣きながら頷いた。
かわいそうに……。一人で耐えていたのか……。
しばらくしてアリは落ち着き、でも私から離れることなく、時折泣きそうになりながらも胸のうちを話してくれた。
王子にもマリアンナにも殺されようとしていた。そして処刑された。
純真なアリシアには重すぎる内容だ。
「アリ、これだけは理解してほしい。今のエドワード王子はアリの味方だ。絶対に害をなさない」
「うん、理解、してる……」
アリは少しずつ更に話そうとしてくれた。前世でいくら話しても信じてもらえず、聞いてもらえなかったことから、声を出そうとしても喉につっかえるものがあり話せなくなり、ネックレスをしようとすると斬首を思いだしてしまい辛くなり、逆に私に引っ付いているのは唯一安心するからだと。
「それなら気がすむまで、いくらでも引っ付いていよう」
「……ありがとう。お兄様大好き」
照れたような顔で答えるアリシアを私は強く抱きしめた。アリシアが話してくれたことに感謝しながら。
二人で長い時間話していたようで、窓からは夜が明けはじめて辺りがほんのりと明るくなってきたのが感じられた。
「アリ、私が一緒にいるからもう少し寝よう」
私はアリをそのまま抱っこし、ベッドにゆっくり下ろしてから隣に座った。アリは少し不安な顔を見せたが、私が隣に座って手を握ると安心したように眠りについた。
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