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97、レオナルド・スチュアート side 悔恨

 

「アリ、ご飯食べられそう?」


 昨晩発熱したばかりだから無理だろうか。アリは目覚めてから相変わらず私に引っ付いたままで顔があまり見えず感情が読めない。


 食堂に連れてきてはみたものの、食べやすそうなスープも果物も口にせず、唯一果物をしぼったジュースだけは飲んでくれた。


 やはりダメか。


 私はアリを膝に乗せたまま自分の分を手早く食べ、早々に引き上げた。

 部屋に戻りベッドに寝かせようとするも離れるのを嫌がったため、ソファーで膝に乗せる。


「アリ、熱が下がってよかったね」


 アリは私の肩に額をつけ微かに頷くも、そのあとは眠ってしまったようだ。私も昨夜はあまり寝ていなかったため、侍女たちを下がらせてアリとそのまま仮眠を取ることにした。



 ◇



 目が覚めると私は片腕だけゆっくりと伸びをしたら、頭がスッキリしてきた。アリはまだ眠っているようだが私にぎゅっと引っ付いたままだ。

 そういえば、アリが私に引っ付き出してからうなされた様子を見ていない。昨日の発熱のときも服を離さなかったから、結局私はアリの隣に座っていた。だからなのだろうか。


 私はアリシアを両手で優しく抱きしめ、アリシアの平穏を強く願った。


 コンコンッ


「どうぞ」


「シンです。失礼します。レオナルド様、マーク先生がいらっしゃいましたがいかがなさいますか?」


「お連れして」


「承知しました」


 しばらくすると先生がきて、寝たままのアリシアの額を触ったり、首を触ったり、背中から心臓音を聞いたりしているようだった。先生の手を目で追っていて気づいたが、アリシアは御守りがわりとしてどんなときも身に着けていたネックレスをしていなかった。あぁ、昨日感じた違和感はこれだ。


「うん、熱は下がったようだね」


「先生、アリが私に引っ付くのは、私に引っ付いていると悪夢を見ないからかもしれません」


「根拠は?」


「一度もうなされていない……ぐらいなのですが」


「それなら、しばらくレオナルド様はがんばらないとね」


 マーク先生は私が子どもに見えるのか、私の頭を撫でた。年齢差からすると孫だから仕方がないといえば仕方がない。


「食事を取り、しっかり寝て、そして体を動かせるようになったら少しは軽減すると思う。今はアリシア様は回復中だと思って付き合ってあげて。しばらくは無理せずゆっくりとね。

 あと、これは栄養剤。食べられないときに飲ませてね」


 先生は栄養剤をシンに渡し、もう一度私の頭を撫で、そしてアリシアの頭を撫でてから帰っていった。


 嵐が去ったように静になり思わず笑ってしまう。

 そうか。お兄様はまだまだがんばらないといけないか。


 シンが私を見て少し驚いた顔をしてから微笑んだ。


「なんだか機嫌がいいですね」


「まだ私はアリシアの役に立つことができるみたいだからね」


 健気ですねえって言ったのは聞こえない振りをした。


 その後は私は本を読みながら過ごした。本来なら執務をするところだが、こちらに来た理由が理由なだけに、全部を父上に押し付けてきた。父上は優秀なので難なくこなせるはず。

 三冊目の本に入ろうかというときにアリが起きた。時間を確認すると昼を少し回っていた。


「アリ、この姿勢はきつくない? 大丈夫? 昼食の時間だけど食べられそうかな?」


 アリはまだ完全には目が覚めてないのかボーッとしていたが、頷いたので食堂に連れてきた。朝はジュースしか飲まなかったアリも、昼はいくらか入るようでスープや卵料理など少ないながらも食べていた。

 食べてくれてよかった……。


 午後は散歩に行こうと誘うと嬉しそうに笑ったので私は少し油断していたのかもしれない。着替えると言うのでエマに任せて部屋を出てしばらく待っていたら、慌てた侍女に呼ばれることとなった。


「アリシア様が……」


 アリがどうしたというのだろう? 急いで駆けつけると、アリは嘔吐したあと意識を失っていた。窒息をしてはいけないので口の中を確認し呼吸が確認できたので、嘔吐物を拭きベッドに寝かせた。


「何があった?」


「ワンピースに着替え……そのあといつも着けてらっしゃるネックレスをお付けしたら……突然嘔吐されて、その後意識を失われました……。ネックレスが原因でしょうか?」


 エマは真っ青な顔で答えた。


「私にもわからん」


 だがネックレスはきっかけではある。原因はわからないが。

 アリは起きたら話してくれるだろうか……。いや、話してもらわないことには。


 昨日違和感を覚えたときに聞いていれば……悔やんでも仕方ないが後悔ばかりが大きい。



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