96、レオナルド・スチュアート side 苦杯
『三日後にそちらに向かう』
うーん三日後かあ。
領地にある屋敷は広く、私はアリシアとは別のところで湯あみをしながら考えていた。
今アリシアにエドワード王子の話をしていいものだろうか。正直なところ、今のアリシアは私に依存している。何がそうさせているのかわからないが、これを見たエドワード王子がどう思うかもまた心配だ。
しばらく考えていると執事のシンが呼びにきた。
「お嬢様がレオナルド様をお呼びです」
「わかった。すぐに行く」
私は髪を拭きながら部屋に戻ると、アリシアが青白い顔でベッドに横になっていた。
「アリシア、どうした?」
アリシアは虚ろな顔をしたまま返事をせず、私を認識しないまま目を瞑って寝入ってしまった。
「エマ、アリはどうしたんだ?」
「はい、それが湯あみ中にフラフラになりだしましたので、慌てて体を拭き夜着を着させていただきました。私が運ぶのは無理でしたのでシンさんにお願いしました」
「湯が熱かったとか?」
私はアリシアの額や首、脇の下あたりを確認しながら話した。
「いえ、温度はいつもと変わりません」
「わかった。あとは私が見るよ。エマ、すまないが飲み水と濡れタオルを用意してくれ」
「承知しました」
エマが部屋を出たあと、私はシンに医師を手配するように言い、私はベッドサイドに座った。
「無理をさせ過ぎたか……」
しばらくアリシアの頭を撫でているとエマが戻ってきたのでタオルを額に置き、医師が来るのを待った。
◇
シンが医師を連れてきた。
「おや、レオナルド様お久しぶりですね」
「マーク先生! マーク先生お久しぶりです。お元気でしたか?」
「ははっ。まだまだ現役ですよ」
先生はウィンクしながらにっこりと笑った。
「ではとりあえず、アリシア様のここ数日の健康状態を聞かせてください」
マーク先生は私が十歳のときまで、王都の屋敷でうちの専属医師として働いていた先生で、若い者を育てたいと領地に移り住み、今も若い者への教育の方をしていると思っていた。
長い時間、私が先生の聞き取りに答えていると、ちょうどアリが目を覚ましたので体を起こして水を飲ませた。すると、アリは私の服をつかんで私の方に倒れこみ、意識を失った。
「おっと……」
私はアリシアをベッドに寝かせ先生を見ると、先生はとても難しい顔をしていてた。
「先生、どうされましたか?」
「うん、僕は専門外だから詳しくは分からないけれど、体がというよりは心が疲弊してるようにみえるよ。しばらく休養はできるのかな?こちらへの滞在はどれくらい?」
「十日間ほどです。学園を休んでこちらに来ています」
「うーん、王都で専門家に診てもらうほうがいいとは思うが、こちらにいる間は出来る限りのことはするよ。
とりあえずは少し発熱しているようだし、熱が上がったらこの解熱剤飲ませてね。夜は熱が上がりやすいから注意して。
それとこまめに水分は取らせてね。私はまた明日くるから」
「はい。ありがとうございます」
先生の予想通り、アリシアは夜に高熱が出てしまい薬を飲ませようとしても嫌がったため、かなり苦労して飲ませた。
朝になるとアリシアの熱は下がり、昨日よりもずいぶん顔色がよくなったようにみえる。
「アリ、おはよう」
私はアリに声をかけると、私を見てうんうんと頷く。体調がだいぶ楽になったからか、表情が穏やかだ。
「アリシア、今日は無理せず部屋ですごそうね」
うんうんと頷くアリシア。
?
なんだろう。
何か違和感がある……。
が、分からないまま、私はアリシアを朝食に誘った。
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