95、エドワード王子 side 経過
早く来すぎたか……。
いつも早めに来るが、今朝はさらに早く来たため、ほとんどの生徒が登校前だった。
もちろん、タキレスとサイテスもまだ来ていない。
護衛をつけて教室に向かうとマリアンナ・ ブラウニングを監視しているというバート・アシュビーがいた。
「殿下おはようございます」
「おはよう。朝からどうした?」
「レオナルド様より殿下が暇にしているから打ち合わせに行くように言われまして」
「くっ。まあいい。昨日はありがとう。今日もよろしく頼むよ」
「報告ですが、昨日のうちに新入生歓迎会の話はしました。本人はあまり迷ってないようですよ」
「そうか。それにしても妹さんはすごいな」
「私の一族は一通りのことができて当たり前なのですごくはないですよ」
「当日までラドニーをつけるが、くれぐれも気を付けるように伝えておいてくれ」
「そこにおりますゆえ、聞こえているかと」
振り向くとアリシアがいた。いや、アリシアのそっくりさんがいた。
いつの間に……。
「今日もよろしく頼むよ」
「承知しました」
「ところであなたの名前は?」
「私はリリーシュ・アシュビーと申します。よろしくお願いいたします」
リリーシュはアリシアがあまりしないキリッとした表情で挨拶をした。
◇
アリシアのそっくりさん改めリリーシュと共に午前の授業を受けるが、一通りのことができて当たり前の意味がわかった。一通り以上のことができるということだ。
バートも同じであるなら、本来はAクラスだったものを、監視のためにDクラスに行ったのだろう。
彼らでこれなら、レオナルドも恐らくは……。
僕の努力はまだまだ足りないなあ。
回りのすごい人に感化されてか、授業は驚くほど集中した。
昼休憩になり、昨日と同じようにリリーシュとラドニーが先に食堂に行く。その方が絡まれやすいのでは?と話し合いで決まったからだ。
「くれぐれも気を付けるように」
「承知しました」
リリーシュが教室を出てすぐにタキレスとサイテスが訪問してきた。
「やはり彼女は本物に見えるな」
「そうか?」
「あの技術はすごいですよ!」
確かに彼女はすごいと思うのだが、どうしてもアリシアではないという感情が出てしまい、なんとなくタキレスたちのように絶賛はできないでいた。
「さて、そろそろ行こう」
教室で軽いものをつまんで時間が経つのを待ち、近衛の一人がリリーシュが絡まれているのを報告にきたと同時にそちらに向かった。
「よく釣られるものだな」
タキレスが呆れるように言う。
食堂に行くと昨日と同じようにリリーシュに絡んでいたが、取り巻きの顔ぶれが一人減ったくらいでやってることは変わらないようだ。
「どうして何もしゃべらないのですか? マリアンナに何をしたか分かってるのですか?」
「もういいわ。私がきっと悪いのよ」
「ああ、マリアンナかわいそうに……」
ふぅ。一体何をしたことになってるのやら。
リリーシュは昨日と同じように口をつぐんでいる。ラドニーはやめなさいと声を掛けてはいるがマリアンナ・ブラウニングたちの声は妙に大きい。
「またお前たちか。アリシアに手を出すなら僕はゆるさないよ」
マリアンナ・ブラウニングたちを睨みながらリリーシュの腰を抱き立たせると、リリーシュはアリシアそっくりに、ホッとして泣きそうな顔を浮かべた。僕は「大丈夫だよ」と優しく声をかけ、リリーシュに笑いかけると回りがざわざわしだした。
「この件は職員会議で報告する」
ラドニーが静かに告げるとマリアンナたちは「殿下は騙されてる」だの「先生は高位貴族を贔屓している」だの言い出した。
「アリシア、授業が始まるから行こう」
僕は丸々それらを無視し、リリーシュの腰を抱いて歩き出すと、最後まで「殿下は騙されてます。目を覚まして!」と叫ぶマリアンナに心底うんざりしていた。
サイテスと近衛騎士たちががついてこないように伝え壁になっていたが、きっと僕と一緒でうんざりしていることだろう。
相手の感情を高ぶらせるためにしていることとはいえ、自分の気分も悪い。
あぁ、早くアリシアで癒されたい。
アリシアをぎゅっとしてキスしたい。
あと三日。
新入生歓迎会が終わったらアリシアに会いに行くぞ。
誤字報告ありがとうございました。
読んでいただきありがとうございます。
ブックマークや高評価★、感想など頂けるとうれしいです。
励みにしますのでぜひよろしくお願いします(*^^*)




