94、エドワード王子 side 油断
城に戻ると父上に報告しに執務室へと行く。ちょうど母上と休憩中だったようなので、他のものを下がらせてもらい今回のこと、やろうとしていることを説明し、報告した。
「それだと相手に選択権があるね。どうして?」
「以前父上に冤罪はダメだと言われましたので。相手が自分で選択して実行した結果が相手に見あったものだと思ってます」
「結果が謹慎程度のものだとしても?」
「そうであればとるに足らない相手だったというだけのことです」
父上は足を組み直してしばらく目を閉じた。その後ゆっくりと目を開いた。
「エドワードは強いね。でもアリシアちゃんは? それで大丈夫?」
「うっ……」
そこが一番悩むところであり、できたら相手に重いものを選んでほしいと思ってしまう矛盾もある。
「そのときは城を臨時の学園にします」
「言うねえ。ま、いいだろう」
母上は渋かった顔がぱぁぁああと明るくなり、
「ねぇ、そしたらアリシアちゃんと毎日会えるわね。うふふ」
母上……。
「それはともかく、ランには伝えてあるの?」
「アリのご家族にはレオナルドが伝えることになってます」
「わかった。つい先日まで子どもだと思っていたけれど、みんなあっという間に大きくなるなあ」
「まあ、それではおじい様みたいな言い方よ」
母上の言葉に目を見開いた父上は少し考えて
「それなら、エドワードに子どもが生まれたら王位を譲って二人で旅行にでも行こう」
「それも楽しそうね」
また始まった……。
キスをしだす前に退室しよう。
「では僕はこれで執務に戻ります」
「あぁ、エドワード、抜かるなよ」
「……はい」
僕は執務室にこもり、必死に仕事をした。その後は騎士団の方に行き鍛練中の騎士に混ざって訓練をし、体をへとへとにしてから自室に戻った。
アリシア……。
アリのそっくりさんに会ってますます本物に会いたくてたまらなくなり、なかなか眠れない夜を過ごすこととなった。
朝になり早めにスチュワート家に行くと、珍しくアリの父上が出迎えて応接室に通された。
「殿下おはようございます」
「おはようございます。アリはどうですか?」
「そのことで……大変言いにくいのですが……」
公爵の顔が歪み、また記憶に問題でも?と息を飲む。
「昨日突然目覚めて、今朝領地に向けて出発しました」
?
「は? 領地?」
「お知らせするのが遅くなり申し訳ありません。急なことでしたので」
え?
「どう…ゆ、こと……?」
「実は目覚めたには目覚めたのですが、少々問題がありまして、気分転換もかねて領地に行かせました」
「問題とは?」
「……とても言いにくいのですが、アリシアは心を閉ざしています。反応はあまりなく、食事もままならず、なによりレオナルドから離れません」
「心を……それで回復は?」
「今のところはなんとも。ですので療養もかねて行かせました。そしてこちらはレオナルドからです」
公爵から一通の手紙を渡された。中を確認すると
『アリシアは任された。打ち合わせ通り頑張ってください』
ん? これだけ? 思わず裏まで確認してしまった。
「アリシアは任された?」
「ああ、昨日殿下から『アリを頼む』と言われたと」
!
言った。学園に行く前に確かに言った……。
レオナルドめ!
「十日間ほど行かせます。どうかその間はそっとしていてください。レオナルドもいますから」
「三日だ」
「え?」
「三日経ったら私はアリシアのところに行く」
「……承知しました」
そう告げると僕はレオナルド宛に手紙を書き、その後すぐに馬車に戻って学園に向かった。
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