88、エドワード王子 side 悲憤
僕はあの日あの時のことを悔いていた。
どうして間違ったのだろう。
あの時、ラドニー先生がアリシアをつれてきたときにはすでに僕は失敗していた。
僕が狙いだとしてもアリシアと離れてはいけなかったのだ。そしてその隙をつかれた。
「本館の階段を上ろうとしたら例の令嬢が追いかけてきて、二階に着く直前アリシア様の肩をつかみ引き寄せたため、アリシア様が階段から落ちそうになりました。申し訳ありません」
ラドニーからの報告で喉の奥がヒュッとなった。
「いや、今無事にもどってきたということは、ラドニーがアリシアを助けてくれたのだろう。ありがとう」
アリのことを抱き締めながら僕はこう言うしかなかった。アリの体は無事だとわかるが、心の傷は深いようにみてとれた。案の定体は硬直したまま話しかけても反応がない。
昼休憩になりレオナルドが来たので事情を説明しアリシアを預けた。その後慌てたように教室に来たタキレスとサイテスに生徒たちの様子を聞き、「女生徒に肩をつかまれ階段を落ちそうになったアリシアを、ラドニー先生が受け止め救った」という事実をAクラスに流すように二人に伝えた。案の定、事実と違う内容が伝えられてたようだった。
ラドニーには再度詳しく様子を聞き、マリアンナ・ブラウニングの行為に対して俺が怒りをあらわにしていることをAクラスの担任に伝えるように言った。普段使わない俺という言葉にラドニーは顔色を変えた。これでマリアンナ・ブラウニングへの動きがあるだろう。もしなにもしなければ、僕が直接処分をする。アリシアにした行為はけして許さない。
そして早急に事実を広めなければならない。マリアンナ・ブラウニングをこれ以上アリに接触させてはいけない。
タキレスたちが戻ってから十分ほどして私がAクラスに行くと、久しぶりにAクラスに顔を出したというのにそんなことはものともせず、クラスのものたちからアリシアを心配する声が上がり、僕はみんなに聞こえるように返事をした。
「みんな、ありがとう。アリはラドニー先生が救ってくれて無事だったが、今は階段から足が浮き落ちそうになったことでショックを受けている。しばらくはそっとしておいてほしい。みんなの暖かい声はアリシアに必ず伝える。ありがとう。
それと事実と異なる話が出回りつつあるようだが、それについては僕は心を痛めている。みんなも惑わされぬようにしてほしい」
「殿下……」
誰かが気遣った声で言った。するとクラスのみんなが口々にお見舞いを言い、ラドニーを称えていた。
「タキレス、ちょっと来てほしい」
「承知しました」
タキレスを連れて三階の教室に戻った。
「昼休憩にすまない。僕はアリを連れて帰る。だが、このあとどうなったのかを後で教えてほしい」
「城の方でいいか?」
「あぁ。すまない」
「かまわない。Aクラスには正しく広まった。ってことは他のクラスにも広まるだろう。あとやっておくことは?」
「くれぐれも相手の生徒を攻撃しないように言い含めてくれ。こちらに……アリに跳ね返っても困るからね」
「わかった。じゃ、またあとで」
タキレスが教室を去ったので、僕はアリシアの方に歩み寄った。
「エドワード王子、今日はもう帰りましょう。アリシアを休ませたいです」
「レオナルド……とりあえず今できることはしてきた。そろそろ昼休憩が終わる。授業時間が始まったら帰るとしよう。準備をしてきてくれ」
「承知しました」
僕はアリシアを抱きしめアリシアに囁いた。
「アリ、離れてごめん。これからは何があっても離れない。アリ、愛している」
アリからは反応がなかった……。
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