8、一心
なぜ、こんなことになってるのかしら?
なぜ、私はエドワード王子の腕の中にいるのかしら?
数時間前……
お父様経由での婚約の解消はどうやら失敗に終わったようだわ。というよりもお父様は私が婚約を続けたいと思ってらっしゃるようにみえるわ。
こうなったら私が直接エドワード王子に伝えるしかないわね。
問題はどう伝えるか。
過去を知ってから、エドワード王子を見ると動悸が走るし、意識を保てないのはかなりの問題だわ。まずそこを改善しないと話すらできない。話ができないと解消も切り出せない。
まずはエドワード王子を見ることから始めなくては。実物をじっと見るわけにはいかないわね……。エマにエドワード王子の絵姿を用意してもらおうかしら。絵姿だったら大丈夫だと思うわ。
「エマ、ちょっと用意してほしいものがあるの」
「何でしょう?」
「エドワード王子の絵姿がほしいのだけど、あるかしら?」
「街で売られてるものであればございますよ。お持ちしますね」
しばらくするとエマは二十センチ四方の絵姿を持ってきてくれた。
「ありがとう」
お礼を言うと、さっそくエドワード王子の顔を見る。あら? こんなお顔だったかしら? 笑ってらっしゃるけれど、エドワード王子はもっと柔らかく笑っておいでだったような……。うーん……。
絵姿を見ながら思案しているとエマから笑顔で声を掛けられた。
「熱心にご覧になられてますね」
「エドワード王子のお顔になれようかと思って」
「どうしてですか?」
「エドワード王子のお顔を見ると心臓がドキドキしてお話できなくなるから……」
「まあ、そうでしたか。それでしたら、他の絵姿も探してきましょうか?」
「お願いするわ」
「では、ちょっと失礼致しますね」
エマはそういうと、部屋を出ていった。
私はそのあとも絵姿を見てはこの辺りはこうで、こっちはこんな感じでと絵姿と私がイメージするエドワード王子の顔を比べていた。
ノックがなったのに対し、適当に返事をしつつ、また絵姿に見入っていた。
しばらく経ってふと顔を上げると、目の前に本物のエドワード王子がいた。思わず二度見してしまった。
「きゃっ!」
絵姿を見ていたことで気づかなかったことを悔いつつ椅子から降りて背を向け、手で顔をパッと隠し下を向いた。
「アリ、やっと気がついてくれたね」
「い、いつこちらに?」
「だいぶ前にエマに案内されて来たんだけど、アリは熱心に僕の絵姿を見てて話しかけても反応がなかったんだよ。だから気がつくのを待ってたんだ」
思わずエドワード王子のお顔を見るとさっきまで想像していた柔らかい笑顔を見せていた。
あら? 絵姿のおかげかしら? 気を失うほどではなくなったような……。
でも心の中にあるエドワード王子への恐怖がなくなったわけではない。あ、油断したら涙が出そう。
そのとき、ふわっとエドワード王子が覆い被さってきた。
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