78、リビー・ロバーツ side 恩師
この学園の教師になって十年。王立学園の教師になれば王族と懇意にできるかもと思い、十年間必死でがんばってきた。目下の目標は王族を教え子にすることである。
私はリビー・ロバーツ。
ロバーツ子爵家に生まれたが、三女だった私は比較的好きにさせてもらっていた。ロバーツ家は長男である弟が爵位を継ぎ、両親は領地の方を経営している。そのため私は職員寮に住み、一日の多くを学園で過ごしている。
二十年ほど教師をしている回りの先生方らは、陛下や王弟殿下の恩師となった方も多い。私もいつかそうなりたいと思い、去年やっとAクラスの歴史を受け持つことができ、今年入学する王子殿下を教え子に持つことができるかもと楽しみにしていた。
だが蓋を開けてみれば、城から来たらしいごついおじさんが歴史の担当をかっさらっていってしまった。
なぜ?
私はこんなに真面目に頑張っているのに。なぜ新入りが担当に?弟に聞けば分かるかもしれないが、もう何年も話していない。
この件について、学園長へ聞こうにも副学園長や主事から止められ、警備のためという分かるような分からないような返答しかなかった。さらに学園長もいつの間にか王弟殿下に代わっていて知ったのは入学式の前日だった。
同僚からは王族の都合だろうから仕方ないよと慰められ、Aクラスの担当になった先生方は王子殿下については貝のように口を閉ざしていた。
羨ましい。
私は王族ファンである。私が生徒の時は王族が誰もおらず淋しい思いをした。だからこそ教師として関わりたかったのだ。それなのに、私はDクラスの担任になり、校舎さえもが違う。基本的に校舎が違うとほとんど会うことはない。
愚痴を言っても仕方がないので、図書室で本でも読もう。この学園の図書室はとても充実していて、王族に関しての歴史書から大衆向けの本まで網羅してある。きっと司書の誰かに王族大好き人間がいると思う。
図書室はだいたい静かなのに、その日は話し声が聞こえた。声が大きくなったら注意しようと思っていたが、今のところ小声なので静観する。
「あなたはどんな本が好きなの?」
「私は馬に乗ってみたくて……だからよく馬の本を読んでるわ。一度草原を駆けてみたいのよ」
確かあの子は私のクラスの平民から男爵令嬢になった子と、男爵令嬢でありながらBクラスに入った子だったわね。
話をこっそり聞いていると、『令嬢の恋』を思い出すような境遇に驚いた。
もしかして、王子殿下とこの子が出会っていたらこの子は王子殿下と恋仲になるのかしら? 『令嬢の恋』の本の内容も知らないようだし……。
それにしてはよく似ている。
もしもこの子が王子殿下と本のように劇的に出会って恋仲になって結婚したら、私は未来の王族を教えたことにならないかしら? しかも担任なのだから恩師とも言えるかもしれない。あー、でもちょっと待って。この子、貴族としてのマナーが身に付いていないのは明らかだから、最低限だけでも身に付けさせなければならない……。
それに王子には仲までは知らないが婚約者がいたはず。
個人的にこの子たちと話がしたいけれど、この件で話しかける前にもう少し様子を見ることにしようかしら……。
とりあえずマナーの個人レッスンは今後も必要でしょうから、明日呼び出ししておきましょう。
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