74、表出
目が覚めると体がぬくぬくで起きたくない衝動にかられる。さらに大好きなエドワード様の金色の瞳に見つめられると、うれしくなりずっとこのままでいたくなった。
「おはよう、アリ」
「おはよう、ございます」
照れ臭く思いながらもお互いににっこり笑う。睡眠不足も解消され、すっきりとした朝だった。
「幸せだなあ」
そう言いながら、エドワード様は私をきゅっと抱き締める。私も答えるように抱き返すと私の体の中で幸せな気持ちが広がっていった。
「ふふっ。私の婚約者がエドでよかったわ」
聞かせるつもりのない言葉を小さな声でつぶやくと、エドワード様の体が一瞬固くなって、すぐにぎゅーっと抱き締められたので、きっと聞こえてしまったのだろう。
しばらく抱き合ったのち、朝の支度をして朝食はこの部屋に用意してもらった。
「アリがいるとよく眠れてスッキリするよ」
食事をしながらエドワード様と話していると、私も同じ事を思っていたので驚いた。
「私もエドがいるとよく眠れます」
「ふふっ。それはよかった。一緒に寝るとお互いに安心できるからだろうね」
パンやハムなどを口に入れられお腹いっぱいになり食事を終えた。
今日は学園がお休みなので、一日こちらで過ごしてから公爵家に帰る予定だ。エドワード様は朝から執務があり、私はエドワード様についている近衛騎士の一人で、今日の担当のイアン様に縄抜けを習っていた。
「昨日、エドワード様に見てもらい一度抜けられただけで、その後の練習はしていません」
「ではとりあえずやってみましょう」
昨日と同様後ろ手に縛られて、エドワード様のお手本を思い浮かべながら、さらに昨日いくつか注意された点に気を付けつつ縄抜けをした。
しばらく時間は掛かったもののうまく抜けられ、イアン様に驚かれた。
「アリシア様、素晴らしいです。女性でこの時間でできる方はそういないでしょう」
「でもエドワード様はさらさらっと抜けられて、とても早かったのです」
「殿下はお小さい頃から訓練を受けられていたので、比べるものではないですよ。男女の力の差もありますしね。アリシア様は上手にできています。もう少し練習したら、時間も短縮できるでしょう」
「ではあと何回か練習にお付き合いくださいね」
にっこり笑いながらお願いすると、イアン様の顔が赤くなり、すかさずエドワード様から低い声が聞こえた。
「イーアーン……」
「殿下、この笑顔は不可抗力です」
?
私は後ろ手を縛られては縄抜けをするを何度か練習し、最後は足首にも結んでからの縄抜けも練習した。
「イアン様、今日はありがとうございました」
「いいえ、いつでもお呼びください。では警護に戻ります」
イアン様は礼をして退室し、私はソファーに座ろうとソファーの方に振り向こうとした寸前に横抱きにされて驚いた。
「エド……?」
エドワード様は私をソファーに連れていき、エドワード様の膝の上に対面で座らされた。これは恥ずかしい!恥ずかしいです。顔が一気に赤くなり、言葉がなかなかでない。
「アリの笑顔が他の男に向くのが嫌だ」
「イアン様は近衛ですよ?」
「それでも嫌なものは嫌なんだ」
あぁ、嫉妬してくださってるのだろうか、なんだかすごく嬉しい。私はエドワード様の首に腕を絡ませ、軽くキスをした。
「私がこういうことをするのも、私が大好きでやまないのも、エドだけです。愛してます」
もう一度キスをすると、腰を支えるように添えるだけだったエドワード様の腕に力が入り、ぎゅっと抱き締められ、今度はエドワード様からキスをされた。
エドワード様のキスは気持ちよく、いつも頭がふわふわする。ひとしきりキスをしたあとはしばらく抱き合い、鼓動がだんだん落ち着いてきたころエドワード様が呟いた。
「アリ、ありがとう。嬉しい」
私はエドワード様に抱きついたまま頷いた。
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