65、安定
昼休憩が終わる時間、タキレス様、お兄様、ラドニー先生は授業のため教室にもどっていった。その際、ラドニー先生が声を掛けて下さったようで、騎士から男爵令嬢は教室に戻ったと連絡があり、私たちはその隙に帰ることにした。
「エドワード様すみませんでした」
馬車の中で私はエドワード様に謝った。
「どうしたの?」
「きっといろいろ手配してくださってたのかなと思って……」
「アリ、そういうときはありがとうって言うんだよ。それにたいしたことはしてないよ」
「エドワード様、ありがとう、ございます」
エドワード様が私の頭を引き寄せキスをした。はじめは軽く唇に当てるだけだったのがだんだんと深くなり、キスが終わる頃には心にあったモヤモヤが晴れていた。
「エドワード様は私の精神安定剤みたい……」
少しボーッとする頭で私は小さな声で呟いた。
「僕にとってアリはいつも癒しだよ。愛してる」
エドワード様は「愛してる」と何度も言いながら何度も軽いキスをする。そのため顔が火照ってどうしようもなかった。火照りが少し引いた頃、私はエドワード様に聞いてみた。
「エドワード様は……どうして私を好きになったのですか?」
「一目惚れ……してから、そのあとはアリがすごく努力してるところとか、笑顔とか……いろいろあるけれど、一番は僕の心にアリしかいれたくないって思ったからかな」
「心に……?」
「うん、僕はアリさえそばにいてくれたら他は何もいらない。アリがいてくれたらそれだけでいいんだ……」
「エドワード様……」
「それよりも、いつになったら愛称で読んでくれるのかな?」
「えっ、あっ……」
エドワード様はニコニコ笑いながら「楽しみにしているよ」と言い、もう一度深い口づけをした。
エドワード様のためにも練習して言えるようにならなくては。
しばらくすると馬車が止まり、エドワード様の侍従が扉を開けると王城だった。
「あれ? うちではないのですか?」
「お昼をまだ食べてないからね。一緒に食べよう」
エドワード様は私をエスコートして、エドワード様の自室まで連れてくると、侍女に昼食を用意するように指示し、私をソファーに座らせた。エドワード様は隣に座り、私の髪を一束すくうとキスをした。
「久しぶりの学園はどうだった?」
「少し緊張しましたが、エドワード様やお兄様がついていてくださったり、配慮してくださっていたので大丈夫でした」
「大丈夫というわりに顔色が悪かったよ。きっと僕の気づかない何かがあったんだろうね。ごめんね」
「いえ、ほんとに疲れてしまっただけですので……ご心配おかけしました」
配膳が終わり、私はエドワード様に口にお肉などを放り込まれつつ昼食を食べ終えた。
エドワード様は執務をするとのことで私は帰ろうとしたところ、お父様がのちほど迎えに来てくださると連絡があり、エドワード様のそばで過ごすことにした。
しばらくして、執務を終えたエドワード様が、ソファーで本を読んでいた私の隣に座られたのを見て、私は本をテーブルに置いた。
「僕はアリがこの部屋を出てから熟睡できなくてね、どんなに体を疲れさせて寝ても夜中に目が覚めてしまってなかなか眠れないんだ」
エドワード様は話ながら私の頭を撫でる。
確かにエドワード様の目元にはくまができている。
「……私もなかなか眠れなくて……。でも不思議なんです、エドワード様に頭をさわってもらうと……今もですが、頭がふわふわして眠く…な、る」
私はエドワード様と話ながら眠っていたようで、目が覚めると辺りが真っ暗だった。
あれ? 今何時? ここはどこ? いつの間にか夜着を着ていた。
すると体をぎゅっと抱き締められ、私はエドワード様を見た。
「まだもう少し明るくなるまで寝てて……それともお腹へった? 何か食べる?」
「お腹は大丈夫……です」
エドワード様の腕に安心したのか私は再び眠りについた。
朝になり久しぶりに熟睡できた私はすっきりと目が覚めると、エドワード様が金色の目で私を見ていた。
「おはよう」
「おはようございます」
「よく眠れた?」
「はい。久しぶりに熟睡してました」
起きたばかりの顔をじっと見られていたことに少し恥ずかしく思い、私はエドワード様の胸に顔を埋めた。
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