60、私情
「あ、エドワード様お帰りなさい」
「ただいま……。レオナルド、学園はどうしたの?」
「おはようございます。学園は午後からにしました。なんせ大事な妹の一大事ですからね」
二人とも不自然に笑っていて、ちょっと怖い。
「そうか……」
とエドワード様が言うと、エドワード様は私に手を差し出した。
「そろそろリハビリの時間だよ。医務室に行こう」
「ありがとうございます」
私はエドワード様の手を取り立ち上がると、お兄様も同時に立ち上がった。
「レオナルドも行くの?」
「先ほど見学をしたいと言ったら、アリシアが快諾してくれたので」
お兄様はにっこりと笑う。
「それよりもエドワード王子は執務はいいのですか?」
「リハビリにはすべて同席しているし、もちろん執務も問題ないよ」
エドワード様もにっこりと笑う。なんだかとても穏やかなようで、穏やかではないけれど、リハビリの時間に遅れるわけにはいかないので医務室に向かう。
リハビリはリハビリ専門の先生が行う。筋力も体力も少しずつついてはきたが、長時間は歩けないし、まだダンスを行うほどには至っていない。入念にからだ全体をほぐし、ゆっくりと階段の乗り降りを何度かし、しばらく王族の住居区を散歩をする。だいたい一時間ほどで終わるが、終わったときにはいつもぐったりとしてしまうほどに疲れている。
リハビリを始めたころ、座るくらいしかできなかったことに比べたらだいぶ体も元に戻ったが、初めてリハビリを受けたときにエドワード様に横抱きにされて部屋まで移動するしかできなかった。
そしてそれがそのまま今も続いていて、リハビリが終わるとぐったりした私はいつものようにエドワード様に横抱きにされて部屋に戻ろうとした……ところで、お兄様から待ったが掛かった。
「アリシア、いつも抱かれて戻っているの?」
疲れきっている私は頷いて返事をする。
「疲れすぎて自力で戻れません……」
「未婚の女性が……と言いたいところだけど、今日は私も学園にもう戻らなくてはなりません。エドワード王子、アリシアをくれぐれも大事に運んでください」
「もちろん」
「アリシア、さっきした約束、待ってるからね」
お兄様は私の頭を撫でると、部屋に一緒に戻らずそのまま馬車の待機所の方に向かったようだ。
私たちは部屋に戻ると、エドワード様は私をゆっくりとベッドにおろす。私の頬を触りながらキスをして、そのまま顔が向かい合うようにして横たわる私の隣に腰をおろした。
「アリ、レオナルドに戻ってくるように言われた?」
エドワード様は微笑みながらも悲しそうな顔を見せた。
「はい。記憶が戻ったのだからいつまでもいてはいけないと……」
「そうか……僕はいつまでも一緒にいたいけどね……でもレオナルドの言いたいことも理解はできる……納得はしたくないけどね」
「エドワード様……」
エドワード様は私の顔のすぐそばに手をつき、私の額、両頬に軽くキスをすると最後に唇にキスをした。何度か軽いキスをしたあと、舌が唇をこじ開け口の中に侵入する。舌が絡み合い私は思わず声が出る。
「ん……ぁ……」
エドワード様はいつもより長めのキスをしたあと、昼食までゆっくりおやすみと私の頭を撫でた。
私は言われるがまま目を閉じると、頭を撫でられている気持ちよさにいつの間にか眠っていた。
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