58、願望
次に目が覚めたとき、エドワード様はベッドのそばで椅子に座ったままベッドに倒れこむように眠っていた。
「エドワード、さま……」
すぐそばにあるエドワード様の髪を触ると、私の大好きな惹かれてやまないエドワード様の金色の目が私をとらえて微笑んだ。
「アリ……」
「エドワード、さま……ちゃんと寝て、食べてますか?」
エドワード様は微笑みながら
「心配ないよ。大丈夫」
「顔色が悪いです。ベッドで寝てください」
エドワード様は目を見開いたあと、私のベッドに潜り込んできた。いや、そういう意味ではなかったのだけど……。
それでもエドワード様の腕の中は安心できて、私はもう一度、今度はエドワード様と一緒に眠りについた。
次に目が覚めたとき、私の熱はすっかり下がり、エドワード様も先刻よりもすっきりとした顔をされていた。
「殿下は食事もなかなか取れず、アリシア様のお側でずっと眠らずの状態だったので、一度陛下が殿下を気絶させて眠らせたんですよ。アリシア様は殿下に愛されてますね」
エドワード様が席をはずしたときに、侍女から内緒ですよと教えてもらった。
「やっとアリが戻ってきた」
少し話しただけで、いち早く記憶が戻ったことに気がついたエドワード様はにこやかに微笑みながら言う。
私は一人で座るくらいしかできないぐらいまで体力が落ち、しばらくリハビリをすることとなった。エドワード様は執務の合間をぬって甲斐甲斐しく世話をしてくださり、日に日に食欲も出て来て、一週間もすると半量程度食べられるようになった。
その間、陛下や王妃様、私の家族が代わる代わるお見舞いにきては、食べ物を置いていくので、食べきれないものは侍女たちのおやつになった。
「エドワード様、一つお聞きしたいことがあります」
「なんだい?」
「私の記憶の治療後、エドワード様のご様子がおかしかったのはなぜですか?」
「……。あれは……自分が情けなくてね……。愛するアリ一人を守っていけてないことに……アリに会わせる顔がなくて」
「そんな風に思わせてしまっていたのですね」
「あのときはアリの記憶はもう戻せないかもしれない、アリを傷つけてしまったかもしれないと思っていたからね」
「そんなことは、ないです」
エドワード様は私のためにこの数週間必死だった。記憶のない令嬢など捨て置くこともできるのに。
「でも執務室に離れたことは間違えだった。アリが倒れたときいてから目が覚めるまで生きた心地がしなかった……」
エドワード様の声色が、とても後悔していることを現していて、私の胸も痛くなった。心配させてしまったことを申し訳なく思う。
「だから、アリは正式に僕のものにしたい……」
「え?」
エドワード様は真剣な顔で、私の前で片膝をついて私の手を取った。
「アリシア、僕らは十六才で成人する。学生の身分でいうのもなんだが、成人したら結婚してほしい! 僕にアリシアを一生守らせてほしい」
「!」
え?なんで?
なんでプロポーズ?話が繋がってないような、そうでないような……?
私が固まっていると、エドワード様は不安そうな顔になった。
「アリ、僕との結婚はイヤかな?」
「あ、いえ、驚いてしまって……」
「アリ、返事は?」
「……はい。うれしいです」
私の目から知らないうちに涙が溢れていた。エドワード様は私の手の甲にキスをして「ありがとう。愛してる」と。
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