56、バート・アシュビー side 観察
僕はバート・アシュビー。男爵家の息子でもあり、スチュアート家の影の仕事もしている。
僕の家は代々スチュアート家に仕えてきた。スチュアート家直系の命令は絶対でそのための訓練はアシュビー家のものは皆、男女関係なく欠かさずやっている。
今回の命令はランドール様より、マリアンナ・ブラウニング嬢と同じクラスに入り見張る。レオナルド様より、動きがあれば連絡する……共にマリアンナ・ブラウニング嬢に関するものだ。
直前までアリシア様の護衛のためにAクラスに入る予定だったが、急遽ブラウニング嬢がDクラスに入ることになったためランドール様が王弟殿下に手配を頼まれたとのことだった。
アリシア様の護衛につくことをとても楽しみにしていた僕は、直前で変更されたことに多少なりとも不満があった。天国と地獄ほどの差があるのが一番の理由だ。
アリシア様を幼少のころから見てきたが、ものすごく美しくお育ちになられた。身も心もだ。それに対して、ブラウニング嬢はどうかというと、がさつの一言につきる。それはそれはひどい。マナーなど学ぶ気は全くないらしく、授業で習っても身に付くはずもなく、平民に近いものとは話せても、きちんとした家の者からは遠巻きにしかされていない。
僕自身、教育は徹底的にされてはいるが、Dクラスに入った以上は馴染むようにはしている。しているが……あそこまで落とすことはできない。自分は潔癖ではなかったはずだが、嫌悪感しかわかないのはなぜだろう。
アリシア様の前世では殿下はこのブラウニング嬢を選んだとのことだが、殿下の目は節穴か?節穴だったのか?大事なことだから二回……はいいとして、アリシア様、これは心配いらないです。高位貴族には嫌悪感しかわきません。
この三週間、隣の席で見てきて分かったのは、いかにして殿下と知り合うかを考えているようで、見ていて執着がすごい。
元々不思議ちゃんなのか、先日は階段の上から下に向けて手を前に突き出すポーズを何度もしたり、噴水の前でも手を前に突き出すポーズを何度もしていた。
あれは何なのだろうか。
何かに取りつかれているようにぶつぶつ言っているのも怖い。
ところがこの二、三日、ブラウニング嬢に取り巻きがいる。いづれも男爵令嬢でなぜかブラウニング嬢を心酔しているようにも見える。少し注意が必要かもしれない。
さてと、レオナルド様に報告に行くとしよう。
「バート、帰るのか? このあと町に行かないか?」
「俺は用事があるからいいよ。またなっ」
このクラスで出来た友人に答える。
慣れない『俺』言葉。
ついうっかり僕といってしまうこともあったが、レオナルド様の前では逆に『俺』が出ないように気を付けなければ。
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