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54、エドワード王子 side 停滞

 今日のアリの治療は全く進まなかったらしい。アリが予定通り眠り、深層の中にいるアリも出てきたらしいが、『話したくない』と一言言った後に沈黙したとのことだった。どうアプローチするか医師も悩んでいるようだった。


 僕はアリが目覚め、話をして自室を出てから侍女にお茶とお菓子を用意するように伝えた。


 鍛練場に行くと昨日のうちにタキレスに宛てて手紙を出していたからか、やはりというか、予想通りタキレスとサイテスが待ち構えていた。


「二人とも久しぶりだね」


「エドワード久しぶり」


「殿下、お久しぶりです」


 僕たちは丁寧に体を暖めてから鍛練を始めた。小一時間ほど真剣にやったあと、剣術の稽古も小一時間ほど行った。


 汗を流した後二人をサロンに連れていき、向かい合ってソファーに座る。


「エドワード、少し痩せたな」


 幼馴染みのタキレスは気遣いがすごい。普段は物静かだが、話すときは相手のことを思いやって話す。そもそも僕が少し痩せたことに気がついたのはタキレスだけだ。


「そうかな。かなり忙しかったからかもしれないね」


「何がそんなに忙しかった?」


「そうだなあ。いろいろあったからね。それよりも学園はどうだ?」


「あの例の女が毎日、A組に来てはうろうろしているよ。誰も相手にしないのが不満らしく、『エディを隠さないで』とか言ってきたが欠席を確認したら自分の教室に戻ってるみたいだ」


「そうか。行動が斜め上だね。しかもエディって言われて気持ち悪いな。くれぐれも気をつけて」


「それでいつ学園に戻ってくる?」


「公表するつもりがないから親にも他言無用なのだけど、アリシアの体調がよくなくてね……。僕は王家の都合で休んでいることになっているけれど、執務などやらなければならないもの以外の時間はアリシアをみている状態だ。アリの欠席理由も体調不良でというのもあまり良くないから、今週ぐらいから王家の都合に切り替わるはずだ」


「そんなに悪いのか?」


「いや、一時期は熱も下がらない時があったが、今はわりといい状態を保っている。ただ、外に出られるほどにはなってなくてね……本人もそれが分かってるから、部屋で静かにしているよ」


「そうだったのか。エドワードも大変だったな」


「忙しくはあるけれど大変ではなかったよ」


「そうか……。学園のことは気にするな。何か聞かれてもこちらで対処する。それと、あの女に動きがあれば報告する」


「ありがとう。二人とも男爵令嬢には気をつけて」


 二人とはサロンで分かれ、二人は学園に、僕は自室へと急いだ。

 部屋に入るとアリを待たせ過ぎたのかテーブルで腕に頭を乗せて眠っているようだった。時間は昼をまわっている。

 僕はアリに近づき、髪を一房取って口づけた。


「アリ……」


 アリはゆっくりと頭を上げ、僕を見る。


「お帰りなさい」


 起きたばかりだというのに、アリはにっこりと笑いながら言う。

 僕は予想通りのアリの様子に笑顔で返す。


「アリ、ただいま。ごはんを食べに行こう!」


 アリの腰に腕を回して食堂までエスコートをし、用意されたごはんを一緒に食べる。

 たまにアリの口に肉や野菜を放り込む。ムーとした顔をされるとよけいにかわいく思えて仕方がなかった。


 そんな生活を二週間ほど続けたところ、治療も六回目となる今日、僕は医師に呼び出された。


「殿下、治療時に同席されませんか?」


 治癒が進まない打開策として僕が選ばれたようだった。



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