52、サイテス・シドニー side 理想
私の名前はサイテス・シドニー。クレイグ・シドニー伯爵の長男であり、次期伯爵の予定である。父は現在、騎士団長でもある。
エドワード殿下と出会ったのは五歳の時。タキレス様と出会ったのも五歳の時であった。当時、父が近衛騎士の隊長をしていたこともあり、何かと城に連れられては剣術、鍛練をさせられた。
当時の私はバカだった。あまり練習をしなくても父のように強くなれると本気で信じていた。父の稽古を一度もみたことがなかったため、練習しなくても強くなれると思いこんでいた。そんなわけがないのに。
私がバカを発揮していたころ、殿下たちは着々と実力をつけていった。それにも関わらず、ある日、殿下やタキレス様に勝負を挑みこてんぱんにやられた。当時九才である。
それで目が覚めた私は、一に鍛練、二に鍛練、三四がなくて五も鍛練。
とにかく鍛えることばかりをしていた。
だが、殿下やタキレス様とは鍛練をしてきた時間が圧倒的に違う。なんて愚かなことをしてきたのだろうか。プライドばかり高くて実力が伴わないと陰で言われていることも知っている。
ある日殿下からの助言は「騎士道を習ったらどうかな?」
このとき十三歳である。
このころの殿下は何も欠点という欠点がおおよそ見えなかった。完璧な人に私には見えていた。殿下が努力して作り上げたものだということも知っている。その殿下の助言にありがたく従った。
騎士道を学ぶうちに机に座った勉強も必要であると思い、一日の大半を鍛練、勉強に当てた。そうした毎日を送っていると、父から縁談の話がきた。
「そろそろ婚約者を置いてもいいのではないかと思うぐらいには努力がみえるようになったからな」
そこで紹介されたのがエミリー・ジョセレイン伯爵令嬢であった。ジョセレイン伯爵と父は仲が良く、おそらくもっと前からこの話を計画していたのだろう。
「サイテス・シドニーです。よろしくお願いします」
「私はエミリー・ジョセレインと申します。よろしくお願いいたします」
「エミリーと呼んでもよろしいですか?」
「では私はサイテス様とお呼びしますね」
エミリーはオレンジ色の髪をふわふわとさせ、ふわりと笑う。とても暖かみのある笑顔で、エミリーを見ていると不思議と笑顔になってしまう。
それからというものエミリーとはこまめに会っていた。というのも殿下からそうアドバイスをされていたからである。エミリーは何度も会っているうちに、手芸が得意で刺繍の腕はすばらしいものがあることを知ったり、運動は苦手でほとんどやらないことを知ったりと、エミリーの得て不得手を知るのも楽しかった。
婚約者となったエミリーと過ごすのはとても楽しく癒された。もちろん、鍛練、勉強もおろそかにはしなかった。
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