43、同好
朝目が覚めると、目の前にエドワード様の顔があり、私は目を見開いた。
あれ? 昨日は……?
思い出した。エドワード様に抱き締められて寝たんだった。
あれ? パーティションを移動させた意味は……?
「アリ、おはよう。……夢みたいだ」
私が動いたからか、エドワード様を起こしてしまったようだ。エドワード様は優しく微笑んで私を抱き締め直した。
「エドワード様、おはようございます」
いつまでも見ていたいくらい大好きな顔が目の前にあり、急に恥ずかしくなるも目が離せなかった。
「アリ、どうしたの?」
ふわりと微笑むエドワード様につい言ってしまった。
「どうしよう。好きすぎる……」
「……」
あ、嫌だったかしら……。
急にすごく不安になったけれど、エドワード様は更にぎゅっと力をいれて私を抱き締めた。
「い、いだい……」
「あ、ごめん。嬉しすぎて加減ができなかった。大丈夫?」
「大丈夫れす……」
ちょっと涙目になりながら答える。
「ふふっ、アリから好きって言われるのは2回目だなあ。すごくレアだから感情を抑えられなかった。ごめんね」
嫌だったわけではなくてよかった。それと同時に記憶をなくす前の私は一度しか言わなかったことに驚いた。
今日から三日に一回、治療が行われる予定だったが、昨日したばかりだったこともあり、今日の治療はお休みになった。
エドワード様は学校がなくてもすでに執務を行っていたり、家庭教師との勉強があったり、剣術の稽古があったりと忙しい。
一方、私は王妃教育は終わっているらしく、学力の検査を見ても問題がなかったことから、しばらくゆっくりと過ごすように言われている。
エドワード様はそのほとんどの作業を自室でやり、常に私と一緒に過ごした。
「エドワード様、私は邪魔ではないですか?」
「とんでもない! むしろやる気が出るよ! それよりも、アリはつまらないでしょ?」
「そんなことないですよ」
むしろ、エドワード様の真剣な表情にドキドキし、せっかく借りた本の内容も頭に入ってこなかった。
そんな私を知ってか知らずか、たまにふふっと笑いながらエドワード様は私にキスをする。頬だったり、おでこだったり、唇だったり。その度に私は分かりやすく赤面していた。
学園が終わる時間になると、エドワード様は私をつれてサロンに移動した。侍女にお兄様が来たらここに通すように伝えていたので、お兄様を待っているらしい。二人で窓際に行き外の景色を見ていると
「あぁ、せっかく二人の世界だったのに……」
「え?」
声が小さくて聞こえにくかったけれど聞こえてしまった。
「アリー、やっぱりレオナルドに会わないとダメ?」
「ふふっ」
エドワード様が拗ねてる。こういうエドワード様は想像してなかった。
「アリはねぇ、昔レオナルドと婚約したかったと言ったことがあるんだよ」
「そうなんですか?」
「僕がどれだけ悲しかったか分かる?」
じとっとした目で見られるが、記憶がないときのものだ。もちろん覚えていない。小さく首を振る。
「僕は仲の良い君らにいつも嫉妬してるんだよ」
そういうと、エドワード様は私を自分の方に寄せてゆっくりキスをした。指で口をこじ開け、そのまま舌を滑らせてくる。それだけで私の膝は力が入らなくなり、崩れ落ちそうになる私の腕をエドワード様はエドワード様の首に回させて、自身の腕は私の腰に回した。私は必死でしがみつき、口の中を動く舌を感じとっていた。
「はあ、はあ……」
ようやく唇が離されたときには、私は肩で息をし、足に力が入らなかった。
エドワード様は私をソファーに座らせ、すぐ隣に座りぎゅっと抱き締める。肩でしていた息も次第におさまり、私はエドワード様の顔を見る。
笑顔の中に不安を感じとり、私はエドワード様に腕を回した。
「記憶をなくす前の私も、エドワード様のことが大好きだったと思いますよ」
「そうかな……」
「記憶があってもなくしても、どちらも私ですから。好みなんてそうそう変わりません」
って、私なんてことを言ってるのよっっ!恥ずかしくてエドワード様の胸に顔を埋めると「ありがとう」という声が聞こえた。
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