39、マリアンナ・ブラウニング side 序開
私はマリアンナ。
私の父はブラウニング男爵だというのは平民の母から聞いて知っていた。
「お父様は優しい人でね、おばあさまを大事になさってるのよ」
母の口癖はいつも父を庇うものだった。母の方こそ優しすぎると思う。
「少ないお金を渡しておけばいいと思われてるんじゃないの?」
生活はとても質素で、年頃の女子としてはおしゃれもしてみたかった。
が、実は母にはかなりのお金を渡されていたが、母の考えでないものとして生活していただけだった。
十二歳になり、平民の学校に通いだした。女子が少なかったがその分仲良くなり、よく集まっては恋愛の話をした。
ある日、友達の一人が『令嬢の恋』という本を学校に持ってきて回し読みすることになった。以前、平民の中でベストセラーになった本だ。そのころはまだ幼かったので読んだことがなかった。私の順番が来たとき、私は家でゆっくり読むことにした。
内容はいたってシンプルで、平民だった女の子が貴族になり、王子や側近たちと恋愛をし、最終的に王妃になるというサクセスストーリーで、私はこの本に自分を当てはめてしまったのだ。
私は男爵令嬢になるはずだった。おばあさまのせいで平民だが、この話はきっと私のことだわ。
そう思っていると、母から来年男爵と結婚することを告げられた。
私はチャンスだと思った。
私はさっそく王家について図書館で調べた。エドワード王子殿下は私と同い年だわ。ますます本と一緒だとエドワード王子の絵姿を見るたびににやにやする。
エドワードということはエディね。
私はこの方に愛されるようになるのね! なんて素敵!
私の卒業に合わせて母は結婚した。母の結婚後貴族の学園に通うことも決まり、あとは入学式を待つばかり。私はこの日、エディと出会うのよ。そしていつの日か王妃になるんだから。
◇
「あ"ーーーっ!!」
寝坊した! なんでこんな日に寝坊するのよ! 誰か起こしてよ! って、水差しが置いてあるから起こしても私が起きなかったのか。
「あ"ーーーっもう!!」
私は急いで身支度をし、食堂に行った。
「お父様、お母様おはようございます」
「おはよう」
「遅れるのでこのまま失礼します」
「マリアンナ、明日はちゃんと起きてね。いってらっしゃい」
「いって参ります」
私はバッグを持って家から飛び出した。お金があれば辻馬車に乗りたいところだが、巡回してる乗り合い馬車に乗り、学園の近くで降りた。
「もう入学式が終わる時間だわ……とりあえず行ってみよう。今日はなんとしても出会わないと!」
入学式の会場に着くと、騎士が入り口近くで立っていたが、特に止められることもなく扉を開けたけれど……これは……。
一斉に私に視線が集まったのを感じて
「遅くなりすみません!」
大声で叫んでしまったところで、さっきの騎士に捕まえられた。
「やだ、ちょっ、もう離して!」
中に入りたいのに、騎士が何人も来て私を拘束する。
「ちょっと、もう離してってば!」
控え室のような小さな部屋へ連れていかれ、私の入学許可書が確認できるまで拘束はとかれなかった。
「確認できたから拘束は解くが、このような行いは今後一切行わないように」
騎士にさんざん叱られた。
「あーぁ、入学式前にエディと出会うはずだったのに……」
そのあとは教室に向かうように言われDクラスに向かった。
「このクラス分けってどういう基準かなあ。エディはどのクラスなんだろう」
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