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37、赤面

 

 しばらくしてエドワード様が飲み物を片手に戻られた。


「アリ、喉乾いたでしょう?」


 そういって用意してくださったのは生のりんごジュースだった。私はベッドからテーブルに移り、グラスを受け取った。


「ありがとうございます。

 コク、コク、コク……。おいしい!」


 エドワード様は微笑みながら私をずっと見ていた。


「?」


 どうなさったのかしら? グラスをテーブルに置きながら首をかしげる。


「記憶がなくても、アリはアリだね。笑顔もしぐさもアリのままだ」


「そうなんですか? 自分ではよく分かりません。自分がどんな人だったのかも……分かりません」


 言いながら悲しくなってきた。早く思い出したいのに、頭痛がそれを阻む。私は何を思って記憶をなくしたのだろう。


 考えていると不意にふわっと抱き寄せられたかと思うと横からチュッとキスをされた。

 私はエドワード様の顔を見ると


「大丈夫だよ。僕がずっと側にいる」


 エドワード様の目をじっと見つめた。なんて優しい目をしてるのだろう……。でも優しく笑ってるのに目の奥に仄かに影があるように一瞬見えた。かんちがい?


「私はあなたに愛されるような人でしたか?」


「うん。僕はアリしか愛していない。アリだけを愛している」


 そう言われると、なんだか泣きたくなるくらいうれしい。

 するともう一度キスをされた。


「わた、し……き、す……」


 恥ずかしくて顔が真っ赤になっていくのが分かる。婚約者なのだから記憶をなくす前からキスは当たり前だったのかもしれないけれど、今の私にはドキドキが強い。恥ずかしい。


「アリ、逃げないで。アリは僕のただ一人の人なんだ」


「は……い……」


 うわーーん、恥ずかしい!


「でも、き、キスは恥ずかしいです」


 エドワード様をちらっと見るとエドワード様は私にニコッと微笑み


「大丈夫だよ。すぐになれるよ」


 もう一度キスをされた。


「!!」


 さらに私は顔を真っ赤にさせた。

 それからというもの、エドワード様はことあるごとにキスをするようになった。



 エドワード様は私をテーブルの椅子からソファーに連れていき、隣同士で座られた。


「アリ、今から一つずつアリの話をするね」


「はい。よろしくお願いします」


 エドワード様は私の手をとり、ゆっくりと話し始められた。


「アリ、馬車に乗る前、僕を見てどう思った?」


「お顔は知ってましたので、エドワード王子だわ! と驚きました」


「嫌だった?」


「いいえ、こういってはなんですが……、エドワード様はカッコいいので……ドキドキしました」


 私は顔が赤くなるのを感じながら伝えた。だって、エドワード王子は他の人と比べ物にならないほどの美形なんですもの。

 エドワード王子はすごく喜んだ顔をしつつ、やっぱり一瞬仄かに影が見えたような気がした。


「僕とアリは五歳のときに出会ったんだ。そのときはお互いが小さすぎて、好きも嫌いもなかった。それでも僕の父上とアリの父上が親友同士なのもあって婚約することになったんだよ」


「そんなに小さい頃から……」


「そう。そのときはアリとこんなことするなんて、夢にみたこともなかったけどね」


 エドワード様はそう言いながら、チュッとキスをした。


「え、エドワードさ、ま」


「うん?」


 私だけが赤くなってる……。恥ずかしい。エドワード様にはきっと普通のことなんだわ。うう……。


「うん。アリがかわいい」


 エドワード様の顔がほのかに赤くなってきた。

 そこ?赤くなるポイントはそこなの?


「それからアリと僕はお互いに勉強に励んだんだよ。アリは王妃教育をすごくがんばっていて、今ではもう終了してるぐらいに」


「あ、王妃教育といえば、先ほど王妃様がお部屋にいらっしゃいました」


「母上が?」


「はい。何か必要なものがあればエドワード様に言うようにって、おっしゃってあっという間に去っていかれました」


「あの人らしいなあ。たぶん、僕に何かされてないかとか聞いてたんじゃないの?」


「あ、はい……」


「やっぱり。アリの家のものもだけど、僕の家のものもアリをほんとに好きすぎる!」


 私は苦笑いをするしかなかった。ははっ。



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