3、失言
しばらくすると目が覚めた。ベッドから見る景色は自分の部屋でなんとなく首を触ってしまう。
私、どうしたのかしら?
ぼーっとして考えることを放棄してるとノックがし、エマが入ってきた。
「あ、お嬢様、お目覚めになられたのですね。まだ体調が悪かったようで気を失ったのですが覚えてますか?」
こくんと頷く。
ほんとは恐怖にたえられなかっただけなのだけど。
「エドワード王子がとてもご心配なされて看病するとおっしゃったのですが、お帰りいただきました」
目覚めたときにエドワード王子がいたら、また気を失ってたかもしれないわ。お帰りいただいたことを聞いてホッとした。
「お嬢様、しばらくは安静にしてましょうね」
こくんと頷くと目をつぶりスーっと寝入ったのを見届けたエマは毛布を肩まで掛け部屋を出た。
次の日、エマからはまだゆっくりするように言われ、おとなしく部屋で本を読むことにした。
『ランスーの冒険』
主人公のランスーが親を亡くし、泣くばかりの生活から抜け出すために冒険者になるというお話で、いろいろな冒険の話がありシリーズ化されている。私のお気に入りは三巻で海に行く話だ。
「いいなあー、私も海に行ってみたいわ」
この本を読むとまだ見ぬ世界に憧れをもって仕方なくなる。
「人魚というものは本当にいるのかしら?」
うっとりと考えているとノックの音がした。
「アリ、僕だよ」
お兄様の声だわ。
「どうぞ」
返事をするとすぐに2歳上の兄レオナルドが部屋に入ってきた。
お兄様は私と同じ銀髪で青い目をしている。妹からみてもとてもカッコいい凛とした顔をなさっている。
「アリ、大丈夫なの?」
ベッドサイドに座り、私の肩を抱き、頭を撫でながら話すお兄様。
「熱があるわけではないので大丈夫ですわ」
「僕はエドワード王子が何かしたのかと思ったよ」
「なにもないですよ」
「それならいいけど。アリ、しばらくはベッドから出たらダメだよ」
優しく微笑むお兄様に私は「はい」とふにゃりと笑って答えた。
お兄様は私の頬にキスをして部屋を出ていった。
お兄様は大概私に甘い。
お兄様はまだ婚約者がいらっしゃらず、私が王子と婚約の話が出たときに最後まで反対なさった。
妹の私から見てもお兄様はとてもかっこよく、性格も優しい。ご自分のことよりも人のことを優先し実行する。学業にも剣術にも励み、成績もすばらしい。まさに非の打ち所がない。
そういえば、過去のお兄様にも婚約者はいらっしゃらなかったような……。
「お兄様が婚約者だったらよかったのに……」
ついつい声に出てしまったのを聞かれてしまっていたらしい。
「え?」
読んでいただきありがとうございます。
ブックマークや評価★など頂けるとうれしいです。
励みにしますのでよろしくお願いします(*^^*)