28、初動
今朝もエドワード様のお迎えにより登校する。馬車に乗るとすぐに
「エドワード様、ネックレスをありがとうございました。月の飾りがとてもかわいかったです。さっそく付けてきました」
私は首の辺りを見せた。
「うん、似合っていてかわいいよ。青いネックレスはどうしたの?」
「これはお兄様からで、お母様が重ね付けするとかわいいからって……」
エドワード様が一瞬すごく嫌そうな顔をされたような気がしたけれど、見間違いだったかしら。いつもの笑顔を見てホッとする。
お兄様も私を見て微笑んでいるから見間違いだったみたい。
学園に着くと、サイテス様、タキレス様、エミリー様、アンジェリーナ様が馬車の待機所で待っており、私たち三人と合流した。
「おはようございます」
お互いに挨拶をしたあと校舎に向かうが、なんだかみなさん、やる気がみなぎっているような気がする。私も勉強を頑張らないと!
私たちはお兄様、アンジェリーナ様とわかれてAクラスの教室に入った。
昨日は入学式後のホームルームを急に休むことになったが、学園長がどのように伝えたのか分からないものの、クラスの中では特に浮くこともなかった。
「殿下、こちらです」
サイテス様が私たちを席まで案内してくださった。窓側の真ん中らへんで、エドワード様の前後にサイテス様とタキレス様が、エドワード様の左に私が、私の前でサイテス様の隣にエミリー様となっている。前世ではいつも席が離れていたので不思議な感じがする。
「何か不都合があれば今のうちにお願いします」
「大丈夫だよ。サイテス、ありがとう」
エドワード様の優しい笑顔を毎日のように見ているけれど、前世では私に向けられたのは無関心か憎悪で、微笑みを向けられるのはやはり不思議な感じがする。
そんな私を見て「大丈夫だよ」とエドワード様が頭を撫でてくださった。私は不安な顔をしていたのだろうか。
今日は学園の説明と簡単な校舎内の案内のみで学園は午前で終わった。本格的な授業は明日からになる。
教室までお兄様とアンジェリーナ様が来てくださり、みんなで馬車の待機所に向かうことになった。馬車の待機所は、身分により場所が決まっていて、エドワード様の馬車は校舎から一番近いところになっているが、高位貴族しか入れない場所となっていた。
歩いていると急に
「危ない!」
とタキレス様がアンジェリーナ様の腰をだき抱え、くるっと一回りした。
見ると女生徒が倒れ込むように膝をついていた。それを見てエドワード様は私を抱き抱え急いで馬車に乗り込み、さらにお兄様が乗り込むとすぐに馬車を出すように伝えた。
「これは……向こうからやってきたと言う感じかな?」
「とりあえずエドワード王子の待機所に入っていい理由は、あの女生徒にはなさそうでしたね」
「アンジェリーナ嬢も大丈夫そうだったし、報告は後程騎士からあるから心配しなくても大丈夫だよ」
「そうですね」
エドワード様とお兄様が話している間、私は知らないうちに体に力が入り、少し震えていたが、エドワード様の膝の上で隣に座ったお兄様に頭を撫でられると次第に落ち着いていった。
ん? 膝の上?
えっ! えっ!
私は慌てて降りようとすると、腰をがっちり捕まれていて動けなかった。
「え……エドワードさ、ま」
私は恥ずかしくて小さな声で言うと、
「私の方に来る?」
笑顔でお兄様に聞かれたけれど、そうじゃない……。
読んでいただきありがとうございます。
ブックマークや高評価★、感想など頂けるとうれしいです。
励みにしますのでぜひよろしくお願いします(*^^*)




