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20、エドワード王子side 不足

 

 アリの様子がおかしい。今までにこやかに紅茶を飲んでいたのに、急に震えだしたのだ。


「アリ、どうしたの? 大丈夫?」


 肩に手を置いた途端、アリの体は跳ね上がるような反応をしたときにしまった! と思ったが遅かった。

 アリは僕を見て、そのまま意識を失った。僕は慌ててアリを支え、僕のベッドに運んだ。なにがきっかけか分からないが、アリの中で僕のことが怖い……、怖いというより悲しいという表情……が読み取れた。

 アリの専属侍女にアリはイチゴが好きだと聞いてこれを用意した。それがよくなかったのだろうか……。


 この前の自殺未遂といい、前世の夢にかなり引っ張られているように思う。たぶん、僕の愛が足りてないんだ。アリに僕の愛がうまく伝わってないのかもしれない。

 どうやって愛せばいいのだろう……。


 それにしてもアリは食事をしているのだろうか。

 アリの身長は僕よりも二十センチは低い。おそらく百四十センチぐらい。みんな、こんなに軽いものだろうか。まずは食事に誘って一緒に食べるところから始めてもいいかもしれない。



 アリシアが気を失ってから三十分ほど経った。アリシアの父親である宰相のランドール・スチュアートがあと1時間もすれば迎えに来る。

 もう少し寝かせようかと思っていたら、アリシアが僕の枕に顔をすりすりさせ、ニコッと笑った。寝ているのに。


 僕の顔はおそらく面白いほど赤くなっている。なんだ、このかわいい生き物は! けしからんかわいいじゃないか!



「え、エドワード王子?」


 ひとりの世界に入っていると呼ばれたような気がして振り向くと、アリが起きて僕を見ていた。


 あ……。

 今の見られてた……かも……。


「あ、アリ、目が覚めたんだね。気分はどうかな?」


「大丈夫です。なんだかいい匂いがしてたのでリラックスできたみたいです。ご迷惑おかけしてすみませんでした」


「迷惑だなんて……。僕はアリのためなら何でもするよ。それにたいしてアリはすみませんだなんて思わなくていい」


「エドワード王子……」


「アリ……僕が怖い?」


 アリは俯きながら首を振る。


「今は怖いというより、エドワード王子から嫌われていたことを感じると前世の記憶を思い出して……、自分の感情がわからなくて……、体が勝手に震えだして……どうしたらいいのか分からない……」


「アリ……」


 アリをそっと抱き締めると、アリはびくっとしつつも、僕の方へと体を傾けてくれた。


「アリ……ゆっくりでいいよ。僕はアリのことが大好きだ。アリのことならなんだって知りたい。それと同じように、アリにも僕のことを知ってほしい。

 たくさん話して、僕のことを知って好きになってほしい」


 アリはゆっくりと頷いた。


「アリ、アリがどんなに僕を疑っても、僕はアリのことを諦めないからね。覚えておいて。僕はアリのことだけを愛しているよ」


 アリはうんうんと頷いて、僕の背中に腕を回してしがみついた。

 しばらくそのまま抱き合っていると、公爵の仕事が終わったようで、侍女が知らせに来た。


「アリ、僕のこともたくさん知ってもらいたいから、聞きたいこととか知りたいこと、明日お互いに話してみよう」


「はい……」


 公爵のいる父上の執務室にエスコートして連れていき、明日また会うことを約束してわかれた。


 僕は嫌われたと感じる何をしてしまったのだろう。

 僕たちに足りないのは愛よりも先に会話かもしれない。






第一章おわりです。

次話より第二章に入る予定です。



読んでいただきありがとうございます。

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