2、状況
私はスチュアート公爵が長女アリシア・スチュアート十三歳。
銀髪に青い目をしていて、見た目は美少女だと言われる。性格は周囲からは抜けていると言われるが、私は自分がしっかりものだと思っている。わがままも言わず、王妃教育ですら泣かずにがんばっている。先日も誉められたばかりだ。
三日前の休日、昼寝をしてたら今の人生が4回目をループ中だと知って、今は三日ぶりに目覚めた頭の中を整理しているところだ。
一回目は処刑され
二回目も処刑され
三回目は国外追放され、国外に行く途中で事故死
すべて私の婚約者、エドワード・グレイスリー第一王子によって処分されて起こったこと。
そして四回目が今!
こうなったらなんとしてもエドワード王子から逃げて生き延びたい。
新しいノートを膝の上に広げ思い出したことを書き出していく。
『一回目、処刑。エドワード王子が愛するマリアンナ・ブラウニング男爵令嬢を殺そうとしたとして処刑。
二回目、処刑。エドワード王子が愛するマリアンナ・ブラウニング男爵令嬢を殺そうとしたとして処刑。
三回目、国外追放で事故死。エドワード王子が愛するマリアンナ・ブラウニング男爵令嬢をいじめたとして国外追放。隣国に行く途中馬車が崖から落ちて事故死。』
うん。マリアンナ男爵令嬢は学園で出会うからまだ会ってないけれど、問題はエドワード王子!
私は婚約者になってる上にすでに王妃教育が始まっている。それどころか、もうすぐ終わる予定だ。このまま婚約してたらエドワード王子から逃げられないじゃない。
なんてことなの。悲惨すぎる。
どうにか婚約がなかったことにならないかしら?
ガックリ項垂れているところにノックの音がし、あわててノートをサイドテーブルの引き出しに隠した。
「どうぞ」
専属侍女のエマだった。
「お嬢様、エドワード王子がお見舞いにいらしてますが、お連れしてもかまいませんか?」
「えっ……あっ……。
こんな格好だし、会わないほうが……」
「病み上がりで目覚めたばかりですし大丈夫ですよ。それとも身支度なさいますか?」
エマは心配そうに聞いてきた。あの夢のあとエドワード王子とは会いたくなかったけれど、せっかく来てくださったのに婚約者として会わないわけにはいかないわね。
この機会に婚約解消を申し入れてみようかしら。
「分かったわ。羽織るものを着たらお会いします。お連れして」
「はい。お待ちくださいね」
エマはにっこり笑うと羽織を私に着させてから部屋を出た。
私は8人がけのテーブルにつき、エドワード王子がいらっしゃるのを待つことにした。
そうね。これはチャンスだわ。このまま婚約解消すれば処刑されるなんて未来はないもの。エドワード王子が嫌いなわけではないけれど……、むしろ初恋で大好きだったけれど……殺されたいかと聞かれたら殺されたくないわ。
エドワード王子とは婚約してから今までほとんど会話もしたことがないけれど、王妃教育の日にたまに見かける王子は剣に励んでいてとてもかっこよく、私の初恋の君だった。
でも会うのが怖い。今朝までエドワード王子に殺される夢を何度も見ていたのだから……。
なにこれ。手の震えが止まらなくなってきた。どうしよう。
再びノックの音がした。
「ど、うぞ」
「エドワード王子をお連れしました」
エマはエドワード王子を私の向かいの席に案内し、紅茶とお菓子をテーブルに置いて、ドアを少し開けて退室した。
「アリ、起きてて大丈夫なの?」
「ご、ご心配おかけして申し訳ありません」
ふ、震えが止まらない。怖い。
エドワード王子の顔が怖くて見られない。
「大丈夫?」
気がつくと私の隣のイスに座り直したエドワード王子が私の顔を覗きこんだ。
私は目を見開き、怖さで涙が出てきた。
「ご、ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」
「アリどうしたの? 大丈夫だよ」
エドワード王子はあわてて私の背中を擦ってくれるけれど、私はそのまま気を失った。
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