19、再会
エドワード王子の自室に行くと、国王夫妻はすでにお茶を飲んでおられた。
「父上、母上、勝手に部屋に入るのはルール違反ではないですか?」
「固いこと言わないの」
王妃様は悪びれもせずにこやかに答えた。
「陛下、王妃様、お久しぶりでございます。本日はお招き頂きありがとうございます」
私は丁寧に挨拶をした。
「アリシアちゃん、久しぶりね。今日の体調は大丈夫そうね」
王妃様はイスに座ることをすすめ、私とエドワード王子の分の紅茶を侍女に頼むと、自身の紅茶を優雅に一口飲んだ。
エドワード王子の部屋は初めて入ったが、部屋は広いがシンプルで無駄なものがなさそうな部屋であった。
「アリシアちゃん、少し痩せたんじゃない?」
「いえ、そうでもないと思います……」
「このケーキ絶品よ、たくさん食べてね」
「はい、ありがとうございます」
「今日はアリシアちゃんにどうしても伝えたいことがあって来てもらったのよ」
「……はい」
何を伝えられるのだろう。突然倒れたり、発熱したからやっぱり婚約の解消なのかしら?
ちらっとエドワード王子の顔を見ると、ニコッと微笑んで私を見ていた。
「アリシアちゃん、陛下とわたくしはアリシアちゃんのことは娘だと思っているわ。もちろん、あなたには本当のお父様、お母様がいらっしゃるわ。だから私たちは第二の父、母として頼ってね。
わたくしたちはいつだって、あなたの味方よ。
エドワードが浮気したら言ってね。ふふっ」
「あ"あ"ぁ"ーー!!」
今までにこやかにしていたエドワード王子から声にならない声がした。
「陛下、王妃様ありがとうございます。とてもうれしいです」
そのあとは他愛もない話をし、おいしいケーキを食べ、とても楽しい時間を過ごした。こんなに笑ったのも久しぶりかもしれない。
しばらくすると陛下と王妃様は執務に戻られる時間となった。
「アリシアちゃん、ゆっくりしていってね」
「今日はありがとうございました。とても楽しかったです」
じゃ、またねと退室していかれた。
「アリ、疲れたでしょ? 大丈夫?」
「大丈夫です」
「それなら少し外に出ようか」
エドワード王子はバルコニーの方へと促した。外に出ると庭園が見えた。
「うわぁ、キレイ」
「裏は庭園になってるんだ。次に来たときは庭園を散策しようね」
「はい。ありがとうございます」
二階のこの場所からでも花が咲き誇りのたくさんの種類があるのが見え、楽しみになってきた。
「くしゅっ」
はしたないと慌ててハンカチで押さえ、もう一度くしゃみが出そうになるのを我慢してると、ふわっと暖かくなった。振り向くと後ろからエドワード王子が私を抱き締めていた。
「ちょっと肌寒かったね。でもこうすると暖かいでしょ」
私の顔は分かりやすく反応し、心臓もドクドクなりだしうるさい。寒いどころの話じゃない。
「え……エドワード王子……』
「風邪を引く前に部屋に入ろう」
そう言うと、エドワード王子は私からパッと離れ、部屋の方へと促した。
エドワード王子の部屋に戻ると、先程まで出ていたお茶菓子などは片付けられ、二人分の紅茶が用意されていた。
「アリ、寒かったね。少し暖まろう」
紅茶はほどよい温度でさっきまで飲んでいたものとはまた別のものだった。香りが甘く
「この紅茶、イチゴですか?」
「そうだよ。こういうのもいいかと思って」
「とってもおいしいです。イチゴの紅茶、はじめてです」
初めて飲むイチゴフレーバーの紅茶は私好みで大好きな味だった。エドワード王子は、私の好物がイチゴだと知っていたのだろうか。
そういえば、前の人生ではエドワード王子の好物がミニトマトだったと記憶している。よく口にしているのを見かけた。
今世ではどうだろうか。今まで食事を一緒に取ったことがない。小さいころから婚約関係だったというのに、食事の一つさえしたことがないのだ。実はやはり嫌われていたのではないか……。
そう思うと、だんだんと前世での記憶に支配されガタガタと震えだした。
左手で右手首をつかみ、震えないように力をいれるがあまり意味がなく、私は目をぎゅっとつぶった。目をつぶったことで、自分の心臓が早鐘のようになっていることに気付く。
「アリ、どうしたの?大丈夫?」
肩に手をおかれた途端、体はびくっと反応し驚いた拍子に目を開けると目の前にエドワード王子の顔があり、感情が高ぶりすぎた私は久しぶりにそのまま意識を失った。
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