156、幸福
夫のエドワードが国王を退位して十数年の月日が経った。レオンが国王になってから国はますます発展し、安定していた。
「アリ、おはよう」
「エド、おはようございます」
目が覚めるとすぐにエドから言われる「おはよう」が好きだ。
そのあと、私の髪をすきながら何度もキスをされるのも好きだ。
「さ、湯あみをしよう」
朝の支度をするために必ず私を横抱きにして浴室に連れていくエド。
湯あみを一緒にするのが好きなエドに対して、どうしても恥ずかしい私。
湯あみが終わると一緒に朝食を取る。
膝の上で食べさせてもらうのも好き。
朝だけでもこんなに好きで溢れていて、私は毎日が幸せだった。
その生活がここ最近、うまく過ごせなくなってきた。
「アリ! アリ! 大丈夫かい?」
!!
「あぁ、エド……私は大丈夫。もう朝かしら……?」
さっきまで頭痛がひどかったが、今は頭がふわふわしている。
「いや、もう少しお眠り」
エドはそう言うと私の頬を撫で、優しいキスをしてくれた。私はゆっくりと目をつぶり言われた通りに眠る。エドの言葉は暗示のようにスーッと眠くなるのだ。
◇
しばらくして目が覚めると、エドの心配そうな顔が見える。
「エド、おはようございます」
できるだけにっこり笑って言うと、エドも微笑みながら言ってくれる。
「アリ、おはよう」
どうして不安そうな顔をしているの? 私は大丈夫よ?
「頭痛がなければ湯あみでもしようか?」
ニコッと笑って言うエドに小さく頷きながら微笑む。
◇
「エド……」
私は湯あみをしながらまた眠ってしまったようで、気がついたらベッドに横になっていた。
「エド、どこ?」
「アリシア様、今殿下をお呼びしますね」
侍女の一人が呼びに行ってくれるらしい。最近は何をしても眠くなる。体も疲れやすく、待っているこの時間が……。
「アリ……眠ってるようだが?」
「先ほど起きられたのですが……」
エドの声が遠くで聞こえる。
◇
次に起きたときには子どもたち、孫たちが部屋に来ていた。
「母上、お加減いかがですか?」
「レオン、おはよう。みんなどうしたの?」
「母上に会いにきたのですよ」
「ふふっ、こんなにたくさん珍しいわね」
「みんな母上を愛してますよ。もちろん私も」
「レオン、ありがとう。私もみんなを愛してるわ」
みんなを見回すと笑顔だが、どことなく寂しげだった。
「さあ、そろそろみんな戻るよ。母上が疲れてしまうからね」
レオンがそう言うと、「またね!」と言う子どもたちの声と共にぞろぞろと部屋を出ていき、エドとレオンだけが残った。
「レオンがみんなを集めたの?」
「父上に頼まれました」
「そう。二人ともありがとう。とてもうれしかったわ。またいつか会えたらいいわね」
「そうだね……」
エドが私にソッとキスをした。そのときエドの目から涙が落ち、私の頬を濡らした。
「いつでも会えるよ」
「そうね……。
人生いろいろあったけれど楽しかったわ。
エド、レオン……いいえ、レオナルドお兄様……ありがとう。愛してるわ。
また……会いましょうね……」
「「アリシアッ」」
うんうんと頷いたつもりだったけれど、私の記憶は残念ながらここで途切れた。
平均寿命に少しだけ届かなかったけれど、私はとても愛に溢れた生涯を送れたと思う。それもこれもエドワード様やレオナルドお兄様、みんなのおかげだと思ってる。
ありがとう。
エドワード side
アリシア……
アリシア、アリシア……
君のあの涙を見たときから、アリシアだけを見てきた。いつまでも愛しているよ、アリシア。
次、生まれ変わっても側にいたい
兄妹でもいい、家族としてもいいから側にいたい
アリシア……
レオン side
アリシア……ゆっくり休んで……
それにしても、私がレオナルドだといつ気づいたのだろう。
私もまだまだだなあ。
アリシア、次、生まれ変わっても側にいるよ
でもそろそろ兄妹や親子は勘弁……かなあ
アリシア……またね……
ある神の独り言……
うーん、どうするかのう。
二人から彼女を離したらわしのとこまで来て怒りそうだし……
次は立場を入れ換えるのもいいかも……ね。
156話までお付き合い頂きありがとうございました。
また、評価を入れてくださったり、ブックマークに加えてくださったり、コメントまで書いてくださったりとありがとうございました!
他のお話も読んで頂けるとうれしいです(*^^*)
ありがとうございました‼️
雪
追記
新連載はじめました。
『嫌われモブの私は隣国で行方不明になるらしい』
も、どうぞよろしくお願いいたします。
2021,10




