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147、関心

 

 私たちが日常に戻ってから二週間。クラスの方にも慣れ、気分的にやっと落ち着いて過ごせるようになってきた。バートはいつの間にかAクラスにも馴染んでいて、お父様が心配するような出来事も特になかった。私たちは一度は勉強した部分だったので、授業の方は特に難しくもなく、私は家では相変わらずお兄様の本を読んでいた。


「お茶を入れましたので一息つかれてはいかがですか?」


 エマが甘い花の香りがする紅茶とクッキーを持ってきてくれた。


「ありがとう。ちょうど飲みたいなあと思ってたところなの」


 私は栞を挟んでから本を机に置き、テーブルの方に移動した。


「うーん……おいしい!」


 少し甘めの紅茶が体に染み込み、疲れた脳を癒してくれた。


「お嬢様、お疲れですね」


「今読んでる本が私には少し? ううん、だいぶ難しくて……」


「お嬢様にも難しいだなんて、よほど難しい本なのですね」


「お兄様の本は難しいのが多くて、読むのに時間がかかるわ。でもね、昨日エドに聞いたら、この本はすでに読んでしまっていて特に難しいとも思ってないみたいで」


「まあ! 殿下もすごい方ですね」


「そうなのよ。ニコニコしながらさらっと内容を言うからびっくりしたわ」


 私はクッキーを口に入れた。ホロホロと崩れてほんのり甘くて大好きな味だ。


「おいしい!」


「あら、調理人に伝えておきますね」


「あ、そういえば今度アンジェリーナ様とエミリー様とで持ちよりでお菓子パーティーするの。これもその一つに入れてほしいわ」


「他のメニューはお決まりですか?」


「お昼休憩の時間にする予定だから、軽食みたいなのがあると食べやすいかしら? サンドイッチとかかな?」


「それではいろいろな種類のサンドイッチにしますか?」


「そうねえ。なんやかんや言って四人追加になりそうだから多目に用意してもらえるかな?」


「追加……ですか?」


「女子会だって言ってるんだけどね。ははっ」


「あぁ! では、多目にと伝えておきますね」


 エマは苦笑いしつつも引き受けてくれた。


「よろしくね」


 私は休憩を終え、また机について本を読み始めた。この本は分類としては経済になるけれども、内容は金融、財政、貿易や領地経営などと多岐にわたる。王妃教育ではこの辺りの内容は浅く広くしかやってないので、しっかり理解しようとするには私には難しい本ではあった。この本をお兄様もエドも理解して読んでしまっていることを思うと、改めてすごいなあと思う。


『アリシア、僕が説明しようか?』


 昨日エドは本について教えてくれると言ってくれたけれども、エドはとにかく忙しい。城に戻ってからは執務も増えたようで、学園には来ているけれど、授業中に呼び出されることもあり、途中抜けることもあったりする。

 忙しいエドに迷惑はかけられないと断ったけれど、私はちょっぴり後悔していた。


「もう無理ー!」


 本の半分を過ぎた頃、私は本を机に置いた。回りにはこの本を読むために開いた辞書や本がたくさんあった。


「この本を読むにはまだ勉強が必要だわ。もう少し優しい本から読もう!」


 私はお兄様の部屋にエマと行き、本を見ているとちょうどお父様が帰宅したのでおすすめの本を尋ねた。


「これと、これと、これを読んだらこの本もスムーズに読めるようになるかな」


 お父様は棚から取り出した三冊の本を私に渡した。


「レオの本を全部読む気かい?」


 お父様はふわりと微笑みながら聞いた。


「そのつもりです。お兄様が何に興味を持っていたのか、いまさらですが私は知りたいので……」


 するとお父様は微妙な顔をして


「レオはアリにしか興味をもたなかったよ」


 お父様がぶつぶつ何かを呟いたけれども私には聞き取れなかった。


「お父様……?」


「いや、何でもない。アリにも勉強になるだろう。頑張りなさい」


「はいっ」


 私はお父様と別れ部屋に戻った。



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