140、エドワード王子 side 覚悟
コンッコンッ
「はい、どうぞ」
僕が返事をするとマーク先生が部屋に入ってきた。一通り診察が終わったらしい。
「先生、どうでしたか?」
「そうですね……順に説明しますが、今現在、レオナルド様の目は見えてません。これは一時的なものか、一生涯によるものかはまだ判断できません。体の方はまだ起こせないので分かる範囲でみたところ、麻痺がある部分が多くあります。これもまだ残るものかは判断できてません」
マーク先生はゆっくりとした口調で話す。
「記憶の方は曖昧な部分がありますが、これは今は大きな問題ではないです。アリシア様のことを心配なさっているようでした」
「今からレオナルドのところに行っても?」
「はい。ですがまだ混乱されてますので話は手短にお願いします。アリシア様も休まなければなりませんし」
「わかりました。ではレオナルドのところへ行きましょう」
アリはマーク先生の話を聞いて少し振るえていた。それでも会いたいだろうと僕はアリを抱き、レオナルドのところに向かった。
部屋に入り僕はアリを下ろすと、アリはレオナルドに駆け寄った。
「お兄様……アリシアです」
レオナルドは目を開けてはいるが目の焦点は合わず、声を頼りにこっちを向いた。
「アリ……?」
アリがレオナルドの手を握るがレオナルドからは反応がなく、おそらく手が麻痺しているのだろうと推測した。
「殿下、こちらで少しいいですか?」
僕はマーク先生に小声で呼ばれ隣室へ移動した。
「どうされました?」
「レオナルド様は聡い子です。ですからあなたにだけ伝えます。あなたならレオナルド様に気づかれないでしょうし、さりげなくフォローをできると思うので。レオナルド様は……毒が頭まで回ってます。もって数日です」
「えっ……? 治療は? 解毒は?」
「毒の治療は本来難しいのです。何の毒なのか特定できても、解毒薬があるものの方が少ないのです。今回使われた毒は猛毒です。ここまでもったことは奇跡に近い!」
「そう、なのですか……」
頭を何かで殴られたような気がした。僕の気持ちが沈めば誰かに気づかれる。気持ちを立て直さなければ……。
「すみません。しばらく外にでます」
「はい。そのように伝えておきます」
マーク先生と話終えると僕はアリシアの部屋に行き、護衛もすべて部屋から出した。
「ふっ……くっ……」
分かっている。今泣いてはアリシアらに気づかれるかもしれない。でも泣かずにはいられなかった。レオナルドを思うと……アリシアを思うと……。
二人に何もしてやれなかった。僕はいつも後悔ばかりだ。
しばらく涙が止まらなかった。止められなかった。
マーク先生はレオナルドたちに気づかれないようにアリシアとの交流をさせたいのかもしれない。悲しくならないように……。
僕は顔を洗い、水を一杯飲んでからレオナルドの部屋に戻った。二人のためにできることをしたい。レオナルドのベッドまで行くと、マーク先生は部屋におらず、アリシアがレオナルドにベッタリと引っ付いていた。
「アリ、そんなに乗ってしまってはレオナルドがつらいよ」
僕は言いながらアリをレオナルドの隣にソッとおろした。
「あ、お兄様、ごめんなさい」
「おりなくていいのに」
「レオナルド、アリは今レオナルドの隣で横になってるよ」
「お兄様、辛くないですか?」
「大丈夫だよ。アリが隣でうれしいよ」
レオナルドは優しい笑顔を見せていたが、腕は動かないようで指を少しだけアリの方に動かしていたのを見ると、僕は現実を突き付けられたようだった。
「アリは食事はちゃんとしてる?」
「はい。シンにちゃんと食べるように言われてるので食べてますよ。お兄様はお腹は減りませんか」
「減ったら伝えるよ。今はいらないかなあ」
「食べたくなったらすぐに言ってくださいね」
「アリシア、ありがとう」
元々休む時間だったのに起きてしまったこともあり、アリは少し眠そうにあくびをしていた。
「アリ、眠いならそのまま寝たら?」
あくびに気がついたレオナルドがアリに声をかけるとアリは珍しく反論した。
「でも! せっかくお兄様が起きてるのだからお話したいです!」
「じゃ、少しだけね」
僕はその言葉を聞いて席をはずそうと声をかけた。
「二人で話すといいよ。僕はしばらく席を外すね」
そしてそのままシンも一緒に寝室を出た。
「紅茶でも入れますね」
「ありがとう。シンも一緒に飲もう」
「はい、ありがとうございます」
シンはフルーツの香りがする優しい味の紅茶とクッキーを用意してくれた。
「ありがとう」
「いえ、こんなところまで来ていただいたのに満足にお礼も言わず申し訳ありませんでした。エドワード殿下、ありがとうございます。レオナルド様が目覚めて正直ホッとしております」
「シンも休めるときに休むんだよ。君まで倒れたらここは回らないからね」
「はい。ありがとうございます。ですが、私は先ほどまで休んでましたので大丈夫です。殿下の方が顔色がよくないように思います」
「僕は大丈夫だよ。でもこの後少し休ませてもらうね」
部屋を出てから一時間ほどしたので寝室に行ってみると、アリシアはレオナルドに抱きついて眠ってしまっていた。




