131、エドワード王子 side 延期
少し遡ります。
王都を出発して宿に宿泊した次の日の朝です。
僕は久しぶりに朝すっきりと目が覚めた。といってもまだ夜明け前だが、マリアンナ・ブラウニングのことが終わってホッとしたのかもしれない。
すっきりついでに湯あみをし、いくつかの執務を今のうちにしてしまう。
しばらくすると侍従が食事を運んでくれ、食べ終わった頃に近衛騎士のイアンがきた。
「殿下、そろそろ出発しないと遅くなってしまいますよ」
笑顔で話しかけてくるイアンには、昨日愚痴を聞かれているからなあ。はあぁぁ。
「わかった。では十分後部屋を出発する」
「了解いたしました」
侍従が私の荷物を手早く片付けて馬車に運び込び、私も早々に馬車の所まで行った。宿には予め早朝に出ることは伝えてあり、見送りは不要だと強く言っていたが主人が一人見送ってくれた。
「早朝にすまない。世話になったね」
「またいつでもお越し下さい。お待ちしております」
「ありがとう」
僕たちは馬車に乗り込むと騎馬の騎士が先導してゆっくり出発した。ここからだとそうかからない。三十分ほどすると騎馬の一人が先触れをしに行き、いよいよアリシアに会えると思うと心臓がドキドキしてきた。
◇
「エドワード殿下、ようこそいらっしゃいました。私はここを任されていますロックウエルと申します。屋敷の中にご案内いたします」
ロックウエルと名乗った男は誰かに似ていると思っていたら、アシュビー家の一人でバートやリリーシュの叔父だった。ロックウエルは優雅に廊下を歩き、応接室に案内すると紅茶を出してから話し出した。
「せっかく来ていただいたのですが、レオナルド様とアリシア様は出掛けておりまして……」
「えっと……どこに?」
「レオナルド様からは一日待っていただくよう言付かっております」
「一日待ったら戻ってくるということか?」
「そういうことではないのですが……」
どういうことだ?
コンッコンッ
「ちょっと失礼いたします」
ロックウエルは立ち上がり入り口の方に向かっていき、ノックをしてきた侍従と話をしていた。
「……それは…………うこと…………はや…………マー…………て……を……」
漏れ聞こえる声に緊張感が漂っている。何か緊急なことがあったらしい。ロックウエルは侍従と廊下に出ていき、その入れ違いで外で警護をしていた近衛騎士のアレンが部屋に入ってきた。
「殿下、今いいでしょうか?」
「大丈夫だよ。何があったの?」
「レオナルド様が族に襲われたようです。先ほどレオナルド様の護衛騎士のニックに雇われたものが知らせに来て侍従に話しているのが聞こえまして……」
「それでか……緊急なことがあったことはわかったのだが……。それで?」
「マーク先生という医師を連れてきてほしいとの要請でした」
コンッコンッ
「はい」
「エドワード殿下、席をはずし申し訳ありませんでした。少しはずせない用ができましたので屋敷の案内を先にさせていただきます。案内はこちらのものがしますので……」
ロックウエルは案内人を連れてきていて、そのものの紹介をしようとしたので、
「ロックウエル、すまないがそれは不要だよ。マーク先生をレオナルドのところへ僕が届けるよ」
「えっ……あっ……」
ロックウエルはかなり焦った顔をしていた。
「偶然聞こえてしまってね。近衛もいるから安全は保証するよ」
「しかし殿下にそのような使いのまねなど……」
「僕がするって言ってるのだから任せたらいいと思うよ」
僕がそう言うと、ロックウエルは頭を深く下げた。
「殿下、どうかよろしくお願いいたします。レオナルド様は毒で危ない状態だと聞いてます。こちらについてすぐで申し訳ありませんが、マーク医師を連れて港町までお願いします。場所はマーク医師が知っています」
「マーク先生がきたら準備して馬車に連れてきてね。あと人数分の昼食を何か用意してくれないか? 移動中に食べたい」
「承知しました。すぐにでも用意いたします。では一旦失礼いたします」
ロックウエルは連れてきていた侍従に指示をし、昼食の準備に向かわせ、自身は馬車の方に向かったようだった。そこで医師を待つのかもしれない。
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