127、護衛騎士ラート side 案内
キースクが戻り市場に向かうことになった。アリシア様の速度に合わせてゆっくりと十分ほど歩き、その間アリシア様とエマとの会話は賑やかなものだった。王都からの出発のときからするとずいぶんと表情が豊かになったようでみながほほえましく見ている。
市場に着くと食欲をそそられる匂いがあちこちからし、どのお店もそれなりに賑わっていて食べ歩きをしている人も多くいた。
「お兄様、私は食べ歩きをしてみたいです」
「それならアリが食べてみたいもの、全部挑戦してみよう」
意外だった。そういう庶民がすることに寛容だとは。いや、意外ではないか。レオナルド様はアリシア様の興味関心を否定されることは絶対にしないし、レオナルド様自身寛容な人だ。
「お兄様、エマと話してこのお店に決めました。いいですか?」
「うん、かまわないよ。良い匂いがしてるね」
アリシア様の頭を撫でるレオナルド様と照れるアリシア様。見てるだけでなんだか心がこそばゆい。
レオナルド様と目が合い、一瞬で顔を元に戻す。
結局食堂に入ることになり、各々注文することになった。私は魚や魚介類を使ったスープやフライを選びキースクも似たようなものを頼んでいた。運ばれてきたテーブルいっぱいの食事にアリシア様は驚いていたようだが、これでも任務中なので控えめだ。
食事が終わると、予定通り船の方に歩きを進める。相変わらず二人への視線は多く、回りからの視線からアリシア様を守るべく配置についているが、レオナルド様への視線もものすごい。
しばらくして目当ての船にたどり着くと、キースクは再度船員に話をしに行き、すぐに船員を連れて戻ってきた。
「レオナルド様、ようこそお越しくださいました。船長に許可を取りましたので乗船できます。まずは船長に会っていただけますか?」
「乗ってもいいの? 邪魔にならないようであれば、案内してもらえるかな?」
「もちろんです。ではこちらへどうぞ。滑りやすいのでお気をつけください」
船員は頭を下げると先導して歩いた。船の通路は思っていたよりも広く、これなら護衛に支障がない。船員がみな町におりているようで甲板まで誰にも会うことなく行き、甲板まで行くと気づいた船長が私たちに近づいてきた。
「レオナルド様ようこそお越しくださいました。船長のビシューです。以前公爵様といらっしゃいましたが、大きくなられましたね」
船長のビシューはレオナルド様と面識があったようでレオナルド様を見て微笑んでいた。私より体は小さいが海の男とはなかなか屈強ぞろいらしい。案内をしてくれた男もがっしりとした筋肉が見てとれる。
「お久しぶりです。覚えてくださっていたのですね。今日は突然訪れて申し訳ありませんでした。こちらは妹のアリシアです」
「あなたがアリシア様でしたか。確かに兄妹よく似てらっしゃる。今日はようこそお越しくださいました」
ビシューがニッコリ笑うとアリシア様はワンピースを少し持って軽く挨拶をした。
「アリシアです。以前から船に乗ってみるのが夢でした。今日はありがとうございます」
「まだ荷を積んでないので空っぽですが、ゆっくりしていって下さい。私は少し作業をしますので、ここにいるテオドールに案内させますね。テオドールはこの船に長いこと乗っているので説明もより詳しくできますよ。機会室は新しくしたのでおすすめですよ。では後程」
ビシューは頭を下げて、すぐに作業に戻った。テオドールはキースクが声を掛けた船員でこちらもレオナルド様と面識があったようだ。
このテオドールという男は体に似合わず、たいへん細やかであり、丁寧な説明と案内には驚かされた。アリシア様は特に熱心に話を聞いていた。
「アリシア様は船に興味があるようですね」
案内が終盤に差し掛かったころ、テオドールはふいに言った。
「女性を乗せることがあまりないので、船に興味がある女性を見かけることがなくて……」
「アリは本を読んで興味を持ったようで、乗せてもらった上に案内までしてもらってとても感謝している。ありがとう」
「いえ。いつでもいらして下さい。船長もきっとそう言うと思います」
ニコニコしながら話すテオドールとレオナルド様の様子にそろそろ下船をするのかと予想していたが、甲板の方から大声で怒鳴る声が聞こえてきたことで、下船どころではないと瞬時に理解した。
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