126、護衛騎士 ラート side 関係
「ラート、キースク起きろ、そろそろ準備するぞ」
まだ朝日が顔を出す前の暗いうちにベテラン騎士のニックに起こされる。ニックはレオナルド様が生まれたときにはすでにこの家に仕えていたらしい。
「はい!」
私たちはすぐに飛び起き、手短に準備をした。酒を飲んだ次の日はだいたい頭が痛く起きるのが辛いが、良い酒というのはこうも違うのか。
宿の朝食を食べ、今日の打ち合わせをし、宿の周辺の見回りをする。特に異常はない。
しばらくするとレオナルド様から準備ができたとの知らせがあり私たちはみなで馬車に乗った。アリシア様はレオナルド様の膝の上でずっとニコニコとしていて、そんなアリシア様をレオナルド様は心配顔で注意をする。
「アリ、そんなにかわいい顔を見せてたら誘拐されてしまうよ。私から離れてはダメだよ」
「大丈夫ですよ。私は少しもお兄様から離れたくはないですから」
「……」
うっ……。
なんだこの兄妹は! なぜこうも甘い……。
世の中の兄妹とはこういうものなのか?
そもそも膝だっこなどしたことがない私たちはひたすら空気になるが、侍女のエマには気にした様子がない。きっとこれが日常のことなのだろう。
馬車が到着して扉を開けると潮の香りとともになんとも食欲をそそる匂いがしてきた。よその騎士はどうか知らないが、スチュアート家では騎士にかなりの厚待遇で衣食住のすべてを用意してもらえる。食に関してはこうやって外に出たときは一緒の店での飲食を許され、よほどのことがない限り食いっぱぐれることもない。
海岸の方までアリシア様に合わせてゆっくりと歩いていると、
「泥棒! だれか捕まえて!」
大声で叫ぶ声が聞こえた。
私たち護衛騎士は聞こえたときにはレオナルド様とアリシア様を守るべく配置を変え構えると、犯人らしき男は「どけ、どけっ!」と叫びながら走ってきた。
レオナルド様からの指示でベテラン騎士のニックは向かってきた男に対し手を掴んで引き倒し、後ろ手に拘束した。そのまま泥棒を追ってきた警備に引き渡し、荷物を持ち主に返した。
「ありがとうございます!」
持ち主の女性はニックにお礼を言ったあと、レオナルド様にもお礼を言ってきた。
「あの……お礼にお茶をご馳走させてください」
レオナルド様に目線を合わせて言う女に小さな違和感がある。レオナルド様もそう思ったようで笑っているようで笑っていない目をしながら、
「捕まえたのは彼です。お礼なら彼に。では失礼」
そう言うとアリシア様を連れて歩き出した。
「あっ……」
持ち主の女性は畏れ多くもレオナルド様を引き留めようとしたが、私が間に入ると諦めたようだった。
その後は平和に海岸沿いを散歩し、アリシア様は熱心に観察していた。それが功を成してスチュアート家のマーク入りの貨物船を見つけられた。
「あ! お兄様、あの船はうちのですか?」
「アリ、よく見つけたね。少し話をしてみようか」
キースクは船員に話をしに走っていき、しばらくするとまた走って戻ってきた。
「明後日まで停泊するようで、今日はほとんどの船員が町におりているそうです。船長が昼に帰ってくるので、昼過ぎにまた来てほしいとのことです。いかがなさいますか?」
「では昼食を食べてから伺うと伝えて」
「承知しました」
またキースクは走って話をしにいった。
その間、レオナルド様はベテラン騎士のニックに話しかけ、先ほどの犯人の男について聞いていた。
「あの泥棒とやらは、まっすぐこちらに向かってきていたように思ったがどう思った?」
「あれは力も弱かったですし、ひょっとしたら私たちのような観光客を狙った何か別の犯罪かもしれません」
「そうか。それならあの被害者とは今後は関わらないようにしよう。観光客というよりうちを知っているのかもしれないしね」
「そうですね。目を配るようにします」
「うん、よろしくね」
この会話から、先ほどの犯人は要注意人物とし、辺りの気配を探り不審者がいないか探った。とりあえずは不審なものがいないことを確認した。
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