125、護衛騎士 ラート side 守護
私はラートと呼ばれているが、誰がつけた名なのかは知らない。気がついたらそう呼ばれていた。私は元々孤児だった。親の顔は知らない。年齢ははっきりしないが十歳頃に前の御当主に拾われた。そのときは侍女について雑用をしていたが、少しすると御当主が代替わりした。
私は首になるのかと身構えていたが、よりによって新しい御当主は私に教育をするという。当時、同じような境遇の子供が私の他にも五人いて、私たち六人は毎日肩を並べて勉強に励んだ。それと同時に体を鍛えることもするようになるが、年齢が上がるにつれて勉強が得意なものと、剣が得意なものとにわかれていった。
私はどちらもそこそこできた方だが、体を動かす方が自分に合っていたのでそちらに進んだ。
ある日、御当主のお子さまであるレオナルド様を紹介された。レオナルド様は私より七つ年下で美少女かとも思える顔をしていてあまりにもかわいすぎた。そのときの私は十七歳で護衛騎士を目指して鍛練している頃だった。
御当主に手合わせをするように言われてレオナルド様と行ったが、本気を出してもやっと優勢だったというぐらいで、結局引き分けに終わった。本当に十歳なのかとも思ったが、レオナルド様は筋力はまだ未発達ながらも天性のものをお持ちなのだろう。貴族というものはすごいな。
二十歳になり、晴れて見習い護衛騎士となった。一緒に護衛の道へと進んだ三人も同時に見習い騎士となり、私たちはますます鍛練に励んだ。
半年も経つと見習いから卒業し任務につくのだが、騎士を目指した四人のうち私ともう一人がレオナルド様付きとなった。
それから知ったのだがレオナルド様はおかしいのだ。常人では考えられない量の鍛練と勉強をしていた。そのとき初めてレオナルド様の強さと、私たちの甘さを知った。貴族だからではない、レオナルド様だからこの強さなのだ。それからというもの、レオナルド様ともよく一緒に手合わせをしたが、毎日鍛練漬けの日々を送った。
そして護衛として数年経ったある日、領地に行くからと一緒に行くようにと命じられた。それが数日前である。ベテラン騎士と共に私たちが選ばれたことをうれしく思っていた。
出発当日、聞いてはいたがレオナルド様の溺愛っぷりに驚きつつも、アリシア様の様子を見るとそれも必然に感じていた。これは療養なのだろうと。
道中、外を歩くとレオナルド様とアリシア様の美しすぎる容姿に視線が集まる。レオナルド様はアリシア様への視線だけを気にしていたけれど、私としてはレオナルド様への視線も少しは気にしてほしいと思っている。
普段よりも休憩を多く取りつつ着いた領地のお屋敷は、王都のそれと同じくらい大きく、敷地はそれ以上にあった。
その日アリシア様は発熱をしレオナルド様は付きっきりで看病に当たっていた。私たち騎士は交代で警備にあたり、領地について二日目には港町まで行くと聞かされた。アリシア様の体調を心配したが、いつの間にか来たときよりもすっきりした顔をしていて、レオナルド様も機嫌が良い。
港に向けて出発すると、アリシア様の表情が劇的によくなっているのに気づく。なにがあったのだろうか? アリシア様が首をかしげてキョトンとする顔は最高にかわいく、べったり引っ付かれているレオナルド様がうらやましい。
港町に着くと、スチュアート家のすごさがわかる。この坂の上にどうやってこの建物を建てたのだろう。部屋は調度品が飾られているがすっきりとしていて清潔だ。レオナルド様とアリシア様は最上階の中央の部屋に入られたので、騎士は隣の部屋に入り交代で警備につく。夜になり今日はもう移動はないとのことでシンさんが酒を持ってきた。
「レオナルド様が明日は外歩きの警護になるので、今日はゆっくり体を休めてほしいとのことです」
ニッコリ笑って手渡された酒は騎士には少しお高いものだった。
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