124、レオナルド・スチュアート side 異変
甲板の方の異変にテオドールは様子を見てきますと走っていったので、私も護衛を一人様子を見に行かせた。護衛はすぐに戻ってきて小声で報告した。
「船長が拘束されてます。他にも甲板で作業をしていたと思われる二人も拘束されていました。犯人は四人で剣で脅していて、テオドールさんは今は隠れて近くで様子を見ています」
「ここから外に出るには甲板の近くを通るから……外に助けを呼ぶより制圧した方が早いな」
「あの船長を拘束できるほどだから少なくとも一人か二人はできると思った方がいいかもしれません。それと一人は女でしたが、どちらにせよ、こちらも全力で行くしかありません」
「テオドールにアリシアとエマを守りながら隠れていてもらおう。アリは反対しそうだが、攻撃は息が合わないと危険だからね」
本当は私がアリシアについていてあげたいが、逃げるには船を熟知しているテオドールの方がいいだろう。
テオドールを呼び寄せてから、犯人の要求が金であることがわかった。アリとエマの二人を頼むと、多少の武道の心得があるらしく船に常備してある剣を持って二人を連れていった。アリは何度も嫌だと言ったが、これ以外に方法がないことを伝えると悲しそうにテオドールについていった。
他の船員が帰って来てうっかり人質が増えては困ることもあり、私たちは犯人の近くまでくると帯刀していた剣を構え、ある程度の動きを確認してから飛び出した。先にベテランの護衛の騎士が飛び出し、犯人の目がそちらに行った瞬間、別のところから一気に飛び出した。普段から一緒に鍛練などをしていたから空気で動きがわかる。
犯人たちは一人は船長に剣を向け、一人は他の船員に剣を向け、もう一人の女は油断していたのかイスではないところに座っていた。四人のはずだが、一人はここにいなかった。この中で手慣れだったのは一人だけだったようで、騎士二人がそいつに向かうと元々の力量が違いすぎたようであっという間に制圧した。あとの二人は素人同然だったので後ろ手にしばり甲板に転がした。
もう一人どこかにいるはずなので、騎士二人にこの場を任せて、騎士の一人と捜索に行った。甲板から船室や操縦席、船長室いろいろと探してみたが見つからず、とりあえず甲板に戻ることにした。
「いませんねえ……」
「……」
二人で気配を探りつつ通路を歩いていると、気配がないまま近づいてきた犯人に剣を振り下ろされ、寸でのところで避けたが避けきれず、私は腕をザクリと切られてしまった。幸いなことに利き腕ではなかったので、剣はまだ振れる。
「他の三人は拘束したぞ」
「捕まれば打ち首だ。だから逃げ道を作らないとね。」
私の言葉に返事をするようにしゃべると、その男は突然剣を振り下ろしてきた。騎士がそれを剣で打ち返すと、男はニヤリと笑った。
「あんたは俺が気配を消しても急所から避けた。こっちは俺の剣を打ち返した。……あいつらは諦めるしかないね」
男は船を下船するために通路を走っていき、途中デッキに出たと同時に船外へと飛び降りた。ここからだとかなりの高さがある。私たちはあわてて追いかけたが船外までは追いかけず、デッキから男が降りた方を見て男がうまく着地し、観光客に紛れて逃げたことを確認した。
「レオナルド様、腕を見せてください!」
実のところ、先ほどからずきずきと痛んでいた腕は上着を脱ぐと切られたところから紫に変色していた。血が滴り騎士が止血をしてくれたが、これは毒を仕込まれたようだった。
「ある程度の耐性はあったんだけどね。これはきついね」
「すぐに解毒をしませんと、命にかかわり……
意識を保とうとがんばっていたが、その後の記憶は私にはなかった。
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