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120、レオナルド・スチュアート side 黙考

 

 海まで行くと決めてから、どうするかをずっと考えていた。


 コンッコンッ


「レオナルド様、シンです」


「入っていいよ」


「失礼します。マーク先生から確認が取れました。ゆっくり休みつつ、無理をしないようであれば構わないそうです。ただ、食事と睡眠と休憩はしっかり取るようにとのことでしたよ」


「分かった。シン、ありがとう」


 食事、睡眠、休憩か。睡眠と休憩は大丈夫だが、問題は食事かな。


「アリシア様、よかったですね」


「シン、ありがとう」


 アリシア自身は少しずつ私以外にも笑顔を向けるようになり、今もシンに笑いかけている。良い傾向だと思う。


「アリ、楽しみだね」


「はい。すごくうれしいです。お兄様、ありがとうございます!」


「マーク先生から許可は出たけれども明日は早めに出発するから、今日は早く寝ようね。しっかり休まないと連れていけないよ」


「はい。しっかり休みます」


 夕食は指示した通りにスープがメインで、わりと具だくさんであったけれどもアリはよく食べていた。この調子なら食事もだんだん大丈夫になりそうだ。


「アリ、よく食べたね」


 アリの頭を撫でたあと、アリの肩に顎を乗せながらアリを抱きしめた。もう少ししたら、アリは私から離れていけるようになるのだろう。寂しくもあり、うれしくもあり……だなあ。

 うれしそうにしているアリを見て、ここまで回復してくれたことをうれしく思いながら感謝した。


 アリシアが寝たあと、アリがしっかり寝ているのを確認し、そっとベッドを抜け出した。エマにアリを頼みシンと部屋を移動する。

 この屋敷の執務室に行くと、この屋敷を任されている執事のロックウエルと会っていた。ロックウエルはバートの叔父であり、父上から屋敷を任されるほどの人だ。


「ロックウエル、聞いたとは思うけれど明日港に向けて出発する。準備は完了しているからそれについては問題ない」


「いかがなされましたか?」


「エドワード王子が明日、こちらに向けて出発してくる。おそらく到着は明後日の午後だろう。近衛が付いているだろうから迎えはいらないが、屋敷には迎え入れてほしい」


「エドワード王子が……。それは構いませんが、レオナルド様たちを追って港に向かっていただくようにしますか?」


「それは必要ない。おそらくだが、山ほど執務を抱えてるはずなので、専用に部屋を用意してほしい。陛下はうちの父上とは違うからね。それでもアリシアをということであれば、一日待って案内してほしい。ロックウエル、頼めるか?」


「承知しました。お任せください」


 少し気の毒になるが、私はアリシアの療養が第一の仕事だ。アリシアから王子の話が出ない限り、会わせるのは時期尚早ではないかと思っている。その後三人で細かい打ち合わせをして部屋に戻った。


「アリシアはどうしたい?」


 寝ているアリの頭を撫でながら呟く。会わせ方によってはアリの負担になりすぎるかもしれない。私は長い時間、アリの頭を撫でながらどう伝えるかを考えていた。


「あー、思い付かない。今日はもう寝よう!」


 私とずっといてくれて構わないと思っているからだろうか。良い案が浮かばないまま寝ることにしアリの隣に潜り込んだ。


「アリはあたたかいなあ」


 私はあっという間に眠りに落ちた。



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