12、混乱
『アリ、覚えていてね。僕が愛するのはアリ、あなただけだよ。僕はアリを愛しているよ』
昨日から頭の中で何度も何度も繰り返されるエドワード王子の言葉に私はどうしたらいいのか分からなくなっていた。
昨日はエドワード王子にこの言葉を繰り返し繰り返し耳元に囁かれて、それ以外の記憶が曖昧になりつつあった。
私が婚約解消を言ったら、エドワード王子が夢と一緒にはならないと言っていたような……。
そんなことができるのかしら?
それにずっと抱き締められていたような……。
急に顔が熱くなり、水を一気に飲み干した。
「お嬢様、起きてらっしゃいますか?」
ノックと共にエマの声がした。
「起きてるわ。どうぞ」
エマは中に入ってくると私の顔色を見ておでこをさわり
「少しお熱があるようです。今日もお部屋でお休みくださいね。朝食はいかがなさいますか?」
「今はほしくないわ」
「ではまたしばらくしたらお伺いしますね」
と言って、飲み水を用意し、濡れタオルをおでこに置き、私を休ませてから退室していった。
私はすーっと眠りについた。
◇
『エディ、アリシア様が私に嫉妬して私にジュースを掛けたの』
『なんだと! アリシア! マリアンナになんてことを!』
『マリアンナ嬢に嫉妬するなんて、仮にも公爵令嬢でありながら情けない』
エドワード王子の側近候補である騎士団長の長男のサイテスまで私を非難する。しかし、これは冤罪である。
『エドワード王子、私はそのようなことはしておりません。第一、飲み物を持っておりません』
冤罪を作られるのが嫌で、毎回お茶会や夜会では飲み物や、食べ物は一切触らないようにしていた。
『エディ、アリシア様が私を嘘つきだといじめるぅ。クスン……』
『マリアンナかわいそうに。アリシア! 嘘までつくとは最低だな』
『アリシア嬢、どこに隠したか知りませんが見苦しいですよ』
『マリアンナ、あちらで着替えよう。アリシアはしばらく謹慎だ!屋敷に帰れ!』
3人は去っていき、回りからの冷たい目の中、静かに退室した。
『どうしていつも冤罪が起こるのかしら。エドワード王子はどうしていつも信じてくださらないのかしら』
◇
私は気がついたら涙を流していた。心が痛い。夢を見るようになって、どちらが現実か時々分からなくなることがある。
私は過去の人生でこんな目に会い、そしてさらにこうやって夢に見ることで現世でも辛い思いをする。
こんな思いはもうしたくないのに……。
私はきっと何かをやってしまったんだ。思い出してないだけで……。
『アリ、覚えていてね。僕が愛するのはアリ、あなただけだよ。僕はアリを愛しているよ』
信じていいのか分からない。どうしたらいいのか分からない。
寝たくないのに、睡魔が襲う。
繰り返し繰り返し冤罪で罰せられる場面や、処刑される場面を見て、アリシアは徐々に疲弊してきていた。
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