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119、レオナルド・スチュアート side 関心

 

 散歩から戻ると、アリはまた私の膝に座るようになった。無理はしないことにしたようで安心もしたがただただうれしかった。シンの何か言いたげな顔が気になると言えば気になるがまあいい。


 私はシンに本を取ってもらい、続きのページから読み始めた。いくら執務を父上に押し付……じゃなくて頼んできたとはいえ、勉強は怠ってはいけない。

 しばらくすると膝の上のアリの体ががだんだんとあつくなってきたので、眠いのかな? とアリの方を見ると私に視線を向けていた。


「なあに?」


 一応聞いてみた。


「お兄様は結婚しないれね。わたしの……」


 え……。

 わたしのなんだ?

 そこは大事なのに……?


 それなのにアリは私の上でそのまま寝てしまった。

 ずっと眠れなくて困っていたときの反動だろうか。今は寝ても寝ても寝たりないようだ。それだけ心が疲弊してるのかもしれないな……。

 アリ、ゆっくり眠りなさい。私は本の続きを読み始めた。


 夕方になりマーク先生がいらっしゃるだろう時間にアリは目覚めた。マーク先生にアリは気がつくだろうか。


「おや、今日は起きてらっしゃるようだね」


「マーク先生!」


「はい、マークですよ。アリシア様お久しぶりですね」


 アリも気がついた! 別れたとき、私よりも小さかったからどうかなと思ったけれど、名前までしっかり覚えていたようだ。


「アリシア様、診察してもいいかな?」


 アリは私を見たので大丈夫だよと頷くと、アリはマーク先生を見てこくんと頷いた。マーク先生は診察後、アリに言う。


「アリシア様は、率直に言うと栄養が足りてない状態だから、ゆっくりでもいいから栄養があるものを食べようね。今は体がびっくりしてしまうからスープがいいね。食べられるようになったら肉や魚も増やしてね」


「はい」


「それから、今のアリシア様は心が風邪を引いてるから無理はダメだよ。レオナルド様に頼ってゆっくり、穏やかに過ごすことが今は一番だよ」


「引っ付いていていいの?」


「レオナルド様はその方がうれしそうだよ」


 マーク先生はハハッと笑いながら言った。アリは驚いていたが、手助けするのは兄として当たり前なのに。


「先生、明日はアリと出掛けたいのですがいいですか?」


「無理はしないように配慮してあげればいいよ」


「わかりました。ありがとうございます」


 マーク先生はその後お茶を飲んですぐに帰られた。私はシンに先生から言われた食事の件を料理人の方に伝えるように指示した。エマが紅茶をその間に入れてくれ、ホッと一息つく。一息つくとエマとアリが話し出したので、また本の続きを読み出した。


「お嬢様、よかったですね」


「エマ、いつもありがとう」


 私はアリたちの会話を聞きつつ、本を読んでいると、アリも本を読むことにしたようだ。

 おや?

 アリの肩越しに本を覗くと『ランスーの冒険』を持っていた。


「アリはその本が好きだね」


「はい。いつか海に行ってみたいのです。池よりも大きいのですよね」


 アリは海に行ってみたかったのか。確かにアリは領地でも王都でも屋敷から出ることは稀だった。父上の視察に付いていくのは私だけだったからだ。


「そうだね。私が行ったところは船がいっぱいで、貿易の品を商人が運んでいたよ」


「船にも乗ったのですか?」


「乗るだけね。船の中も視察したから乗ったけれど、動かしてなかったからねえ」


「それでもうらやましいです」


 アリは胸の前で祈るように手を組んだ。そんなに行ってみたかったのか。


「それなら明日行ってみる? 王都から行くよりも、領地から行く方がずいぶん近いし、向こうで一、二泊してゆっくりしたら体にそう負担にならないかもしれないね」


「こんな機会ないですし、行きたいです!」


「それじゃ、今から手配をしよう。シン、マーク先生にも伝えて。あと騎士やみんなにも」


「承知しました。アリシア様が楽しく行けるように万全を期しますね」


 シンがにっこり笑って答えた。

 アリとの二人旅ももう行けないかもしれない。そんな考えも(よぎ)ったけれど、アリが興味のあることを実行するのはエドワード王子と結婚すれば立場的に難しくなる。それならば、私に心を開いている今、できるだけのことをしてあげたい。心の癒しとなるものを増やしてあげたい。それ以外は二の次だった。


 といっても、おそらく、明日の夕方にはエドワード王子はこちらに向けて出発するはず。アリが寝たら対策を考えるか……。



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