110、エドワード王子 side 対処
とうとうこの日がやってきた。今日こそはアリシアに会いに行く!
と、その前に掃除をしなければならないようだが……。僕は身支度を整え執務をしながら考えていた。父上にお願いしたいこともあるし、挨拶をしてから学園に行こう。
「さて、そろそろ出なければ。では父上、あとはよろしくお願いします」
「はいはい。いってらっしゃい」
僕は父上に挨拶をしてから部屋から退室し、侍従と共にいつもよりもかなり早くに城を出て学園に向かった。学園ではバートとリリーシュがすでに教室にきていて、ラドニーも近衛を連れて待機していた。僕は挨拶をし、各自報告をさせた。
バートからブラウニング嬢が仲間内で揉め事が起きていると報告があったことにより、主な仲間内全員に監視をつけることにした。さらに校舎の至るところにも監視を配置したかったが、要所要所への配置とし、場所はラドニーが決めた。
マリアンナの計画は、リリーシュが図書室で唇を読み、聞いた内容はひどいものだった。
打ち合わせ後、新入生歓迎会は午前から始まるということもあり、ちらほらと生徒が登校しだしたので、僕とリリーシュ、ラドニー、近衛のイアンとアレンを残して各自配置に着いた。
ちょうどその頃、タキレスとサイテスが教室にきた。
「おはよう。遅かったね」
「おはよう。実は今まで呼び出されて話を聞いてたのだが……。相手はBクラスのヒラリー・オフリーとCクラスのリリア・スイートリーだ」
「ああ、マリアンナの取り巻きの?」
「そうなんだが、どうしても話を聞いてほしいと言われて話を聞くと、アリシア嬢をマリアンナから守ってほしいと言われた。理由を聞くと、自分たちは脅されていて、マリアンナにやれと命令されたことは、おそらくアリシア嬢を害する計画の内容の一部をさせられてるのではないかと。計画の全容は聞かされてないそうだ」
「ちなみに命令の内容は?」
「一つ目が、トイレの前に騎士が立ってたら、近くの教師に『騎士がいてトイレに行き辛いから下がるように言ってほしい』と頼むこと。二つ目が午後は池から道場あたりをうろうろすること。だそうだ」
「そうか。では午後に外に出たあたりで近衛に保護させよう。それと、トイレ前に配置されている先生にも言う通りにするように伝えてほしい。ラドニー、いいか?」
「承知しました」
「タキレス、サイテスはアンジェリーナ嬢とエミリー嬢を連れて、できるだけ僕らの近くにいてくれ。イアンとアレンは私服になり、アリシアの護衛を。
ただし、今日のアリシアは変装したリリーシュだが、全力で守るように」
「承知しました!」
話が終わったところでリリーシュが言った。
「殿下、もし、彼女が私にいなくなるように説得するのではなく殺そうとしているときは、近衛は手出ししないで待機させてください」
「それは危険だから承知できない」
「兄がいますので大丈夫です。兄は私の限界を知ってます。それに決着はアリシア様のためにも早い方がいいですよね」
リリーシュの目は真剣で、しばらく悩んだのち僕は答えを出した。
「……わかった。そのように伝えておく……その代わり、アリシアのためにもあぶないと思ったらやめるように」
「……ありがとうございます」
リリーシュはアリシアの顔でやる気に満ちた顔をしていた。
そして新入生歓迎会の入場が始まり、一年生はEクラスから順に入場していき、最後に王族である僕や学園長のアルフレッド叔父上が入場することになっている。叔父上は父上から一応の話は聞いているようで、「気を付けなさい」と心配されていた。
ついに入場となり、リリーシュをエスコートしながら会場に入ると溢れんばかりの拍手に包まれていた。
熱気が少し覚めた頃、僕たちの挨拶後、会は開会された。
「では、踊っていただけますか?」
「はい、喜んで」
僕はリリーシュの腰を抱き、会場の中央に移動するとはじめのポーズを取った。何度もアリシアと練習したダンスをよもやそっくりさんと踊ることになるとは……。内心がっかりしつつも僕はそれを顔に出さずに踊りきった。
それからは動きがあるまではタキレスやサイテスらと共に警戒しつつも楽しんでいた。何度かダンスの申し込みがあったが、すべて断っていると次第に申し込みも減った。アンジェリーナ嬢やエミリー嬢にも今回のことは話してあるので、リリーシュに対しても驚きつつも楽しそうに話しこんでいた。
午前中、タキレスが話していた通り、あの二人はトイレの前で先生に「トイレの前に男性がいて入れない」と話したようだ。タイミング的に考えてもリリーシュに護衛がつくことを予測していたのだろう。
イアンたちは打ち合わせ通り、先生からの要望を聞き離れた。
その後二人はマリアンナに報告後、午後を待たずして外に出たので、近衛が保護をしたと連絡があった。
午後になり、相手に動きがあったと報告があった。リリーシュが言った通り、変装をしているらしい。
「リリーシュ、おそらく一人を狙って、本当にトイレで誘拐するのかもしれない。薬を使うかもしれないから、十分気をつけて。近衛とバートは君に張り付いてるからね」
「はい。ある程度の薬には耐性があるので大丈夫です。それよりも今朝の件、よろしくお願いします」
「ああ。ラドニーから伝えてある。気をつけていっておいで」
僕はリリーシュの頭を撫でると、リリーシュは真剣な顔で頷き、一人トイレに向かった。もちろんイアンたちは護衛のために付いていっている。その間、僕たちは何事もなかったかのように歓談していた。
イアンたちのリリーシュがいないという報告を受けてからタキレスたちを会場に残し、サイテスを連れて外に出た。タキレスがいれば、先生方への対処もできるだろう。
その際、会場に残っていたマリアンナの取り巻きたちを、回りにわからないように拘束するようにラドニーに伝えた。
外に出ると待機していた近衛に案内されて僕たちは池の方へと走っていった。
この池は王都の水源とも繋がっていて、広い上に場所によってはかなり深いが透明度は高い。木々に囲まれとても美しい池だ。そんなところで何をしようというのか。
池に着いたとき、マリアンナは拘束されて引きずるように連れられているところで、池の側ではバートがリリーシュを介抱していた。二人ともびしょ濡れだった。
「大丈夫か?」
バートに声を掛けるとリリーシュが答えた。
「二分ぐらいなら潜ってられるので問題ありません」
「こらっ、おとなしく横になってろ!」
すかさずバートが叱ったところをみると、ギリギリだったのかもしれない。
「二人ともありがとう。あとはゆっくり休んでほしい」
僕はリリーシュの頭を撫で、バートの肩を叩くと、近衛に二人を頼み叔父上の学園長室に向かった。
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